_BGM:円周率を和楽器で演奏 "3.14159264・・・" = "ミドファドソレ'レラファ・・・"

_√2

_波形率 π/(2√2)

_円周率 π ( ヨナ抜きバージョン )

_円周率 π ( 琉球民謡風バージョン )

_円周率 π ( ブルース調バージョン )

円周率 π の近似計算


§§3.整数比の直角三角形を応用した円周率 π の近似計算.

 この章では,整数比の直角三角形を応用した円周率 π の近似計算についてを述べてみたい.
 この方法は私の考えたものであるが簡単な割りに近似の精度が良いようである.
 その着想を手短に云えば双曲線から円周を計算しようという突拍子も無く奇想天外なものである.
  ( fn+gn√2=(1+√2)nと定義した場合. fn2-2gn2=±1 となる.
 すると f/g や 2g/f から √2 を近似できるが, 実はこれらの f,g から円周率も近似できるのである.
 そしてこの事実は恐らく世界で初めて私が発見した事実ではないのかと考えている.
  円周率といえば無理数とかさらに超越数とかの扱いで述べられることが多い.
 しかし私はここでは円周率を判別式が 2 の二次拡大整数環という拡大整数論の延長で考えようとしているのである.
  ( 一般に無理数や更には複素数であっても最大公約量や最小公倍量が定義できる場合に拡大整数が定義できる.
 f + g√2 は共役数 f - g√2 との積(ノルム)の性質から素元分解の一意性が成立することが分かる.)
 そういう意味でも少し変わった円周率の捕らえ方になるとも考えられる.
  私は自分の見出したこの方法を飛燕六三四( ひえんむさし )と命名した.( 詳しくは本文参照.) 
 飛燕六三四反復自乗冪単数法( 燕返し法 )の Java-BigDecimal による実行例の所要時間は以下となる.)
プログラム実行結果(クリックで参考ファイルが開けます)

k=1 f+g√2=(1+√2)2 近似の桁数 約 3 桁 約 1 秒
k=2 f+g√2=(1+√2)4 前回近似桁数 3 桁から求めた今回近似桁数 6 桁 約 1 秒
k=3 f+g√2=(1+√2)8 前回近似桁数 6 桁から求めた今回近似桁数 12 桁 約 1 秒
k=4 f+g√2=(1+√2)16 前回近似桁数 12 桁から求めた今回近似桁数 25 桁 約 1 秒
k=5 f+g√2=(1+√2)32 前回近似桁数 25 桁から求めた今回近似桁数 49 桁 約 1 秒
k=6 f+g√2=(1+√2)64 前回近似桁数 49 桁から求めた今回近似桁数 98 桁 約 1 秒
k=7 f+g√2=(1+√2)128 前回近似桁数 98 桁から求めた今回近似桁数 196 桁 約 1 秒
k=8 f+g√2=(1+√2)256 前回近似桁数 196 桁から求めた今回近似桁数 392 桁 約 5 秒
k=9 f+g√2=(1+√2)512 前回近似桁数 392 桁から求めた今回近似桁数 784 桁 約 34 秒
k=10 f+g√2=(1+√2)1024 前回近似桁数 784 桁から求めた今回近似桁数 1568 桁 約 3 分 11 秒
k=11 f+g√2=(1+√2)2048 前回近似桁数 1568 桁から求めた今回近似桁数 3136 桁 約 24 分 41 秒
k=12 f+g√2=(1+√2)4096 前回近似桁数 3136 桁から求めた今回近似桁数 6272 桁 約 3 時間 14 分 13 秒
k=13 f+g√2=(1+√2)8192 前回近似桁数 6272 桁から求めた今回近似桁数 12543 桁 約 25 時間 45 分 49 秒
 ( 全ての時間を合計しても一日半はかからない.最後の約 12500 桁の円周率を求める多角形は全円周的には
  約 6200 桁位の整数の多角形 (6200 角形ではない!) となる.)

  この方法による近似の桁数は経験的にほぼ 3 桁,6 桁,12 桁,24 桁,48 桁 ・・・ のようになる.
 実際にはこれより数桁多めに近似できる.(データ的には近似の桁数≒3×2k-1 となっている.)
 アルキメデスが 6 角形,12 角形,24 角形,48 角形,96 角形と以前の辺数の二倍二倍としながら円周率を求めたの
に対し,近似の桁数自体が約 6 桁,12 桁,24 桁 48 桁,96 桁 ・・・ のように以前の二倍二倍となって行くのである.
 これは最早アルキメデスの比ではない !!!!!!!
  残念ながらアルキメデスの方法では単に近似に用いる多角形の辺の数を二倍にしているにすぎない.
 しかしこのようなやり方では肝心の近似される円周率の正しい桁数の拡大ということは期待でき難く
 ただ平方根号の多重化による無用な複雑さが増えるのみとなってしまう.
  ( おそらく一桁長く近似するには辺の数を約四倍にしないといけないはずである.)

 私はこのアルキメデスが成し得なかった夢のような理想すなわち近似される桁数自身の二倍化を実現したのである.
 従って私の発見した方法はもうそれだけで充分に自慢できるだけの価値を持つ.
  今まで人が知らなかったことで正しいことを発見し述べたのである.
 この二十一世紀になっても円周率の未発見の新しい計算方法がまだ埋もれているのかも知れない.
 これは円周率の近似の桁数の長さよりも大事なことであるかも知れない.

 方法が分かり易くて高い精度で求められるのが理想であるとすれば私の方法は正にそれに当たると断言しておく.
 私のやり方は整数比の直角三角形から円周上の有理座標対を得るので無理数の計算や半角公式は不要である.
  8桁程度のポケット電卓でも少なくても6桁ぐらいは楽に近似できる.
  さらに C や Java などの高級プログラム言語の倍精度実数や長整数などを使うならば更に高い精度で求められる.
  私は Java のビッグデジマルクラスというスケール(精度)が自由に高く設定できる高精度計算専用のクラスを用いて
  P = 1 で双曲指数750の場合について円周率 π を約1100桁正確に求めることに成功した.
  π の1000桁程度は我々の周辺にある,ごく普通のPCで簡単に求め得る範囲だと考えて良いのかも知れない.
( これ以後計算を継続して 2008'3'7 の時点で約 10400 桁求まっている.
 手間と時間さえ厭わなければ少なくとも詳細な実行結果を含めて10万桁ぐらいの表示は辛うじてやれるだろう.
 しかし100万桁以上の表示ともなれば, その実行結果の内容は途轍もなく長ったらしいものとなる.
 そこで仮に計算の周辺の詳細な事柄を省略することにすれば,もはや人の計算結果の借用と何ら区別が付かない.)

 π の計算について色々な方法が存在するが、この間から少し気になっていることを述べる.

  (1) π というのは呼び名に過ぎない.

  黒板に 「 りんご 」 と文字で書く.机の上に食べられる「 林檎 」 が置いてある.
  ( よくある哲学の一番初めの授業風景 )
  π はどちらかと言えば黒板の 「 りんご 」 に近い.
 机の上の食べられる方の 「 林檎 」 はどちらかと言えば 3.14159264・・・ みたいなものになる.
 ・・・ のところがどうも気になる.
 この ・・・ のない本物の π はこの世にはない, どちらかといえば 「 みそらのかなた 」 にある.
 ( 私の実家は仏教ですが, 子供の頃に近所にキリスト教の教会があって, そこの日曜学校に通ってました.
 そこで 「 みそらのかなた~♪ 」 なんて歌を習って歌ってました.^^.
 神様というのは居たら不思議かも知れないが, 居なくてこれだけ巧妙な自然界が出来上がっているとしたら
 その方がよっぽど不思議だと思うときがある.余談失礼 )   
  本物の π をこの世で探すとすれば代用品しかない.
  代用品の良さは (1)求め易い(2)誤差が少ない(3)理論的に高度である.というようなところで評価される.
 実数を二組に分け有理数を点(point)と考え無理数を隙間(gap)と考えるのが私流の実数論である. 
 一方, デデキントやカントールなどの過去の数学者達が実数を正確に定義すると称して極限値的着想を採用して
 π のような無理数を一つの点(point)であると見なす実数論を創始した.( してしまった.)
  事実はというと π は数の一点(point)と言うより, むしろ常に下限の有理数(point)と上限の有理数(point)
の隙間(gap)となる.それで何桁求めても π の計算は永遠に続いて終わるところがない.
  ( 無理数の存在と言っても完成された数(point)は一つも無い.でも隙間(gap)なら初めからそこに一つ実在する.
 よって無理数は隙間(gap)であって完成された数(point)ではない.私はこういう分かり易い数学が好きである.)
  通常の π の計算で求めた各桁は π という名の隙間(gap)を挟む下限の有理数(point)たちに過ぎない.
 実際の π は常にこれらの下限の有理数たちよりは上位にある.
 しかし幸いなことにこの隙間(gap) は序々に縮まって行くようにも出来る.
 それでなんとか手頃な代用品も作れそうにも思えるし, 実際に作れる.
 それで結局 「 円周率 π の計算 」 とは言うまでもなく π の上手な代用品の作り方がその主題である.
 
 私は円周率が 3.14 ぐらいだということは小学校二年生のときに担任の女の先生から教わった.
 それは 1 mm 方眼紙に半径 10 cm で円を描き 1cm 方眼の個数を勘定するというやり方である.
 クラスの全員でやって平均値を求めたように記憶している.昭和33,4年頃のことである.
 最近では小学校でこんなことも教えないのかと思うと残念である. 
 私は教育者ではないので云うのは憚られるが文部省の指導要領と同じぐらい大事なことは
  自分が子供の頃どう習ったか?ではないのだろうか.
  さらにこの方法で方眼紙の最小単位の面積と的中した矢の平均占有面積とが対応すると考えればモンテカルロ法と
  同じである.モンテカルロ法では乱数列を用意しなければならないのが面倒くさい.
 境目の方眼の番号を探って内外の個数を求め単位面積を掛ける方が遥かに短時間に求められて誤差も与えられる.  
 この方がモンテカルロ法より楽かも知れない.
 ( 私は8ビットPC時代に水素原子のボーアモデルをドットプリンタで出力するのにモンテカルロ法で実行した
 ことがある.約二日未満かかった.こんな場合はモンテカルロ法が頼もしい.
  [参考文献] BASICによる物理 平田邦夫:著 共立出版社(1983) )
  さらに整数座標対を格子点と呼んで単位方眼一つにある四つの隅の格子点の内で左下の格子点がこの単位方眼に
 対応すると考えると曲線で囲まれた図形の面積はその内部にある格子点の個数で近似できる.
 このとき円の半径Rを無限に大きくして行くと内部の格子点の個数Nも無限に大きくなる.この極限を考えれば,
 N/R2 → π
 となると考えられる.これは以前に大学入試に出ていたそうで,またこれを一般化した同様な原理がディリクレの
 整数論講義でいう類数公式で重要な役割を演じている.初歩的な原理も辿っていけば遂には高度な世界に通じている.
 数学という世界の探求は大きな大きな地図の上における果てしない果てしない旅路なのであるとつくづく思う. 

  π > 3.05 であることを示す問題も数年前に大学入試に出題されたそうだが,半角公式や加法定理の応用で解ける.
  次のような方法が考えられる.
 (1) 8sin(45/2)=8/√((1+√2)2+1)=8/√(4+2√2)=8√(4-2√2)/√8=4√(2-√2)
  =4√0.585786≒3.06
  から示す. 
  (2) 12sin(30/2)=12/√(2+√3)2+1)=12/√(8+4√3)=12√(8-4√3)/4
  =3√(8-4√3)=6√(2-√3)=6√0.267949≒3.10
  から示す.  
  (3) 12sin(45-30)=12(sin45cos30-cos45sin30)=(12/√2)(√3/2-1/2)=3√2(√3-1) 
  =3*1.4142*0.7320≒3.10
  から示す.  
 (4) 正五角形の作図から 10*sin18 ≒ 3.09 であることから示す.(回りくどいが一応は可能.)  
  さらに正五角形の作図からは次の方法で加法定理を繰り返すと実用的な円周率の近似が可能である.
  ① sin(72)=√(10+2√5)/4 
     cos(72)=(√5-1)/4 
を正五角形の作図から求める.
  ② sin(27)=sin(72-45)=sin(72)cos(45)-cos(72)sin(45)
     cos(27)=cos(72-45)=cos(72)cos(45)+sin(72)sin(45)
を加法定理で求める.
  ③ sin(3)=sin(30-27)=sin(30)cos(27)-cos(30)sin(27)
     cos(3)=cos(30-27)=cos(30)cos(27)+sin(30)sin(27)
を加法定理で求める.
  ④ tan(3)=sin(3)/cos(3) が求まる.ここから
 60×sin(3) < π < 60×tan(3)
が導ける
 これは正120角形に相当していてアルキメデスの正96角形を凌いでいる.
 それゆえ円周率が 3.14 付近にあることをアルキメデスの方法より正確に誤差付きで求められる.
  結局,一般に三角関数表をより正確に作ることが円周率をより正確に求めることに相当すると言えよう.
 
