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モーリーの定理の証明



§1 はじめに.


 モーリー( Edward Williams Morely, 1838-1923 )の定理というのは「任意の三角形の各頂角の三等分線

が各辺により近い三つの交点によって作る小三角形は正三角形である」( 図2 参照 )という定理である.

 この定理にはおよそ次のような意外性がある.

(1)とても美しい定理である.個人的主観が入っているようだが,そう思うのは私個人だけでもあるまい.

(2)モーリーという人は20世紀の人であって,幾何学の問題にありがちなエジプトやギリシャやメソポタ

ミヤの古典的時代に属していない.因みにピタゴラス( Pythagoras, 前572-492 )と比較して実に 2400年の

隔たりがある.

(3)この定理は古典的な意味では幾何学に属さない.なぜなら,古典幾何学では定規とコンパスだけを作図

道具として認めている.従って分度器などを用いて角度を測ることは許されない.しかし,モーリーの定理で

は任意の角度の三等分の問題が暗に含まれている.これはギリシャの三大難問と呼ばれていた難問の中の一つ

であって,実に2千年近く未解決であったが ガウス( Carl Friedrich Gauss, 1777-1855 )によってその不

可能が示されたことは数学史上あまりにも有名である.

 角度の三等分の定規とコンパスによる作図不可能について,ガウスはこれを三次方程式の解法に結びつけ,

コンパスで作図できるのは基本量の一次変換と平方根変換の有限回の連鎖に帰着されることを示しこれを「ピ

タゴラス数」と名づけた.立方根は「ピタゴラス数」にならぬゆえ角度の三等分も(定規とコンパスのみを使

用する限りにおいて)不可能となる.


 この定理に関して私はモーリー本人による証明を今だ確認したことはない.ただ三角形に関する定理として

非常に美しい定理であるという理由で「3の数学」の中に加えた.そのような訳で私の証明はモーリー本人の

証明とは異なっているかも知れないことをお断りしておきたい.併せて私は数学に関してはむしろ平凡な単な

るアマチュアの愛好家に過ぎないことも重ねてお断りしておきたい.


 さてモーリーの定理の私の証明(モーリー本人の証明ではない)においては,三次方程式を解くまでもなく

三角関数を計算することでこれに代用できることが主な発見となっている.私の証明ではまず,§2で証明に

必要な補助定理を掲げ,重要なものには証明を与えた.§3でこれをもとに主証明を与える.証明に必要な補

助定理たちのうち [定理3] は必要な各辺の長さを全て底辺の長さの実数倍として求められるようにするため

の基本公式といえる.[定理4]は sin(3ζ)/sin(ζ) に関するものでいわば三倍角の公式に相当する.

  [定理5]はこの証明の中のいわば「急所」にあたり,補助的に作図した二つの合同な三角形の 対応する二

辺の等長を示すのに用いられる.そして私が最も苦労した部分である.

(2004/4/18)



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