 同じ問題を中学生でも解けるようにするには
  (5)半径 20cm で4分の1円を書き, この中に 1cm 方眼が 305 個以上あることを示せば良い.
 (実際には約 308 個ある.) 数え方のコツは x は 20 列あるのだが,その内で,
 例えば x の n 列目で y 方向に 1cm 方眼が 19 個あり,x の n+1 列目で y 方向に 18 個あった場合.
  y 方向の差分 19-18 = 1 の半分の 1/2 個の 1 cm 方眼も円の内部に入っていることになるので,
 これも勘定に入れると意外に良い近似が得られることである.即ち y 方向の差分の 1/2 個を加算する.
  そして原点を通る45度の直線で線対称に x 軸と y 軸を入れ替えれば同様の差分は x 方向で再び起こる.
 ゆえに先ほどの差分は 1/2 にせずそのまま加算しておけば良かったということになる.
 より正確には x の 14(≒10√2) 列目から 20 列目までを勘定して斜めの部分は 1/2 倍して小計を 2 倍し 
 196(≒(10√2)2) を加えて 100 で割って円周率の近似値とすれば良い.
  ( こうすると円周率の求め方の記事で殆どの人が言及していない不等辺多角形近似法となる.)

 蛇足ながら実行結果を図示しておく.
 
 この方法で x の各列 xnについて yn を 円を超えない y 方向の最も近い整数であるとして
  xn2 + yn2 ≦ r2
 を確認して置けば,大学並の解答には及ばぬだろうが算数的には完璧であろう.
  一応やっておけば,まず半径 r = 20, 
  原点を通る傾き45°の直線と円周との交点の x 座標を超えない最大の整数 Max = [r/√2] = 14
  と書くとする.( [k] で実数 k の最大整数を表すとする.)
 x=15 のとき y15=[√(202-152)]=[√(5×35)]=[√175]=13
  x=16 のとき y16=[√(202-162)]=[√(4×36)]=[√144]=12
  x=17 のとき y17=[√(202-172)]=[√(3×37)]=[√111]=10
  x=18 のとき y18=[√(202-182)]=[√(2×38)]=[√76]=8
  x=19 のとき y19=[√(202-192)]=[√(1×39)]=[√39]=6
  x=20 のとき y20=0
  完全な方眼の個数 Na=y15+y16+y17+y18+y19=13+12+10+8+6=49             
  斜めに切れた方眼の個数 Nb=(Max-y15)+(y15-y16)+・・・+(y18-y19)+y19=Max=14
  原点を通る45°の直線を対角線に持ち四分円に内接している正方形の面積 Nc=Max2=142=196
  四分円全体の面積 S = πr2/4 ≒ Na×2 + Nb + Nc
  ここから
  π ≒ 4×( 49×2 + 14 + 196 )/202 = 308/100 = 3.08  
  ∴ π > 3.05
  これだと中学生ぐらいの人でも習ったことだけを使って解ける.
  また上の計算で 
  Nb + Nc ( ≒ Max + Max2 = Max(Max+1) ) = (r/√2)((r/√2)+1)
が常に成り立っているので,実際に勘定するのは Na だけで良いことになる.これを使えば,
 π ≒ 4( Na×2 + (r/√2)((r/√2)+1) )/r2 = ( 4Na + 2r2 + (2√2)r )/r2 
  = ( 49×2 + 10√2((10√2)+1) )/100 = ( 98 + 200 + 10√2 )/100 ≒ 2.980 + 0.141 = 3.121
となりかなり良い近似となる.半径を大きくして分割をさらに増やせば実用的に遜色ない近似となる.

  関孝和の方法で長方形の短冊と短冊の間にできる直角三角形の部分を勘定に入れ
 さらに8分の1円で冗長を省けば計算の改良が図れると思える.

 半径 2 の四分円の面積を求めると円周率 π となるが,
 内接正方形の一辺は √2 となり水平の x 方向を 2 - √2 の長さの部分だけ n 等分したとすると
 x 方向の単位断片は (2-√2)/n となる.さらに,
 xm = √2 + (2-√2)m/n   ( m = 0,1,2,…,n )
  ym = √( 4 - xm2 )
とすれば仔細は省略するが上記の方法を応用して
 π ≒ 2 + ( √2 + 2( y1 + y2 + ・・・ + yn-1 ))(2-√2)/n
が成り立つ.

 無理数が隙間にすぎないという私の主張をもう少し自己弁護しておこう.
 コーシーが代数学の基本定理の証明で
 変数 z を複素数とする任意の有理数係数の n 次式を f(z) としたとき,
 f(z) が少なくても一つの複素数 σ を零点(解,根)に持つことを示すのに用いた論法がある.
  それは, もしも,
 |f(z)| > 0 
 ならば, 適当な複素数 z' が存在して,
 |f(z)| > |f(z')| > 0
と出来ることを先ず示し, |f(z)| の最小値を m とすれば,
 m = 0
でなければならないとする論法である.
 すなわち, f(z) には少なくても一つの零点 σ が存在して,
 f(σ) = 0
となると云える.
 さて, この論法を逆手に取って実数の連続性に対して問題提起をして見よう. 
 先ず x を実数, 円周率を π として
 x > π 
 なる不等式を考える.
 このとき x の最小値を m と置いて良いとして見よう.そうすると,
 m ≠ π
  ならば, 実数の連続性によって, 適当な実数 m' が存在して,
 m > m' > π
と出来る.
 この結果, 最前のコーシーの論法の如く,
  x の最小値は
  m = π
でなければならない.そうすると,
 x > π  と  x ≧ π
の区別が明確には着けられないことになって不都合である.
 また記号上は明確な区別であった
 極限値 ℓim( x → π ) x と等値 x = π
の意味上の区別も怪しくなって来る.
 
  y12 - 2x12 = 1   (1)
  y22 - 2x22 = 0   (2)

を考えると (1) は双曲線で (2) はその漸近線である.
 ここで,
 ℓim( x1 → ∞ )y1/x1 → √2
ではあっても
 y1/x1 ≠ √2
でなければならない.
 なぜなら,
 y1/x1 = √2   ⇒   1 = 0   ( 矛盾 !! )
と成るからである.
 従って, 本来は極限値と等値は区別すべきものであって, 混同されるべきものではない.
  コーシーやデデキンドが用いるほどの論法ならば理論的に厳密であること疑いなしであるはずだが….
 同じ論法でも用いる場合によって都合のいいときと悪いときがあるようでどうも一貫性(consistency)がない.
 一貫性が無いことの英語 inconsistency はまた矛盾とも和訳される.
 
 無限遠点において下限と上限が接触することを目撃した訳でもないのにまあ接触したことにしておこうかというのが
 デデキンドやカントールの実数論であったりするのだから油断も隙もない.
 謂わば極限値論法による √2 のような無理数の存在は無いとは言えないと言えているだけである.
 それを有ることにしておこうというのは決して科学的とは言えまい.
 ここにデデキンドやカントールの実数論の非科学性がある.
 実数の切断においても自分が切断したいと思ったところで都合よく切断できないかも知れないという用心が無い.
 自分の切りたいと思ったところで思う存分に切りまくれると思っている.そこにデデキンド特有の甘さがある.
 彼らにもう少し慎重さと科学性があったならば
  後の量子力学の台頭によって実数論が危機に瀕するということも無かっただろうに.
 ( 実数が幾らでも小さく成り得るならば電子は原子と衝突して消滅するかも知れなかったのである.)
 
  さてそこで,私はそれほど優れた工夫ではないにしても適当に細分化して選択された有理数の目盛りを考える.
 このとき有理数の目盛りをどう取るかは問題の当事者間で任意に取り決めるものとする.
 ( 私はこのような約束事を任意規約とでも呼べば良いと考える.)
  そして x > π の場合は x の最小値を無理数 π を超えた最初の有理数目盛りまでとするのである.
 一方 x ≧ π の場合は x の最小値をこれを挟む最も近い上下の二つの有理数目盛りの間(隙間)までとするのである.
  
  今度はデデキンドの立場できちんと実数を述べて見よう.(ただし手短に済ませる為に話を要約する.)
 次のような切断と呼ばれる概念を導入する. 
 (*0-1) 数の集合を下組 A と上組 B に分け A 組の任意の要素を a とし, B 組の任意の要素を b とする.
 このとき常に,
  a < b,  a ≠ b
であると考える.
  (*0-2) 任意の数を p とし, p を挟んで A 組と B 組とに分けこれを切断と呼ぶ.
 このとき切断には可能性として次の三つの場合が考えられる.
 (*1) A, B の両者に p に最も近い代表者が決定できる場合.
 実際 p が円周率 π のような数で, しかも A, B 共に整数であった場合にはこのような切断が起こり得る.
 (*2) A, B の両者に p に近い要素が幾らでも存在する為にどちらの組でも p に最も近い要素が決定できない場合. 
 実際 p が円周率 π のような数で, しかも A, B 共に有理数であった場合にはこのような切断が起こり得る.
 (*3-1) p を A に含んでも良い場合.
 このとき B には p に近い要素が幾らでも存在する為に p に最も近い要素が決定できないとする.
  (*3-2) p を B に含んでも良い場合.
 このとき A には p に近い要素が幾らでも存在する為に p に最も近い要素が決定できないとする.
  デデキンドは (*3-1) または (*3-2) のみが切断として許されるとすることを要請してこれを切断の公理とする.
 そのような切断が全ての要素に対して起こし得る数の集合が存在すると考えこれを実数と呼ぶのである.
 そうすると実数には連続なる性質が獲得されてあることも, デデキンドによれば示し得る.
 因みに有理数の集合による切断は (*2) のような切断が起こり得る.
 このような性質を稠密(ちゅうみつ)と云い連続とは区別する.
 
 さて実数の連続性に対し再度これに疑問を投げかけて見よう.
 これは私の考えだが次のような切断コードを考えて見るのである.
 (**1) A で p に最も近い要素を唯一つ決定でき, しかも B で p に最も近い要素を唯一つ決定できる場合.
 このとき切断コードを二進数を用いて (11)2 とする.
  以前の切断では (*1) がこれに当たる.
  (**2) A で p に最も近い要素を唯一つ決定できず, しかも B でも p に最も近い要素を唯一つ決定できない場合.
 このとき切断コードを二進数を用いて (00)2 とする.
  以前の切断では (*2) がこれに当たる.
 そうするとデデキンドの実数の切断にこのような切断コードを対応させてみると
 (*3-1) → (10)2
  (*3-2) → (01)2
のようになる.
 整数による切断を (*1), 有理数による切断を (*2), 実数による切断を (*3-1) または(*3-2) のように考えると,
 数の包含関係の上で考えるならば,
 整数 ⊂ 有理数 ⊂ 実数  ⇒ (*1) ⊂ (*2) ⊂ ( (*3-1) または (*3-2) ) となるのに対し, 
  切断コードの上で考えるならば, 
 (11)2 > ( (10)2 > (01)2 ) > (00)2  ⇒  (*1) > ( (*3-1) または (*3-2) ) > (*2)
となって実数が整数と有理数の間にきてしまって整列が乱れてしまう.
 この不都合をもう少し旨く調節するには無理数を有理数の隙間にあると考えるやり方が良いかも知れない.
  例えば一個の数の表示に何個の整数が必要かを考えると, 
 (***1) 整数はその整数自身が一つすなわち 20 個の整数があれば良い.
 (***2) 有理数は分母と分子に一個づつ合計二個すなわち 21 個の整数があれば良い.
 (***3) 無理数を適当に選ばれた有理数の隙間にあると考えることにより下限と上限の有理数を表すのに二個づつ
 合計で四個すなわち 22 個の整数があれば良い.
 このように考えると数の包含関係と数の表示に必要な整数の個数との序列が一致するように出来る.

 そして隙間よりももっと合理的なのが現代数学の近傍という考えなのではないかと思う. 

 ( 私は論理数学というものを単に論理記号を使っているから論理的であるというような幼稚さで捕らえたくない.
 私は論理数学とは考察される対象と同型な道具を用いて考察することであると考える.
 すなわち論理の正しさは使っている記号の種類によるのではなく如何に適した道具で説明するかによるのである.
 私はまた正規化された論理を探ることが論理数学であると考える.
 論理の正規化とは
 (1) 無駄なことは省く.
 (2) 必要なことは述べる.
 (3) 正しい順序で述べる.
ことであり,しかも
 (4) 表現手段は一つとは限らない.
ので「人を見て法を説く」ことを心がける.ということである.
 ( 例えば「ポアンカレ予想」の解決を主張する論文の表題で「微分多様体上で」とか「PL多様体上で」とかの
修飾語が省かれているとしたら,論理の正規化の意味において一考を要すると言えよう.
 何故なら単連結な閉多様体が 3 次元球と同値にならないような多様体上の群は無限に多く存在するはずであって
そういう意味では該当命題の真偽は決定不能だからである.)

 このような論理ならば小中学生の問題にでも応用できる原則となる.
 我々の周辺を見回して連続な例を挙げよと問うてみたならば返答に窮するであろう.
 敢えて答えればデデキンドの実数が連続なものの稀な唯一の例であると言えよう.
 ならば厳密な実数論は実際には無用であったかも知れないと言うのが私の考えである.
 しかし我々の身近な問題では √2 や π の有理数近似のように下限の有理数と上限の有理数で目標の値を挟みながら
 毎回ごとに縮めて行く論法が必要なことが良く起こる.
 よってそのような論理の雛形化による道具の整備こそが重要な論理上の準備であると痛感する.
 無限級数による π の求和もこのような道具に基づいて述べ直されたならば疑問の大部分は解消するはずである.) 

  さらに連続にはもう一つあってそれは微分連続である.
 これは関数 f(z) が σ の近傍で何度でも,すなわち無限回でも微分できるという性質である.
 この性質を持つ f(z) は
 f(z) = α0 + α1(z-σ) + α2(z-σ)2 + … + αn(z-σ)n + …
と置いて良いとしておくと  
 αn = f(σ)(n)/n!
となって f(z) の無限級数展開が得られる.
 例えば f(z) = tan-1(z) のような場合にはこのような無限級数展開が可能となり, 
  先ず σ = 0 として係数 αn たちを求め(マクローリン展開), さらに z-σ = z = 1 とすれば,
 tan-1(1)= π/4
から
  π/4 = 1 - 1/3 + 1/5 - … 
が得られる.この方法でも π が近似できる.

( しかしながら収束が遅いと云われている.かなり上位の項まで来ると太平洋の水を耳掻きですくってるような感じ?)
( tan-1x の無限級数展開で注意すべきは展開式自身に代入して良い x は tan-1x のそれよりかなり狭いことである.
 無限級数法では関数の収束条件も明示すべきである.
 そういう意味では被展開関数と展開関数とは完全には一致していない.
 例えば π/3 なら不合格で π/6 なら合格ということも考えられる.
 少なくとも項の n 乗根の絶対値が 1 を超えないようになっていないと収束しない.収束するとは限らないけど.
 収束条件が示せない場合,単に偶然で収束しているにすぎず少しコジツケっぽくなる.
 たとえ収束することが示せてもその収束値が正確に tan-1(1)=π/4 であるとは限らない.
 かなり項の番号の高いところで微妙な偏差が残っているかも知れない.
 いずれにせよ方法の明快さは健全な数学の命でもある.)

  因みに x, y を実数, y = tan-1(x), x = tan(y) として π/4 の上記展開を導いておこう.
 x = tan(y) = sin(y)/cos(y) から
 dx/dy = (sin(y)'cos(y)-sin(y)cos(y)')/cos2(y) = (cos2(y)+sin2(y))/cos2(y)
        = 1 + sin2(y)/cos2(y) = 1 + tan2(y) = x2+1
  ∴ dy/dx = 1/(x2+1)
  ∴ f'(x) = f(1)(x) = (x2+1)-1 
           = (i/2)((x+i)-1-(x-i)-1)
 この変形から f(x) の n 階微分 f(n)(x) を形式的に求めると,
 f(n)(x) = (-1)n-1(i/2)(n-1)!((x+i)-n-(x-i)-n)
  ∴ f(n)(0) = (n-1)!((i)n-1+(-i)n-1)/2
  さらに n = 4m+r ( r=0,1,2,3, m=0,1,2,3,… ) とすれば,
  n = 4m   ⇒ f(4m)(0) = (4m-1)!(-i+i)/2 = 0
  n = 4m+1 ⇒ f(4m+1)(0) = (4m!)(1+1)/2 = 4m!
  n = 4m+2 ⇒ f(4m+2)(0) = (4m+1)!(i-i)/2 = 0
  n = 4m+3 ⇒ f(4m+3)(0) = (4m+2)!(-1-1)/2 = -(4m+2)!
  ここから, さらに
  αn = f(n)(0)/n!
  から,
  α4m = 0
 α4m+1 = 4m!/(4m+1)! = 1/(4m+1)
  α4m+2 = 0 
  α4m+3 = -(4m+2)!/(4m+3)! = -1/(4m+3)
  ∴ tan-1(x) = x - (1/3)x3 + (1/5)x5 - …
  ∴ tan-1(1) = π/4 = 1 - (1/3) + (1/5) - …
  これを改良して
 π/4 = 2/1・3 + 2/5・7 + 2/9・11 + …
 π/8 = 1/1・3 + 1/5・7 + 1/9・11 + … = ∑((4n-3)(4n-1))-1
 ここでは取り上げないがマクローリン展開やテーラー展開にはラグランジュの剰余というのが計算できるはずでこれを
利用すれば誤差の表示や収束の遅速も評価できると思える.ただ実用的にラグランジュでは冗長すぎるのかも知れない.
  これは私の即興だが, 粗くは次の不等式も成り立つかも知れない.
 (m)∑((4m-3)(4m-1))-1 < π/8 < 1/2 - (m)∑((4m-1)(4m+1))-1  
 あるいは次の式の方が計算の手間や誤差表示の上でもう少し実用的かも知れない.
 4(m)∑((4m-3)(4m-1))-1 < π/2 < 4(m)∑((4m-3)(4m-1))-1 + 2/(4m-1)
  ここから
 π ≒ ( 8×(m)∑((4m-3)(4m-1))-1 + 2/(4m-1) ) ± 2/(4m-1)
として π を近似できる.この式なら PC でプログラムを組んで求めるような場合の良い練習問題になると思える.
  私の PC で JAVA のアプリケーションを応用してプログラムを組んで実行して見たところ,
 倍精度計算で for ループをわずか一つだけ含むような単純なプログラムの作成に約30分.
 m = 100×1000 ⇒ π ≒ 3.14159265 ± (5.00×10-6)  ( 実行時間  約6分 )
  m = 1000×1000 ⇒ π ≒ 3.141592653 ± (5.00×10-7)  ( 実行時間  約48分 )
 大体 m の桁数と同じ位の桁数で求まるが消費時間は桁数の加法的増加に応じ乗法的に増加するらしいと推察される.
 後で述べるような私が主題とする方法ではオフライン作業を含めても1時間も費やさずに500桁は求まる.
 (これらの表示で最初の m 和 (m)∑ を和の記号を使わないで直接表示の公式を求められたならば, 
 より実用的に成り得ると思える.素朴な方法ではまず無理だろうけれど.)
 結局のところ原理的に比較的簡単な
 n・sinθ < π/2 < (n+1)tanθ
等の方が総合的に考えてもう少し合理的であるかも知れない.これだと極めて自然に
 π ≒ ( n・sinθ + (n+1)tanθ ) ± ( (n+1)tanθ - n・sinθ )
であるとする表示が可能となる.

  また楕円やレムニスケートと呼ばれるような曲線(一般に楕円関数と総称される.) の n 等分の長さを決定する場合も
 関数の微分連続性から無限級数に展開して, さらにその級数を項別積分した無限級数を考え, これに基づいて線積分の
 解の表示や近似を行うというやり方が常套手段となっているようである. 
 
 例えば正方形だとその周の長さか面積が分かると, それを利用して他方を決定できる.
 しかし長方形だと一方が分かっても, それを利用して他方を決定することは出来ない.
 これらと同様に円だとその周の長さか面積が分かると, それを利用して他方を決定できる.
  ( ここでも, 
  sin θθtan θ, 
  0 < ⊿θ<< 1  ⇒ sin ⊿θ⊿θtan ⊿θ,
 などが真ならば,
 L を単位円の周長, S を単位円の面積として,   
  n × (1/2) × sin(L/n)  < n × (S/n) < n × (1/2) × tan(L/n), 
  ℓim ( n → ∞ ) sin (L/n) = L/n, ℓim ( n → ∞ ) tan(L/n) = L/n
  などから L/2 = S が導ける.ここから L から S か, S から L が求められる.
 そして S は円周率 π に他ならない.)
  しかし楕円だと一方が分かっても, それを利用して他方を決定することは出来ない.
 楕円は円を傾けた図形だからその傾きとカバリエリの原理からその面積を決定することは出来る.
 しかし楕円の周の長さの決定は特有の無理関数の線積分となる.
 しかもその被積分関数は初等関数の微分の結果にはない関数である.
 ところが幸いなことに無理関数は微分連続な関数ではあるので先述のような方法で被積分関数自体を無限級数展開し
 項別積分を実行して楕円周長を表す無限級数表示を得ることが可能となる.
  ( そして正方形と円の場合を総合すれば対称性の強いものほど解き易い傾向にあると言えそうである.
  少しでも解き易くするには非対称性を弱めたり, 可能な断片を全て拾い集めることだとも言えそうである.)
  (2) 多角形の正弦と正接の間に中心角を挟むようなやり方の場合(アルキメデスの方法等)
 正多角形にこだわりすぎているのではないか。部分的に不等辺なほぼ正多角形でやれないのだろうか?
 原理的には
 θ12,…,θn を必ずしも全て等しいとは限らない実数達として,
 π = ∑θn  ⇒  ∑sin‏θn < π < ∑tan‏θn
が成り立つ.  
  (3) 半角公式を使うと平方根を計算しなければならなくなり計算の手間が増えたり、計算の精度が落ちる.
  逆に有理座標を利用して, しかも倍角公式が使えたならば平方根が不要となるので都合が良い.
 (4) 整数比の直角三角形から正弦、余弦、正接が有理座標で得られる.
 これらの利用が意外にもほとんどの専門家の研究報告で見落とされている。
 (5) π/4 = tan-1 1 = 1 - 1/3 + 1/5 - … + (-1)n-1/(2n-1) + …
というマクローリン展開等で近似する場合、n 和を取ったときの(ラグランジュの)剰余が省略されている.
 これをつけておくことで部分的な n 和であっても実用的な近似になり得る.
  (6) 無限級数等で近似する場合に項の順序を意図的に入れ替えると総和が異なる場合がある.
 そういうことの検討も加えておくと内容的に一層良くなるかもしれない.
 計算機の単なるベンチマークテストと π の近似計算との相違は誤差の評価の有無にあると云えよう.
  (7) いわゆるモンテカルロ法でも誤差の評価が出来るのだろうか?
  さらに,
  x2 - 2x + 1 = 0
  モンテカルロ法で上式の x = 1 を求めることが出来るか?
  単純に考えれば, 重根 1 は無限通りある x の内のわずか一個である.よってその存在確率は 0 である.
 それで不可能なことのように思えるが, しかし方法的にはないこともない.
 一辺が 1 の正方形と一辺が x の正方形の角を突き合わせておいて各辺を水平か垂直に向け A 組とする.
 一方, 1 掛ける x の二つの長方形も角が接しているがこれを B 組とする.
 しかも x は自由に伸ばせると考える.そうして何本も矢を投げ続けたとする.
 A 組に当たった本数が Na で B 組に当たった本数が Nb とすれば,
 x = 1 の範囲で考えれば Na(x=1) ≒ Nb(x=1) となる.
 なぜなら, そのときだけ A 組と B 組の面積が等しいので当たった本数もかなりの本数に対しては
 ほぼ等しくなると考えられるから.
 しかしこの方法の不都合なところは x が無限に長いところまで続いていることである.
 すなわち有限の大きさの的にはならなくなってしまうことである.
 そんな理由で私はモンテカルロ法をかなり怪しげな方法であると考えている.
 なぜならデータが適当に捏造されていても簡単には検証できないからである.
 相手のやった事を信じておくしかないだろう.( このようなデータは一種の信仰告白なのかも知れない.)
 しかし, 一種の宗教性を数学の分野に持ち込もうという試みは非常に面白い着想であるとは思う.
 易しく言えば π = 3.14 … であると信じておくことなのだろう.( しかし, かなり確かなことだが )
  素粒子の物性でいうような移動度とか衝突断面積とかの議論を一種のモンテカルロ法に相当している,
と考えると, ナンセンスな方法でもなさそうである.
  さらに, 生物学でいう突然変異をモンテカロ法の一発の矢の出来事に相当すると考えたならば,
  生物の進化の中にある一種の神秘性は拭い得まい.

 既に述べたような逆三角関数の微分連続性から近似式を誘導するようなやり方は常に説明しがたい神秘性が残る.
 たとえ収束の早い級数を利用して円周率を即座に求めることができたとしても,そのような方法で良いのだ
ということを理解するのに数年,数十年はかかるようでは理解までの能率という点においてむしろ劣っている.
 単に計算に要した時間だけではなく,方法の完全な理解に達するまでの時間も考慮すべきである.
 本当は分かっていないのに分かったような顔だけしておくということを教えることは真の数学教育ではない.
 分かっている振りの旨い人間を作るだけである.( 決して数学という分野だけのことでもないことだが.)
 どこで誤魔化してどこで誤魔化されたか分からぬような論法は決して健全とは云えない.
 着意の単純や方法の簡便は社会的道具としての数学の健全性の鍵である.

 いずれにせよなんらかの方法で神秘性が拭い去られた方法を用いて円周率を正確に決定しておく必要が起こる.
 そのような場合に私の発見した方法が優れていると思える.
 ( 必ずしも社会が未だ認めてくれてはいないだろうけれども.私には権威がないからである.
 私の発見した方法はもっと高く評価されて然るべきであると考えている.
 そのような反応の鈍さで果たして現代が真の情報化の社会であると云えようか?)

 例えば
  f(x) = tan-1(x), 
 g(x) = x - x3/3 + x5/5 - ・・・   
とおいたとして
 f(√3) = tan-1(√3) = π/3
となるが
 g(√3) = √3 - √33/3 + √35/5 - ・・・ → 発散
 ∴ f(√3) ≠ g(√3)
  そんな訳で f(x) と g(x) は厳密には一致しない,異なった曲線であると考えられる.
 x=1 において
  f(1) = tan-1(1) = π/4
  g(1) = 1 - 1/3 + 1/5 - ・・・
 π/4 = 1 - 1/3 + 1/5 - ・・・
として π を極めて長い桁数で近似しようとする場合
 f(x) と g(x) は本来は異なった曲線であるが,少なくとも x = 1 において両者は例外的に一致すること
 f(1) = g(1)
であることの証明が必要である.(以後これを交点証明と言う.)
 事実とは異なるが極端な譬えとして仮に
 |f(1)-g(1)|=⊿y≠0, ⊿y≒10-n
であったとして n より少ない桁数のところまでなら g(1) を f(1) の代用と考えても良い.
 しかし n を超える桁数において g(1) を f(1) であると考えると明らかに間違いである.
 一方,物理学の測定等においては測定器も含めた測定環境そのものの誤差がかなりあって
 そんな場合は ⊿y が測定誤差より充分小さいのであれば g(1) を f(1) と考えても構わない.
 しかし我々は π を何万桁でも何億桁でも正確に決定しようとして g(1) を使おうとしているのである.
 交点証明が付いていなければ不安である.
 同様の不安はまた別の逆三角関数 sin-1(x) 等の展開式を用いる場合にもあると云える.
  ( 完全な謎解きの施されていない推理小説のような歯切れの悪さを感じる.
 謎解きを強調しないと少しも数学らしくならない.)

 別の例として tan(x) と sin(x) はどちらも x について無限級数への展開を持つ.
 x = α が極めて小さいときには
 tan(α) ≒ sin(α) 
が極めて強い意味で成り立つ.そんな場合に両者の n 和はどこまでも一致するように見える.
 しかし最終的には tan(α) と sin(α) はどちらも収束はするが異なる値に収束する.
 先ほどの f(α) と g(α) もこのような tan(α) や sin(α) のような関係でないとどうして言えようか?
 g(α) は収束はするが f(α) とは微妙に異なる値に収束するという場合も考えられる. 
 ましてやそのような関係を用いて公的な定数 π を決定しようと言うのである.
 交点証明がなければ致命的な不備となる.つまり完全な信頼が得られていない.
 そのような不確かな方法で譬え何千億桁求めたと云っても単なる参考値にすぎない.
  交点証明が出来ないときは少なくとも不等式の下限と上限の真値挟撃と入れ子の証明ぐらいは必要であろう.
  ( 無限級数展開の場合は級数が収束することを示せば良いことになっている. 
 例えば
 tan-1(x) の展開式で x=1 は収束するかどうか微妙だが
 実級数
 1 + |- 1/3| + 1/5 + |-1/7| + ・・・
は収束するはずである(このとき元の交代級数は絶対収束するという.)
 ゆえに元の交代級数自身も収束するはずである.
 (筆者はこれを書いたときは絶対収束が証明できると信じていたが今はできないかも知れないと感じている
 絶対収束から攻めるのではなく元の交代級数が収束することを直接示すほうが簡単だったかも知れない.
 いずれにせよ無限級数法というのはその収束の可否の決定だけでも今の例のような大変な困難が伴うのである.
 1/x2 を 1 から +∞ まで積分すると 1 になるので 1/3×1,1/35×1,1/99×1,… の長方形の面積が
 曲線 1/x2 の内側に取れることを言えば収束することが示せる.
 しかしそれでも左辺と右辺が何桁目までも限りなく一致すると言えているかどうかは疑問である.)
 そんな訳で tan-1(x) の級数展開で x=1 を代入すれば π/4 に収束すると考えて良い.(かも?) 
 同様に sin-1(x) の級数展開で x=1/2 を代入すれば π/6 に収束するのは間違いない.
 (これは収束半径内にあるから先ず大丈夫である.)
 このような神秘性が周辺に漂っている場合には理論そのものの検証も含めて求められた結果の正しさを
確かめるべきである.
  そんなとき元の級数とは異なった方法で得られた結果と照合して見るのが確実であろう.
 私の発見した方法では別の前提条件の下で別の近似桁数を持つ円周率を何通りも得ることができる.
 これらの異なる条件と異なる長さの近似円周率どうしを互いに照合して見ることで確実に真値が決定できる.)
 一人の通行人の証言を正しいとするのはあまり科学的とは呼べまい.その通行人が如何なる権威者であれども.
 真の科学性を保証するには自分自身の結論をも疑うという徹底的な懐疑主義が必要である. 
  円周率そのものに神秘性がなくてもその求め方に神秘性が残っているようでは困る.
 自分が完全に説明できないような道具を用いて計算することを薦めることは決して健全ではあるまいと考える.
  神秘的でない計算方法を整数論の公理系から導ける方法に限定したとすれば
  tan-1(1) や sin-1(1/2) の無限級数を用いる方法は全て不合格となる.
 なぜならこれらの方法は全て実数の連続性に基づいており,実数の連続性は実数の切断の公理に基づいているが
 実数の切断の公理は整数論の公理系には属さないからである.

 §3.1 全ての整数比の直角三角形が潜在的に持つ,もう一つの整数比の直角三角形.


  [図‐1] 偏倚(へんい)直角三角形 Oph

  ( x, y, z ) を整数の定理三つ組みとして,

  x < y < z, y - x = P 

  とする.

 図‐1で,三角形 abp において,  

 「 直径が張る円周角は直角である 」 から  点 p は z を直径とする半円周上に存る. 

 これには,裏の直角三角形とでも云うべきもう一つの三角形 Oph が潜在している.

 この三角形 Oph を偏倚直角三角形と呼んでおこう.

  x と z が定義する挟角を α, y と z が定義する挟角を β,∠Oph を γ とすれば,

 α - β = γ ( ∵ bO = Op = z/2,∠Obp = ∠Opb = β,  ∠bph = α, ∠Oph = ∠bph - ∠Opb ) 

  この γ を偏角と呼んでおく.

 sinα = cosβ = y/z, cosα = sinβ = x/z

から,

 sinγ = sin(α-β) = sinαcosβ - cosαsinβ = (y/z)(y/z) - (x/z)(x/z) = ( y - x )( y + x )/z2 

= P( x + y )/z2,
                                                                                          (3-1-1)
  cosγ = cos(α-β) = cosαcosβ + sinαsinβ = (x/z)(y/z) + (y/z)(x/z) = 2xy/z2 = (z2-(y-x)2)/z2 

= ( z2 - P2 )/z2,
                                                                                          (3-1-2)
  tanγ = sinγ/cosγ = P( x + y )/( z2 - P2 )
                                                                                          (3-1-3)
が導ける.

  あるいは P ≠ 1 のときは,

 x' = x/P, y'=y/P, z' = z/P

と考えることにより,

 P' = |x' - y'| = 1

となるので,

 ( P', x', y', z' ) で ( P, x, y, z ) を置き換えて扱うことにすれば, 

 以後の処理が統一的になり, より都合よくなる.


§3.2 偏角 γ による円周率 π の近似計算の基本原理.

  従って,偏倚直角三角形 Oph は,

 z2:2xy:y2-x2 = z2:z2-P2:P(x+y)

の整数比を持つ.

 もし

 y-x = P = (定数), z >> 0

ならば,始に取られた x:y:z の外側の直角三角形 abp を考えれば

  ⊿abp ≒ (二等辺三角形)

となるはずである. 

  そんな場合には偏角 γ も微小であると考えて良い.

 ここで適当な整数 m が存在して

  mγ < π/2 < ( m + 1 )γ  
                                                                                          (3-2-1)
であると仮定し,m を四半円分指数と呼んでおく.
 
 ここで,以下の図‐2を参照.
  [図‐2] 正弦正接挟撃法による円周率 π の近似の原理   

 この図で先ず,二等辺三角形 Opc', 扇形 Opc', 直角三角形 Op'c' の面積を考える.

 円 O の半径が z/2 であることに注意すれば,

 二等辺三角形 Opc' の面積 = ( sinγ/2 )( z/2 )2,
                                                                                        (3-2-2-1)
  扇形 Opc' の面積 = ( γ/2 )( z/2 )2,
                                                                                        (3-2-2-2)
  直角三角形 Op'c' の面積 = ( tanγ/2 )( z/2 )2 
                                                                                        (3-2-2-3)
  二等辺三角形 Opc' の面積 < 扇形 Opc' の面積 < 直角三角形 Op'c'の面積,
                                                                                        (3-2-2-4)
から,

 sinγ < γ < tanγ   ( 0 < γ < π/2 )
                                                                                        (3-2-3-1)
  古代から知られていたと考えられるこの公式は,ここで述べるような多角形を利用した円周率の近似計算や

 三角関数の微積分などにおいて,究極的に重要な基本公式であると私は考えている.

  mγ < π/2 < ( m + 1 )γ  
                                                                                          (3-2-1)
から,さらに新たに γ' を

 γ' = π/2 - mγ 
                                                                                        (3-2-3-2)
とすれば, これにも,

 sinγ' < γ' < tanγ'
                                                                                        (3-2-3-3)
が成り立つと考えて良い.

 ゆえに 3-2-1, 3-2-3-1, 3-2-3-2, 3-2-3-3 から,

  msinγ + sinγ' < π/2 < mtanγ + tanγ'
                                                                                        (3-2-3-4)
なる不等式が成立する.( γ' を剰余偏角と呼んでおこう.)

 ここでさらに,

 sinγ' = sin(π/2-mγ) = sin(π/2)cos(mγ) - cos(π/2)sin(mγ)

= cos(mγ)
                                                                                        (3-2-3-5)
  cosγ' = cos(π/2-mγ) = cos(π/2)cos(mγ) + sin(π/2)sin(mγ)

= sin(mγ)
                                                                                        (3-2-3-6)
 ∴ tanγ' = sinγ'/cosγ' = cos(mγ)/sin(mγ)

= cot(mγ)

  ゆえに先に掲げた 3-2-3-4 は云い換えると,

  msinγ + cos(mγ) < π/2 < mtanγ + cot(mγ)
                                                                                        (3-2-4-1)
としても良い.

 そこで,新たに Ld, Lu, Pi, Er  を

 Ld = msinγ + cos(mγ),
                                                                                        (3-2-4-2)
  Lu = mtanγ + cot(mγ),
                                                                                        (3-2-4-3)
  Pi = Lu + Ld,
                                                                                        (3-2-4-4)
  Er = Lu - Ld

と置けば,

  Pi - Er < π < Pi + Er
                                                                                        (3-2-4-5)
であると云えるので,

 π ≒ Pi ± Er
                                                                                        (3-2-4-6)
として,円周率 π が近似できる.

 そうすると,問題はいかにして四半円分指数 m を決定するかに係ってきていると云える.

 m の値は今回の双曲指数 n が大きくしかも前回の双曲指数が n/2 以上であるときに

 前回の近似円周率 Pai の値を用いるならば M が何百桁にも及ぶ場合であっても

 上限と下限の差が僅か 4 程度の範囲内でかなり正確に予想し得る.

( ◇ Mh - M ≒ 4 であることの証明.

 四半円分指数を M とすれば双曲指数 n が極めて大きい場合においては
 M ≒ πz/(2√2)
となることは本稿の初め付近で既に述べた.
 ここで
 x - y = f2 - 2g2 = 1, f + g√2 = ( 1 + √2 )n ( n は偶数 )
  x = 2fg + f2, y = 2fg + 2g2, z = 2fg + f2 + 2g2,
  x2 + y2 = z2
を再掲しておく.
 さらに,
 f2 - 2g2 = 1  ⇒  f/(2g) > 1/√2 > g/f
であることから,M の予想の上側 Mh と下側 M を以下の様に定義する.
 Mh = (πz/2)(f/2g) ( > πz/(2√2) ),
  M = (πz/2)(g/f) ( < πz/(2√2) )
  そこで Mh と M の差を求めて見ると
 Mh - M = (πz/2)( (f/2g) - (g/f) ) = (πz/2)( ( f2 - 2g2 )/2fg )
  = (πz/2)/( x + y - z )   ( ∵ f2 - 2g2 = 1, 2fg = x + y - z )
 ところが n が極めて大きい場合においては,
 x ≒ y ≒ z/√2
でもあるので,
 Mh - M = (πz/2)/( x + y - z )	= π/( 2( 1/√2 + 1/√2 - 1 ) )
  = π/( 2( √2 - 1 ) ) ≒ 3.14159/( 2 × 0.4142 ) = 3.14159/0.8284 ≒ 3.79 ≒ 4
  ∴ Mh - M ≒ 4
 (証明終わり) 
 実際には Mh - M = 3,4 となる.) 

  更に z, γ, m の間には,次のような概算も成立する. 

§3.3  z と γ, m の関係.

  ここでも前節と同様,

 0 < x < y < z, y - x = P, z >> 0
                                                                                        (3-3-1-1)
を前提としておく.

  そうすると,この直角三角形は,ほぼ直角二等辺三角形でもあるので,

 x ≒ y ≒ z/√2,
                                                                                        (3-3-1-2)
 ∴ sinγ = P(x+y)/z2 ≒ P√2/z
                                                                                        (3-3-1-3)
  このとき,さらに,

  mγ ≒ π/2   ( mγ < π/2 )
                                                                                        (3-3-2-1)
   sinγ ≒ γ   ( sinγ < γ )
                                                                                        (3-3-2-2)
が成り立つと考えて良い.

  よってここから,

 m ≒ π/(2sinγ) ≒ (π/(2√2))(z/P)   ( m < (π/(2√2))(z/p) )
                                                                                        (3-3-3-1)
  周辺の長さ γ(z/2) ≒ P√2/2   ( γ(z/2) > P√2/2 ) 
                                                                                        (3-3-3-2)
などの近似式が成り立つと考えて良い.

 (π/(2√2)) は正弦波交流の理論で波形率と呼ばれている.

 実効値 = 最大値/√2 (二乗平均値の平方根), 平均値 = 最大値×2/π, 波形率 = 実行値/平均値,
                                                                                        (3-3-4-1)
  波形率 = π/(2√2) ≒ 1.111 ( < 1.111 )
                                                                                        (3-3-4-2)
  結局,3-3-3-1, 3-3-3-2 の意味をより大まかに云えば,

 m は z/P のほぼ 1.111 倍付近にある.

  また,扇形 pOc' の弧 pc' の長さは半径 z/2 とは無関係に常にほぼ一定で P/√2 位の大きさである.    

  さらに 3-3-3-1 を変形すると, 

  π ≒ 2Pmn√2/z 
                                                                                        (3-3-5-1)
  さらに,

 lim(n→ω)fn/gn = √2
                                                                                        (3-3-5-2)
であることから,

 π = lim(n→ω)(2Pmn/zn)(fn/gn)
                                                                                        (3-3-5-3)
という極限値表示が成り立つと考えて良い.

 ここから,

 π ≒ (2Pmn/zn)(fn/gn)
                                                                                        (3-3-5-4)
と考えても π が近似できる.

 実際, n が大きい場合には良い近似が得られる.

 例えば,  

  P = 1, n = 10 

の場合を例に取れば,そこでは,

 m10 = 42889331, f10 = 3363, g10 = 2378, z10 = 38613965

となるので,

 (2Pm10/z10)(f10/g10)
         
= (2×42889331/38613965)×(3363/2378) = 3.141592751…

となり,小数点以下6桁まで一致している.

  あるいはまた,

 (単位弧長) π/(2m) ≒ (P/z)(f/g) = P((g'/g)-1)/(g'2+g2),  g'=f+g

が成り立つ.

  あるいは, 本稿では取り上げなかったが,

 msinγ < π/2 < (m+1)tanγ
                                                                                          (3-3-6)
も近似の精度が 3-2-4-6 と比べると若干悪くはなるが, cos(mγ), cot(mγ) を必要としないので, 

  参考値として求めておくと良いかもしれない.

§3.4 双曲座標から生成された定理三つ組みの m, γ の差分.

 主に別記「整数の三平方の定理の直交する二辺の差」の§§2で述べた事柄を応用して,

  f, g ∈ {N+}, n ∈ {0,N+}( n = 0, 1, 2, … ), ∀P ∈ {P>0|1,8k±1型素数の積},

  fn + gn√2 = ( f0 + g0√2 )(1+√2)n,

 fn2 - 2gn2 = (-1)nP,

  xn = fn2 + 2fngn,

  yn = 2gn2 + 2fngn, 

  zn = 2fngn + fn2 + 2gn2

などとして定理三つ組みを生成したと仮定しよう.

  ここで以後の議論のために,P を偏倚(へんい)と呼び,n を 双曲指数と呼んで良いとする.

 すなわち,

 ( xn, yn, zn ) 

を偏倚 P, 双曲指数 n の定理三つ組みと呼ぶことにしよう. 

 このとき「整数の三平方の定理の直交する二辺の差」定理10-1から,

 zn + zn+2 = 6zn+1, 
                                                                                        (3-4-1)
  ( zn < zn+1 < zn+2 )
  
が成立している.

 すると,3-3-3-1 から,

  mn ≒ (π/(2√2)(zn/P),
                                                                                        (3-4-2-1)
   mn+1 ≒ (π/(2√2)(zn+1/P),
                                                                                        (3-4-2-2)
   mn+2 ≒ (π/(2√2)(zn+2/P),
                                                                                        (3-4-2-3)
が成り立っていると考えると,

 mn + mn+2 ≒ 6mn+1
                                                                                        (3-4-3-1)
  ( mn < mn+1 < mn+2 )

  ∴ mn+2 ≒ 5mn+1 + ( mn+1 - mn ) < 6mn+1  

  ∴ 5mn+1 < mn+2 < 6mn+1 

 番号を一つずらして,

 5mn < mn+1 < 6mn
                                                                                        (3-4-3-2)
が成り立つ.
 
  また,

 mnγn ≒ mn+1γn+1 ≒ π/2
                                                                                        (3-4-4-1)
と考えれば,

 (1/6)γn < γn+1 < (1/5)γn
                                                                                        (3-4-4-2)
となる.

 すなわち,偏倚 P を一定として, 

 双曲指数 n を 1 だけ加算すると,

 四半円分指数 m は前回の 5 倍と 6 倍の間にあり,

 偏角 γ は前回の 1/6 と 1/5 の間にある.

 従って半角公式を応用した円周率 π の近似では半角公式を一回使用する毎に辺数は二倍となるに過ぎないが,

  私の方法では双曲指数 n を 1 だけ加算するだけで辺数は約 5.8 倍となる.( 5.8 は経験値である.) 

  詳しくは既に述べた如く

 mn+2 ≒ 6mn+1 - mn
                                                                                       (3-4-3-1')
が成り立ち n の値の初期の頃より 1 の位が異なる程度の極めて強い近似となる.

 ゆえに手間さえ厭わなければ,連続した n について試行を行うことで m が予想しやすくなるだけでなく

 他の何を参考にすることもなく自分の求めた結果だけを見比べれば π の近似の正しい展開が分かる.

  しかも既に述べたように平方根演算は不要で有理演算だけで良いのも長所と云えよう.

  結局,主として以下のような不等式の数列を双曲指数 n に基づいて追跡して行くことになる.

  fn+gn√2=(1+√2)n, fn2-2gn2=(-1)n

  xn=(fn+gn)2-gn2,yn=2(fn+gn)gn,zn=(fn+gn)2+gn2

  γn=tan-1(xn+yn)/(2xnyn)), mnγn < π/2 < (mn+1)γn

を前提として,

  f1/g1 < 2g2/f2 < ・・・ < f2s-1/g2s-1 < 2g2s/f2s < ・・・

  < √2 < ・・・ < f2s/g2s < 2g2s-1/f2s-1 ・・・ < f2/g2 < 2g1/f1
                                                                                        (3-4-4-1)
 m1sin1)+cos(m1γ1) < m2sin2)+cos(m2γ2) < ・・・ < mnsinn)+cos(mnγn) ・・・ 

  < π/2 < ・・・ < mntann)+cot(mnγn) < ・・・ < m2tan2)+cot(m2γ2) < m1tan1)+cot(m1γ1)
                                                                                        (3-4-4-2)

 次節からは主に偏倚 P = 1 で双曲指数 n を 1 から順に加算していった場合の π の近似方法について,

 初めは10桁のポケット電卓で概略を説明,次に Java の倍精度実数による PC 上のアプリケーションの作成時,

 更に Java の BigDecimal Class による高精度の計算プログラム作成時の留意点を述べる.

 最後に双曲指数 n = 750 の場合について π の近似 1147 桁の私の実行結果を示して本稿を終えたい.


§3.5.0. 偏倚直角三角形から円周率 π を計算するために必要な数学公式と要素プログラム.

 この節で以下の計算の実行に必要な主な数学的処理をまとめておこう.

  (1) 初期の双曲座標 ( F0, G0 ) と 双曲指数 n から双曲座標 ( Fn, Gn ) を求める. 

  Gt+1 = Ft + Gt,

  Ft+1 = Gt+1 + Gt     

  この処理を 

  t = 0,1,2,…n-1    

の順で繰り返す.

  (2) 定理三つ組みの計算. 

  G = Gn, G' = Fn + Gn, 

  Xn = G'*G' - G*G, 

  Yn = 2*G'*G,

  Zn = G'*G' + G*G

  もし 

 Xn > Yn
 
 なら両者を入れ替える.

 P = Yn - Xn ( >0 )

  (3) sinγ, cosγ, tanγ の計算.

  Ta = P*( Yn + Xn ),

  Tb = Zn*Zn,

  Tc = Tb - P*P,

 sinγ = Ta/Tb,  

  cosγ = Tc/Tb,     

  tanγ = Ta/Tc  
 
  (4) 倍角公式処理.( 実際には三角関数は不要,全て有理計算となる.)

  sin(2mγ) = 2*sin(mγ)*cos(mγ),

  cos(2mγ) = 2*cos(mγ)*cos(mγ) - 1,  

  (5) 加法定理処理.( 実際には三角関数は不要,全て有理計算となる.)

  cos((m+m')γ) = cos(mγ)*cos(m'γ) - sin(mγ)*sin(m'γ)

 sin((m+m')γ) = sin(mγ)*cos(m'γ) + cos(mγ)*sin(m'γ)

  cos((m-1)γ) = cos(mγ)*cosγ + sin(mγ)*sinγ

  cos((m+1)γ) = cos(mγ)*cosγ - sin(mγ)*sinγ

  (6) 十進二進変換.

  c を二分法処理の mc とする.  

 c = ts2s + ts-12s-1 + … + t12 + t0   ( ts = 0 または 1 )

  (a-1) c が偶数ならば t0 = 0 であったことになる. 
 
  c を 2 で割ったもので c を更新.( s = 0, 1, …, s )

 倍角公式のみを実行.

  s = 0 ならば 行列 A( m, cos(mγ), sin(mγ) ) を ( 1, cosγ, sinγ ) で初期化.

 s ≠ 0 ならば 行列 A( m, cos(mγ), sin(mγ) ) を ( 2*m, cos(2mγ), sin(2mγ) ) で更新.

  (a-2) c が奇数ならば t0 = 1 であったことになる, c から 1 を引いて 2 で割ったもので c を更新.
 
  倍角公式処理を実行.

  s = 0 ならば 行列 A( m, cos(mγ), sin(mγ) ) を ( 1, cosγ, sinγ ) で初期化.

  s ≠ 0 ならば 行列 A( m, cos(mγ), sin(mγ) ) を ( 2*m, cos(2mγ), sin(2mγ) ) で更新. 

 加法定理処理を実行.

  行列 B( m, cos(mγ), sin(mγ)) は ( 0, 1, 0 ) で予め初期化しておく.  

  m を最前の加法定理処理後の指数, m' を現在の倍角公式処理後の指数として,
  
  行列 B( m, cos(mγ), sin(mγ)) を ( m+m', cos((m+m')γ), sin((m+m')γ)) で更新. 

  (b) a-1 または a-2 を ts ( s は最大値 ) まで繰り返す.

 (c) 加法定理処理の行列 B には

 B( m, cos(mγ), sin(mγ) ) が残る.

 (d) m の前後の余弦加法定理処理の実行.

 cos((m-1)γ), cos((m+1)γ)

を計算する. 

  (7) 二分法.

  この処理の目的は四半円分指数 M を検索することである.

 一般に既に

  sin( mγ ) > 0 

であることを前提として,

  cos(mγ) > 0 ならば ( cos(mγ), sin(mγ) ) は第一象限内にある.

  cos(mγ) < 0 ならば ( cos(mγ), sin(mγ) ) は第二象限内にある.

 cos((m-1)γ) > 0, cos(mγ) > 0, cos((m+1)γ) < 0

であったならば,

 m は求めようとしていた四半円分指数 M である.

  cos(maγ) > 0   かつ   cos(mbγ) < 0

  ならば,

 mc = ( ma + mb )/2 (分子が奇数のときは適当に丸める.)

  とすれば,

  cos(mcγ) > 0  または   cos(mcγ) < 0

  そこで,

  cos(mcγ) > 0 ならば  ma を mc で更新.

  cos(mcγ) < 0 ならば  mb を mc で更新.

  はじめに戻る.と,区間は半分に縮まる.

 二分法を10回繰り返すと区間は 1/1024 に縮まる.  

  (a) ma の初期値を 1.1107*Zn, mb の初期値を 1.111*Zn 付近であると予想する.

( 試しに cos(maγ), cos(mbγ) を計算.

 cos(maγ) > 0   かつ   cos(mbγ) < 0
 
ならば,

  mc = ( ma + mb )/2

として (b) に進む. 

 さもなければ,前回よりも少し外側の前後に ma, mb を修正.)

 初期以降は最前回の ma, mb から,

 mc = ( ma + mb )/2

とする.( 手動処理の場合は適当であると予想した中間を選んでも良い.)

  (b) 先に掲げた処理等を応用して

 cos((mc-1)γ), cos(mcγ), cos((mc+1)γ)

を計算. 

 (c-1) cos((mc-1)γ) > 0, cos(mcγ) > 0, cos((mc+1)γ) < 0

ならば,

 M = mc

として (8) 以降の処理に進む.

  (c-2) cos((mc-1)γ) > 0, cos(mcγ) < 0, cos((mc+1)γ) < 0

ならば,

 M = mc-1

として (8) 以降の処理に進む.

 (c-3) cos((mc-1)γ) > 0, cos(mcγ) > 0, cos((mc+1)γ) > 0

ならば,

  ma = mc+1

として (a) に戻る.

 (c-4) cos((mc-1)γ) < 0, cos(mcγ) < 0, cos((mc+1)γ) < 0

ならば,

  mb = mc-1

として (a) に戻る.

  (c-5) c-1, c-2, c-3, c-4 のどれでも無いならば,

 処理のどこかに矛盾がある.

 矛盾の原因を分析,処理を修正する.

 うわべの処理に矛盾がなくても, 計算精度が低すぎることが原因で矛盾が起こる場合も考えられる.

 特に sinγ, tanγ は,

 sinγ ≒ tanγ

となっているので,

 両者の値が異なり初めるまでの少数点以下の桁数が La,Pi の近似のおよその桁数が Lb ならば,

 処理中の計算の必要精度を Lc とすれば,

 Lc > La + Lb

でなければならないと考えられる.

 私は経験的に,

  Lc ≒ Lb × 2.5

としている.

 また BigDecimal では,割り算などを実行しない限り, 計算結果の精度の桁数を延々と蓄積して行くので,

 故意に 1 で割って,この機会を利用してスケール変更を要求し,Lc 桁より高い精度の計算を避ける.

 こうすると BigDecimal であっても,本例に関するかぎり,わずか数秒で (b) の一回あたりの処理を完了する. 

 (8) 近似の下限.

 LD = M*sinγ + cos(mγ) 
     
  この計算で末位は切り捨てる.切り上げは良くない.

  (9) 近似の上限.

  LU = M*tanγ + cos(mγ)/sin(mγ)

 この計算で末位は切り上げる.切り捨ては良くない.

  (10) 円周率の近似.

 Pi = LU + LD

  (11) 近似誤差

 Er = LU - LD

  (12) 近似別解.

  プログラムの処理で得られた四半円分指数 M から,

 Pi' = (2*P*M/Zn)*(Fn/Gn)

を参考値として計算する.

§3.5.1. 円周率 π の近似計算(1).P = 1, n = 1 の場合の電卓計算例.

  10桁表示の電卓で有理演算だけを使って円周率 π の近似を求めて見よう.

 ( f1, g1 ) = ( 1, 1 )
  g' = f + g = 1 + 1 = 2
  x = g'*g' - g*g = 2*2 - 1*1 = 3
  y = 2*g'*g = 2*2*1 = 4
  z = g'g' + g*g = 2*2 + 1*1 = 5
  m = 1.111*z = 1.111*5 = 5.555

  それで四半円分指数は約 5 付近であることが予想される.

  ( ここでは少なくとも二組の整数の三平方の定理が成立している.それらはそれぞれ,
 32 + 42 = 52, 72 + 242 = 252
となる.私は前者を表, 後者を裏と呼んでいる.
  なお, 後者の定理三つ組みは既に説明したように,
  x' = y2 - x2 = 42 - 32 = 7, y' = 2xy = 2×3×4 = 24, z' = z2 = 52 = 25
として求めることができる.私の方法による π の近似計算で主に利用するのは後者である.)
  さてこれらに基づいて必要な計算を以下で行う.   

  sinγ = (x+y)/(z*z) = (3+4)/(5*5) = 7/25 = 0.28
  cosγ = (z*z-1)/(z*z) = (5*5-1)/(5*5) = 24/25 = 0.96 
  tanγ = (x+y)/(z*z-1) = (3+4)/(5*5-1) = 7/24 = 0.2916666667  
 cos(2γ) = 2*cosγ*cosγ - 1 = 2*0.96*0.96 - 1 = 1.8432 - 1 = 0.8432
  sin(2γ) = 2*sinγ*cosγ = 2*0.28*0.96 = 0.5376
  cos(4γ) = 2*cos(2γ)*cos(2γ) - 1 = 2*0.8432*0.8432 - 1 = 1.42197248 - 1 = 0.42197248
  sin(4γ) = 2*sin(2γ)*cos(2γ) = 2*0.5376*0.8432 = 0.90660864
  cos(5γ) = cos(4γ)cosγ - sin(4γ)sinγ = 0.42197248*0.96 - 0.90660864*0.28 = 0.151243161
  sin(5γ) = sin(4γ)cosγ + cos(4γ)sinγ = 0.90660864*0.96 + 0.42197248*0.28 = 0.988496588
  cos(6γ) = cos(5γ)cosγ - sin(5γ)sinγ = 0.151243161*0.96 - 0.988596588*0.28 = -0.13161361

  ∴ cos(5γ) > 0, cos(6γ) < 0
  ∴ 四半円分指数 M = 5  (予想的中!!)

 近似下限 Ld = M*sinγ + cos(5γ) = 5*0.28 + 0.151243161 = 1.4 + 0.151243161 = 1.551243161
  近似上限 Lu = M*tanγ + cos(5γ)/sin(5γ) 
  = 5*0.2916666667 + 0.151243161/0.988496588 = 1.45833333 + 0.15300322 = 1.61133655
  近似円周率(仮) Pi = Ld + Lu = 1.551243161 + 1.61133655 = 3.162579711
 近似誤差(仮) Er = Lu - Ld = 1.61133655 - 1.551243161 = 0.060093389

  近似円周率別解 Pi' = (2*M/z)*(f/g) = ((2*5)/5)(1/1) = 2

 ∴ 近似円周率 π ≒ 3.16 ± 0.07

  双曲指数 n = 1 でありながら, かなり良い精度で求まっていると云えよう.  

§3.5.2. 円周率 π の近似計算(2).P = 1, n = 2 の場合の電卓計算例.

  10桁表示の電卓で有理演算だけを使って円周率 π の近似を求めて見よう.

   f2 + g2√2 = (1+√2)2 = 3 + 2√2

   ∴ ( f2, g2 ) = ( 3, 2 )

   g = 2, g' = f + g = 5
   x = g'*g' - g*g = 5*5-2*2 = 25 - 4 = 21
   y = 2*g'*g = 2*5*2 = 20
   z = g'*g' + g*g = 5*5 + 2*2 = 25 + 4 = 29

 ( ここでは表の三つ組みは 202 + 212 = 292 裏の三つ組みは 412 + 8402 = 8412 である.)

 予想四半円分指数 m = 1.111*z = 1.111*29 = 32.219 ( m = 32 と予想 )

  sinγ = (x+y)/(z*z) = (21+20)/(29*29) = 41/841 = 0.048751486
  cosγ = (z*z-1)/(z*z) = (29*29-1)/(29*29) = 840/841 = 0.998810939 
  tanγ = (x+y)/(z*z-1) = (21+20)/(29*29-1) = 41/840 = 0.048809523

 cos(2γ) = 2*cosγ*cosγ - 1 = 2*0.998810939*0.998810939-1 = 0.995246583
  sin(2γ) = 2*sinγ*cosγ = 2*0.048751486*0.998810939 = 0.097387035
  cos(4γ) = 2*cos(2γ)*cos(2γ)-1 = 2*0.995246583*0.995246583-1 = 0.981031524
  sin(4γ) = 2*sin(2γ)*cos(2γ) = 2*0.097387035*0.995246583 = 0.193848227
  cos(8γ) = 2*cos(4γ)*cos(4γ) - 1 = 2*0.981031524*0.981031524-1 = 0.924845702
  sin(8γ) = 2*sin(4γ)*cos(4γ) = 2*0.193848227*0.981031524 = 0.380342443
  cos(16γ) = 2*cos(8γ)*cos(8γ)-1 = 2*0.924845702*0.924845702-1 = 0.710679145
  sin(16γ) = 2*sin(8γ)*cos(8γ) = 2*0.380342443*0.924845702 = 0.703516147
  cos(32γ) = 2*cos(16γ)*cos(16γ)-1 = 2*0.710679145*0.710679145-1 = 0.010129694
  sin(32γ) = 2*sin(16γ)*cos(16γ) = 2*0.703516147*0.710679145 = 0.999948507

  cos(33γ) = cos(32γ)*cosγ-sin(32γ)sinγ = 0.010129694*0.998810939-0.999948507*0.048751486
  =-0.038631326

  cos(32γ) > 0, cos(33γ) < 0

  こうして四半円分指数 M = 32 が的中した.

 近似下限 Ld = M*sinγ + cos(32γ) = 32*0.048751486 + 0.010129694 = 1.560047552 + 0.010129694
= 1.570177246

 近似上限 Lu = M*tanγ + cos(32γ)/sin(32γ) = 32*0.048809523 + 0.010129694/0.999948507 
= 1.561904736 + 0.010130215 = 1.572034951 

  近似円周率(仮) Pi = Ld + Lu = 1.570177246 + 1.572034951 = 3.142212197
 近似誤差(仮) Er = Lu - Ld = 1.572034951 - 1.570177246 = 0.001857705
  近似円周率別解 Pi' = (2*M/z)*(f/g) = ((2*32)/29)(3/2) = 3.31

 ∴ 近似円周率 π ≒ 3.1422 ± 0.0019

  かなり良い近似で求まっている.

 この例の良いところは, 偶然 M = 32 = 25 に当たっていて倍角公式を5回繰り返すだけで, ほぼ M が求まる. 
 
  辺数において約 4M = 128 はアルキメデスの 96 を凌いでいる.

  しかも有理演算だけで良く,無理数の長い計算が不要である.

  それゆえ, 仮に表示窓が8桁程度であっても円周率 π が 3.14 付近にあることが簡単に確かめられる.

  結果的に簡便さや精度の意味でアルキメデスの方法に勝っていると云えよう.( 私の発見 !! )

  さらに,反復自乗冪単数法 ( 燕返し法 = 筆者命名 ) によって, 
  fk + gk√2 = ( 1 + √2 )2^k
と定義してこの ( fk, gk ) により Mk, γk から π を近似した場合,
  その近似の桁数を tk は経験的に,
 tk ≒ 3×2k-1 [桁]
となる.従ってこの反復からは近似の桁数 tk 自身が前回の二倍となるのである. 
 これの k = 10 までの概算を列挙すれば,
  ( Java-BigDecimal によるプログラムでの実行時間の一例も参考として掲げておく )
 k = 1 → f1 + g1√2 = ( 1 + √2 )2 → 近似の桁数 約 3 桁 → 約 1×3 秒
 k = 2 → f2 + g2√2 = ( 1 + √2 )4 → 近似の桁数 約 6 桁 → 約 1×3 秒
  k = 3 → f3 + g3√2 = ( 1 + √2 )8 → 近似の桁数 約 12 桁 → 約 1×3 秒
  k = 4 → f4 + g4√2 = ( 1 + √2 )16 → 近似の桁数 約 24 桁 → 約 1×3 秒
  k = 5 → f5 + g5√2 = ( 1 + √2 )32 → 近似の桁数 約 48 桁 → 約 1×3 秒
  k = 6 → f6 + g6√2 = ( 1 + √2 )64 → 近似の桁数 約 96 桁 → 約 1×3 秒
  k = 7 → f7 + g7√2 = ( 1 + √2 )128 → 近似の桁数 約 192 桁 → 約 1×3 秒
  k = 8 → f8 + g8√2 = ( 1 + √2 )256 → 近似の桁数 約 384 桁 → 約 4×3 秒
  k = 9 → f9 + g9√2 = ( 1 + √2 )512 → 近似の桁数 約 768 桁 → 約 25×3 秒
  k = 10 → f10 + g10√2 = ( 1 + √2 )1024 → 近似の桁数 約 1536 桁 → 約 190×3 秒
  これは最早アルキメデスの比ではない !!!!!!!

( k = 10, N=1024 の場合の反復自乗冪単数法の Java-BigDecimal プログラムによる実行例 ) 
P=1
N=1024
F=458428690947240922822566645595252166921730911625264970188568172074537671270953
54052418072639857700888691134361639497243771528176716782876457748796945284249594
87020038392080532214699977792378331950772728385042283130991560777781476694815928
99633555182948656598838967121365018560046135181125504905510456807418457335837652
05748593300762225277706242970719821414680060203467479543923750220952764417
G=324158036059266107179062099902159258891605764527205477244295855476514930407813
33832362975891811042370960101005436793459936444123023843707180863927766463725709
09873147914261593128119910604294527435441300629582502080345045120107193407587228
66368024472407510720960223706805134209255718151599546080731623248350096571215092
19599603167122882578517323407726312472428238351392267283960361495336307712
Xa=
50736355294495669381040021794251293477096334064133037883675924164796622715542850
76198536806432345680858835724334569207457654670989001795359514992887236076967600
39052685721648498969734201827217388965410187710200973018473336336591197661280788
82878697702047033002762648657970975698088197046529788163979794142342716218841637
07060413546688906204298328902370219208553298221324056316019863215353186103912312
05448556031299153144076082540389080885962449040772565377449193550406435595977322
35546478990056309160221641108215462216122490381850142938615340489676545053391979
40040720932928725919290837989469388925824124893805111541485948083676293882420434
41176019960365373809854403656222297317474510204932391128737847807629195938764784
4536951935104333064392356559612563193642416162853687666613917696
Ya=
50736355294495669381040021794251293477096334064133037883675924164796622715542850
76198536806432345680858835724334569207457654670989001795359514992887236076967600
39052685721648498969734201827217388965410187710200973018473336336591197661280788
82878697702047033002762648657970975698088197046529788163979794142342716218841637
07060413546688906204298328902370219208553298221324056316019863215353186103912312
05448556031299153144076082540389080885962449040772565377449193550406435595977322
35546478990056309160221641108215462216122490381850142938615340489676545053391979
40040720932928725919290837989469388925824124893805111541485948083676293882420434
41176019960365373809854403656222297317474510204932391128737847807629195938764784
4536951935104333064392356559612563193642416162853687666613917697
Za=
71752041762855762543554624336811203721094789861978412343916246892084726710554173
22205933078526400024326131529800285760097780144769229582557377571044579258283755
56416527862886339532364707819490054401683802428277200682279113979128665467076562
81829662126619872713057917688011911977507019212453906349439368430564797771560987
91577080988297153904449365749360292038867406806094385588378931557506181074586753
31315737156062007724264261214426475360465969269705097207057054580082834550773573
82431189511351390785850959274811426516823603411879076354033755780070217755713122
42051768569619325135507978631183734959560325595258617149446951579757042818713761
15164334209912508884637614022357231641226265717362503703605509954881669958849332
4018529757003995771652028993412565634844340105385291180915267585
予想M=(前回Pai/(2F/G))*Z=
79696480531554602782362136728858593442386222196676959529404043045363762273281441
69965355959618950474891131544972370854603444669868442761417593063940337593973701
44904274746573198746259249449308207667263011293254319858080901826988196385773152
54023301445027900736900394525777258453064439174394305717898233404704201818350983
64989377558085224567437679949808862831957401374685730346531549129797741306713781
09396334640872093114955362518879526427952160778501644392683610885338344706585111
31557100637635229334730032060695349228496507931679477445414319361807382388148466
25317699302486745076863915852287918971620151875792703519217232565535154899264951
16217383189174310290457581054893292800115388352923293082347507708086818482295268
0313179082230701070714472716430772961474143951337852504976522387
予想M=(前回Pai/(2*2G/F))*Z=
79696480531554602782362136728858593442386222196676959529404043045363762273281441
69965355959618950474891131544972370854603444669868442761417593063940337593973701
44904274746573198746259249449308207667263011293254319858080901826988196385773152
54023301445027900736900394525777258453064439174394305717898233404704201818350983
64989377558085224567437679949808862831957401374685730346531549129797741306713781
09396334640872093114955362518879526427952160778501644392683610885338344706585111
31557100637635229334730032060695349228496507931679477445414319361807382388148466
25317699302486745076863915852287918971620151875792703519217232565535154899264951
16217383189174310290457581054893292800115388352923293082347507708086818482295268
0313179082230701070714472716430772961474143951337852504976522391
Xb=
51483554971385974841717058282171491669260324216440720646659481430970334031985188
09280051511983324670250858539267116371641490204309381262187720221178610139781182
06453371955710511705959485550682575962641881526778080155025142341070888326873917
75257554756016809912258405472142027056834940237699472114324196362877461386832006
56398235697026144835272520475456149203894150277763372598592222656226942908878899
72656534648304454140715086603362144938842560901843266583575228000516054071878108
18671245848569243581693025223171220948566480666264504644204559462866791914742156
98711774238143864442467633655661726490367465200933698678240004561473615465671265
67442668206551043620545739147132505718529788557081398729355842538734239140548415
09487806572648528977514938595243845588517547133204286830043302188053386707858454
26388919598871170729464829410668668654772276748422734799158940069994259210349347
98828997620457007336783516814699701737771241941552354809700886606564184904094586
49356245172142370748655873747348571036306015340664543216619575848080756336046283
49793999769374952610251139919769464248638443619616863366118453666922035976204149
91937340066249646979670470321489508256040556325388528253077170981118628270599274
16830079431204931732934613105908658220038479156630736276329056572609768489568574
81477156538482477209350833320270273422259931482202092011226490109374512730117774
38463463107165737603370759986204837545509360887710293823801606479777505667489807
19184701248506252949562380036342546219745839114737732638258013936916851599247420
707766060570417939131735074306518515352151732224
Yb=
10147271058899133876208004358850258695419266812826607576735184832959324543108570
15239707361286469136171767144866913841491530934197800359071902998577447215393520
07810537144329699793946840365443477793082037542040194603694667267318239532256157
76575739540409406600552529731594195139617639409305957632795958828468543243768327
41412082709337781240859665780474043841710659644264811263203972643070637220782462
41089711206259830628815216508077816177192489808154513075489838710081287119195464
47109295798011261832044328221643092443224498076370028587723068097935309010678395
88008144186585745183858167597893877785164824978761022308297189616735258776484086
88235203992073074761970880731244459463494902040986478225747569561525839187752956
89073903870208666128784713119225126387284832325707375333227835393
Zb=
51483554971385974841717058282171491669260324216440720646659481430970334031985188
09280051511983324670250858539267116371641490204309381262187720221178610139781182
06453371955710511705959485550682575962641881526778080155025142341070888326873917
75257554756016809912258405472142027056834940237699472114324196362877461386832006
56398235697026144835272520475456149203894150277763372598592222656226942908878899
72656534648304454140715086603362144938842560901843266583575228000516054071878108
18671245848569243581693025223171220948566480666264504644204559462866791914742156
98711774238143864442467633655661726490367465200933698678240004561473615465671265
67442668206551043620545739147132505718529788557081398729355842538734239140548415
09487806572648528977514938595243845588517547133204286830043302188053386707858454
26388919598871170729464829410668668654772276748422734799158940069994259210349347
98828997620457007336783516814699701737771241941552354809700886606564184904094586
49356245172142370748655873747348571036306015340664543216619575848080756336046283
49793999769374952610251139919769464248638443619616863366118453666922035976204149
91937340066249646979670470321489508256040556325388528253077170981118628270599274
16830079431204931732934613105908658220038479156630736276329056572609768489568574
81477156538482477209350833320270273422259931482202092011226490109374512730117774
38463463107165737603370759986204837545509360887710293823801606479777505667489807
19184701248506252949562380036342546219745839114737732638258013936916851599247420
707766060570417939131735074306518515352151732225
前回 Pai=
3.141592653589793238462643383279502884197169399375105820974944592307816406286208
99862803482534211706798214808651328230664709384460955058223172535940812848111745
02841027019385211055596446229489549303819644288109756659334461284756482337867831
65271201909145648566923460348610454326648213393607260249141273724587006606315588
17488152092096282925409171536436789259036001133053054882046652138414695194151160
94330572703657595919530921861173819326117931051185480744623799627495673518857527
24891227938183011949129833673362440656643086021394946395224737190702179860943702
77053921717629317675238467481846766940513200056812714526356082778577134275778960
91736371787214684409012249534301465495853710507922796892589235420199561121290219
60864034418159813629774771309960518707211349999998372978049951059
現在四半円分指数 M=
79696480531554602782362136728858593442386222196676959529404043045363762273281441
69965355959618950474891131544972370854603444669868442761417593063940337593973701
44904274746573198746259249449308207667263011293254319858080901826988196385773152
54023301445027900736900394525777258453064439174394305717898233404704201818350983
64989377558085224567437679949808862831957401374685730346531549129797741306713781
09396334640872093114955362518879526427952160778501644392683610885338344706585111
31557100637635229334730032060695349228496507931679477445414319361807382388148466
25317699302486745076863915852287918971620151875792703519217232565535154899264951
16217383189174310290457581054893292800115388352923293082347507708086818482295268
0313179082230701070714472716430772961474143951337852504976522390
Cos((m-1)γ)=3.060944469E-784
Cos(mγ)    =1.089971201E-784
Cos((m+1)γ)=-8.81002067E-785
今回 Pai=
3.141592653589793238462643383279502884197169399375105820974944592307816406286208
99862803482534211706798214808651328230664709384460955058223172535940812848111745
02841027019385211055596446229489549303819644288109756659334461284756482337867831
65271201909145648566923460348610454326648213393607260249141273724587006606315588
17488152092096282925409171536436789259036001133053054882046652138414695194151160
94330572703657595919530921861173819326117931051185480744623799627495673518857527
24891227938183011949129833673362440656643086021394946395224737190702179860943702
77053921717629317675238467481846766940513200056812714526356082778577134275778960
91736371787214684409012249534301465495853710507922796892589235420199561121290219
60864034418159813629774771309960518707211349999998372978049951059731732816096318
59502445945534690830264252230825334468503526193118817101000313783875288658753320
83814206171776691473035982534904287554687311595628638823537875937519577818577805
32171226806613001927876611195909216420198938095257201065485863278865936153381827
96823030195203530185296899577362259941389124972177528347913151557485724245415069
59508295331168617278558890750983817546374649393192550604009277016711390098488240
12858361603563707660104710181942955596198946767837449448255379774726847104047534
64620804668425906949129331367702898915210475216205696602405803815019351125338243
00355876402474964732639141992726042699227967823547816360093417216412199245863150
30286182974555706749838505494588586926995690927210797509302955321165344987202755
9602364806654991198818347977535663698074265425278(727…)
Err=3.05(1064…)E-1568
(2M/Z)(F/G)=
3.141592653589793238462643383279502884197169399375105820974944592307816406286208
99862803482534211706798214808651328230664709384460955058223172535940812848111745
02841027019385211055596446229489549303819644288109756659334461284756482337867831
65271201909145648566923460348610454326648213393607260249141273724587006606315588
17488152092096282925409171536436789259036001133053054882046652138414695194151160
94330572703657595919530921861173819326117931051185480744623799627495673518857527
24891227938183011949129833673362440656643086021394946395224737190702179860943702
77053921717629317675238467481846766940513200056812714526356082778577134275778960
91736371787214684409012249534301465495853710507922796892589235420199561121290219
608640344181598136297747713099605187072113499999983729780499510(602…)
(2M/Z)(2G/F)=
3.141592653589793238462643383279502884197169399375105820974944592307816406286208
99862803482534211706798214808651328230664709384460955058223172535940812848111745
02841027019385211055596446229489549303819644288109756659334461284756482337867831
65271201909145648566923460348610454326648213393607260249141273724587006606315588
17488152092096282925409171536436789259036001133053054882046652138414695194151160
94330572703657595919530921861173819326117931051185480744623799627495673518857527
24891227938183011949129833673362440656643086021394946395224737190702179860943702
77053921717629317675238467481846766940513200056812714526356082778577134275778960
91736371787214684409012249534301465495853710507922796892589235420199561121290219
6086403441815981362977477130996051870721134999999837297804995105(876…)
開始時刻=Thu Apr 03 10:58:29 JST 2008
終了時刻=Thu Apr 03 11:01:38 JST 2008
所要時間=0:3:10

( 予想M=(前回Pai/(2F/G))*Z=...387, 予想M=(前回Pai/(2*2G/F))*Z=...391, 真のM=...390
 前回Pai/(2F/G))*Z < 真のM < 前回Pai/(2*2G/F))*Z
となりしかも大きい方でも小さい方でも近似される結果の今回Paiの桁数はほとんど変動しない.(?)
  ( ここで前回Paiとは n=2k-1=29=512 の場合に飛燕六三四で求めたPaiを指す.)
 従って処理全体の大部分を占めている冗長な Cos(mγ) の正負の符号検査を省略できることになり,
 そうなれば処理の時間は今回の3分10秒どころか僅か数秒で終わるはずである.
 そうするとこの方法は世界中のどの方法と比べてもかなり良い方法であることになる.
  ここから Cos(mγ) の正負の符号検査を省略した方法( 特急つばめ )でもう10回繰り返すと
 近似の桁数は約150万桁となる.しかしそれはもう全ての桁を表示するには大変な長さとなる.)

◇ Mh - M ≒ 4 であることの証明.

 四半円分指数を M とすれば双曲指数 n が極めて大きい場合においては
 M ≒ πz/(2√2)
となることは本稿の初め付近で既に述べた.
 ここで
 x - y = f2 - 2g2 = 1, f + g√2 = ( 1 + √2 )n ( n は偶数 )
  x = 2fg + f2, y = 2fg + 2g2, z = 2fg + f2 + 2g2,
  x2 + y2 = z2
を再掲しておく.
 さらに,
 f2 - 2g2 = 1  ⇒  f/(2g) > 1/√2 > g/f
であることから,M の予想の上側 Mh と下側 M を以下の様に定義する.
 Mh = (πz/2)(f/2g) ( > πz/(2√2) ),
  M = (πz/2)(g/f) ( < πz/(2√2) )
  そこで Mh と M の差を求めて見ると
 Mh - M = (πz/2)( (f/2g) - (g/f) ) = (πz/2)( ( f2 - 2g2 )/2fg )
  = (πz/2)/( x + y - z )   ( ∵ f2 - 2g2 = 1, 2fg = x + y - z )
 ところが n が極めて大きい場合においては,
 x ≒ y ≒ z/√2
でもあるので,
 Mh - M = (πz/2)/( x + y - z )	= π/( 2( 1/√2 + 1/√2 - 1 ) )
  = π/( 2( √2 - 1 ) ) ≒ 3.14159/( 2 × 0.4142 ) = 3.14159/0.8284 ≒ 3.79 ≒ 4
  ∴ Mh - M ≒ 4
  (証明終わり)
  実際には Mh - M = 3,4 となる.

◇ n が極めて大きい場合において四半円分指数 M の変化に対する誤差 E の変化の程度の評価.

 ( 本項は直前の項の前提を引き継ぐものとする.)
  双曲指数 n において例の方法で求められた近似円周率を Pai, 誤差を E とすれば,それぞれ,
 Pai = M( tanγ + sinγ ),
  E = M( tanγ - sinγ ),
  tanγ = ( x + y )/( z2 - 1 ),
  sinγ = ( x + y )/z2,
となる.
 ∴ E = M( ( x + y )/( z2 - 1 ) - ( x + y )/z2 )
  = M( x + y )/( z2( z2 - 1 )) ≒ √2 M/( z( z2 - 1 )) ≒ √2 M/z3  ( ∵ ( x + y )/z ≒ √2 )
  さらに km, kz を 1 の位から始まる適当な小数たち,tm, t を桁数を表す適当な自然数たちとして
 M = km × 10tm, z = kz × 10t
と表せる.さらに n が極めて大きい場合においては,
 M = (π/(2√2))z ≒ 1.11 × z
なので, 
  tm ≒ t
と考えて良い.
 ここから誤差 E のおよその大きさを評価すれば,
 E ≒ √2 M/z3 ≒ √2 × km × 10t × kz-3 × 10-3t
  = √2 × km × kz-3 × 10-2t
となり E は 約 2t 桁ぐらいの精度となっている.
 それで M の 1 の位が変化する程度では E の精度が著しく異なる程には影響しないと考えられる.
 それゆえ求める円周率の近似 Pai の末位の数桁付近を問題としない限りにおいて四半円分指数 M も
 M < M < Mh
を必ずしも満たす必要も無く,ただこの付近にあれば良いと考えられる.
 このような場合においては cos(mγ) の冗長な符号検査を省略しても近似には殆ど影響しないとも考えられるが?
 実際には cos(mγ) の符号検査を実行するついでに cos(mγ), cot(mγ) も求めておいて
 近似の下限と上限を補正することで精度の桁数が倍ほども異なっているというのも事実なのである.
  結局のところ cos(mγ), cot(mγ) で補正するかしないかで近似の精度は格段に違うという結果が出ている.
 即ち cos(mγ) を求めるのは符号検査というよりも近似を補正して精度を高めるためであると考えておくべきである.
 少しぐらい冗長になっても確実な近似を獲得することが優先事項であると考えるべきであった.
                                                                                       (2008'4'7)
§3.5.3. 円周率 π の近似計算(3).P = 1, n = 3 の場合のツールによる計算例.

  これより上は10桁程度の電卓では精度の意味で苦しくなるだけでなく, 能率も悪くなる.

 それで高級プログラム言語等で簡単なツールを作って置くのが良いと考えられる.

 極めて大まかなマクロで云えば.既に以前の節で述べたように,

 (1) M の下側予想値を maに, 上側予想値を mbに, 適当な中間を m に代入.

 (2) cos((m-1)γ), cos(mγ), cos((m+1)γ) の値を返させる.

 (3-1) cos((m-1)γ) > 0, cos(mγ) > 0, cos((m+1)γ) > 0   ⇒   m+1 を maに代入.(1) に戻る.

 (3-2) cos((m-1)γ) > 0, cos(mγ) > 0, cos((m+1)γ) < 0   ⇒   m を M に代入, 近似値の計算に進む.

 (3-3) cos((m-1)γ) > 0, cos(mγ) < 0, cos((m+1)γ) < 0   ⇒   m-1 を M に代入, 近似値の計算に進む.

  (3-4) cos((m-1)γ) < 0, cos(mγ) < 0, cos((m+1)γ) < 0   ⇒   m-1 を mbに代入.(1) に戻る.

 これらを全て自動計算しても良いが, 主に (2) の処理だけを実行するツールを作っておき,

  自分で一回づつ, ma と mb の区間を縮めて行きながら M を決定するのもまた楽しからずや.

 プログラムを組むのが大儀であれば, OS (Windows) 付属の電卓でも良いかも.32桁位の表示と思う.

 以降では, 首尾よく M が見つかったとして, 近似計算の結果だけを示すに止める.

プログラム実行結果(クリックで参考ファイルが開けます)

◇私は上記の方法で円周率を近似することを双曲座標裏直角三角形正弦正接挟撃法と呼びたい.

 一方, 補助的に計算した (2M/Z)(F/G) の方は双曲座標裏直角三角形波形率有理式と呼びたい.

(円周率 π を求める方法の私の発見した二つの裏テク !!! w 
  私はこれら一連の技を極技・飛燕六三四(きょくぎ・ひえんむさし)と呼ぶことにした. 
  極技で ultra-technique を意味し,
 飛燕でツバメが飛ぶ軌跡を双曲線と見立て,六で中心角を約六等分することを, 
  三で三平方の定理を,四で円周の四分の一の長さを近似することを意味した.別名, 巌流島.)

  経験的には, 偏倚 P = 1, 双曲指数 n, 四半円分指数 M の桁数を tm,

  正弦正接法の精度の桁数を t1, 波形率有理式の精度の桁数を t2 とすれば,

 1.5n ≒ t1, tm ≒ t1/2,  t2 ≒ t1/2,

  ∴ 3n ≒ 2t1 ≒ 4tm ≒ 4t2 

  云い換えると, 必要な近似の桁数 t1 から, n を逆算して, 上記の方法で円周率を近似すれば良い.


  Java の BigDecimal は我々が10進数の四則演算を筆算でやるのと同じ原理で正確な計算を実行する.

  しかも特に指定しない限り, 計算上の末尾の桁を落とさずに計算する.

  従って計算速度は若干遅くなるが精度は極めて高い.

  ( 私の例ではn=400で約15秒,n=500で約45秒,n=600で約75秒,n=750で約90秒程度である.)

 計算の桁数はスケールと呼ばれるパラメータを指定して調整できる.

 スケールの上限は32ビットとなっているから, 

  規約上は 2564 = 4294967296 ( 約42億9千万桁 )まで計算できる.

 円周率計算の世界レコードは数年前の話で約二千億桁ぐらいだそうで,

 それなりにすごいとは思うけれども, 意外に少ない気がしないでもないのである. 

 ( M が二千億桁求まれば, 円周率の近似は約四千億桁求まる?かも^^.)


 計算機によるシステムが従来の集中方式から,

 ( いわゆるサーバ・クライアント的な )分散方式に移行して行った理由の一つに

 クラス別に分けた各計算機の低価格高性能化が上げられる. 

 このために計算機を導入するあらゆる分野でダウンサイジング化が起こったと云われている.

 我々の身近にあるごく普通の超安PCも半世紀前の大型計算機に匹敵するような能力を持っているのかも知れない.

  一応, ここまでで求めた円周率 π の内の一例を以下に掲げておく.( P = 1, n = 750 の場合 )

π = 3.

1415926535 8979323846 2643383279 5028841971 6939937510 5820974944 5923078164 0628620899 (0080)
8628034825 3421170679 8214808651 3282306647 0938446095 5058223172 5359408128 4811174502 (0160)
8410270193 8521105559 6446229489 5493038196 4428810975 6659334461 2847564823 3786783165 (0240)
2712019091 4564856692 3460348610 4543266482 1339360726 0249141273 7245870066 0631558817 (0320)
4881520920 9628292540 9171536436 7892590360 0113305305 4882046652 1384146951 9415116094 (0400)

3305727036 5759591953 0921861173 8193261179 3105118548 0744623799 6274956735 1885752724 (0480)
8912279381 8301194912 9833673362 4406566430 8602139494 6395224737 1907021798 6094370277 (0560)
0539217176 2931767523 8467481846 7669405132 0005681271 4526356082 7785771342 7577896091 (0640)
7363717872 1468440901 2249534301 4654958537 1050792279 6892589235 4201995611 2129021960 (0720)
8640344181 5981362977 4771309960 5187072113 4999999837 2978049951 0597317328 1609631859 (0800)

5024459455 3469083026 4252230825 3344685035 2619311881 7101000313 7838752886 5875332083 (0880)
8142061717 7669147303 5982534904 2875546873 1159562863 8823537875 9375195778 1857780532 (0960)
1712268066 1300192787 6611195909 2164201989 3809525720 1065485863 2788659361 5338182796 (1040)
8230301952 0353018529 6899577362 2599413891 2497217752 8347913151 5574857242 4541506959 (1120)
5082953311 6861727855 8890751017 66±1.015×10-1148


  ここまで計算してきて, ふと思うことは, 

 円周率を長々と求めること自体はPCの性能テストというような意味を除けば, あまり意味が無いような気もする.

 ただ私の方法の場合, 四半円分指数 M を決定する一種のゲーム的面白さがあるとは云えるか、も.

 偏倚 P や 双曲指数 n を変えてやれば, 新しい場合を試せるし, 何度も遊べていいか、も.(^o^)

  ( 謂わば無限通りの方法で円周率が近似できるのである。)
                                                                                     (2007'06'23)

  [ 私の作った私の問題 ]

 円周率の近似を Pi としたとき, 有理整数 20, 21, 29 と有理演算を有限回だけ用いて,

 Pi ≒ 3.1422 ± 0.0019

であることを示せ.

 [ 解答 ]

  私目の考えた方法で解ける.

 本文参照. 

( 私目の数学頁の本分は, "自分の作った問題を自分の考えた方法で解く" ことにある.)

  円周率 π の近似の問題を整数論の問題であると考えているのは私だけであろうか?

  ”万物は整数である.”(ピタゴラス)

 ”数学は科学の女王であり, 整数論は数学の女王である.”(ガウス)

 ”初めに言葉があった, 言葉は神と共にあった, 言葉は神であった.”(新約聖書)

 ”初めに整数があった, 整数は言葉に成った.この整数は今, 世界中を駆け巡っている.”(筆者)

 ”初めにOSがあった, OSはPCと共にあった, OSはPCであった.”(筆者)

  ”初めに記号があった, 記号は数学と共にあった, 記号は数学であった.”(筆者)

                                                                                     (2007'06'25)

                     双曲直交円理の詠

             翩翻双曲 (双曲翻りて)

             究望永遠 (永遠を望み)             

             和合三陣   (三陣仲良く出会いて)

             巡回円周 (円周を巡る)
                                    (筆者)
                                                                                     (2007'06'29)

”人間とは一つの微分である。しかし人知のきわめうる微分は人間にとっては無限大なるものである”(寺田寅彦)

”この同じピタゴラスがまた楽音の協和(ハーモニー)と整数の比との関係の発見者であり、宇宙の調和の唱道者
であったことはよく知られているようであるが、この同じピタゴラスが豆のために命を失ったという話が
ディオゲネス・ライルチオスの『哲学者列伝』の中に伝えられている。”(寺田寅彦)

”科学というものは畢竟(ひっきょう)「わかりやすい言葉に書き直した直観」であり、
 直観は「人間に読めない国語でしるされた科学書の最後の結論」ではないか。”(寺田寅彦)

”時。エントロピー。プロバビリティ。この三つは三つ巴(どもえ)のようにつながった謎の三位一体である。
 この謎の解かれる未来は予期し難いが、これを解かんと努めるのもあながちむだな事ではあるまい”(寺田寅彦)

”頭の悪い人は、頭のいい人が考えて、はじめからだめにきまっているような試みを、一生懸命につづけている。
 やっと、それがだめとわかるころには、しかしたいてい何かしらだめでない他のものの糸口を取り上げている。
 そうしてそれは、そのはじめからだめな試みをあえてしなかった人には決して手に触れる機会のないような
 糸口である場合も少なくない。自然は書卓の前で手をつかねて空中に絵を描いている人からは逃げ出して、
 自然のまん中へ赤裸で飛び込んで来る人にのみその神秘の扉(とびら)を開いて見せるからである。
 頭のいい人には恋ができない。恋は盲目である。科学者になるには自然を恋人としなければならない。
 自然はやはりその恋人にのみ真心を打ち明けるものである。”(寺田寅彦)

”文学の内容は「言葉」である。言葉でつづられた人間の思惟(しい)の記録でありまた予言である。
 言葉をなくすれば思惟がなくなると同時にあらゆる文学は消滅する。
 逆に、言葉で現わされたすべてのものがそれ自身に文学であるとは限らないまでも、
 そういうもので文学の中に資料として取り入れられ得ないものは一つもない。
 子供の片言でも、商品の広告文でも、法律の条文でも、幾何学の定理の証明でもそうである。
 ピタゴラスの定理の証明の出て来る小説もあるのである。
 ここで言葉というのは文字どおりの意味での言葉である。
 絵画彫刻でも音楽舞踊でも皆それぞれの「言葉」をもってつづられた文学の一種だとも言われるが、
 しかし、ここではそういうものは考えないことにする。
 作者の頭の中にある腹案のようなものは、いかに詳細に組み立てられたつもりでも、それは文学ではない。
 またそれを口で話して一定の聴衆が聞くだけでもそれは文学ではない。
 象形文字であろうが、速記記号であろうが、ともかくも読める記号文字で、粘土板でもパピラスでも
 「記録」されたものでなければおそらくそれを文学とは名づけることができないであろう。
 つまり文学というものも一つの「実証的な存在」である。
 甲某が死ぬ前に考えていた小説は非常な傑作であった、と言ってもそれは全く無意味である。”(寺田寅彦)
                                                                                     (2007'07'02)

                           白野弁十郎

    ちりひとつ、しみひとつつけず、持ってゆくのだ

         その宝とは、ほかでもない

               ・・・・・・

             わしの兜のたちがしらだ !

            (新国劇=島田正吾)

  醜い鼻で不細工な白野は親友の栗栖の為に千草への恋文を代筆してやる。
 やがて戦がもとで頭に傷を負った白野が千草のいる尼寺まで赴いて,
 例の恋文の真の創作者は自分であると告白しようとする。
 初めの引用はその終幕の台詞である。
 本来は”わしの兜の龍頭(たつがしら)!”が正しかったのかも知れない。
 しかし島田正吾はなぜか ”立ち頭”と読んでいたように感じた。
 能や狂言で一般大衆(その他大勢)のことを”立ち衆”と云うそうで, 
  ”立ち頭”とは, その先頭にいる人(役者)のことである。
 ”先頭”を”言い出し兵衛”の意味だと解釈すれば,さらにそれを”張本人”的な意味だと捕らえれば,
 ”自分が例の恋文の真の書き手でしかも本当は私は来栖以上に貴女を慕っていたのだ。
 自分は死んでしまうが、あれを書いたのは実は自分だという誇りや真実までは誰にも奪えないのだ。”
という意味に取れた.
 島田正吾の訥弁が故人となってしまったこの名優を証明しているように思えた。 
 緒方拳が島田正吾のお弟子だという意味も同時に呑み込めた。(筆者)
                                                                                     (2007'07'03)

「孔子の教えではここにこういう天井がある。それで麓の亀もよちよち登って行けばいつかは鶴と同じ高さまで登れる。
  しかしこの天井を取払うと鶴はたちまち冲天(ちゅうてん)に舞上がる。すると亀はもうとても追付く望みはない
とばかりやけくそになって、呑めや唄えで下界のどん底に止まる。その天井を取払ったのが老子の教えである」
というのである。何のことだかちっとも分からない。しかし、この分からない話を聞いたとき、何となく孔子の教えより
は老子の教えの方が段ちがいに上等で本当のものではないかという疑いを起したのは事実であった。(寺田寅彦)

  宇宙の秘密が知りたくなった、と思うと、いつのまにか自分の手は一塊の土くれをつかんでいた。
  そうして、ふたつの眼がじいっとそれを見つめていた。
 すると、土くれの分子の中から星雲が生まれ、その中から星と太陽とが生まれ、アミーバと三葉虫(さんようちゅう)
とアダムとイヴとが生まれ、それからこの自分が生まれて来るのをまざまざと見た。
 ……そうして自分は科学者になった。
 しばらくすると、今度は、なんだか急に唄いたくなって来た。
 と思うと、知らぬ間に自分の咽喉(のど)から、ひとりでに大きな声が出て来た。
 その声が自分の耳にはいったと思うと、すぐに、自然に次の声が出て来た。
 声が声を呼び、句が句を誘うた。
 そうして、行く雲は軒ばに止まり、山と水とは音をひそめた。
 ……そうして自分は詩人になった。(寺田寅彦)


 根津権現(ねづごんげん)の境内のある旗亭(きてい)で大学生が数人会していた。
 夜がふけて、あたりが静かになったころに、どこかでふくろうの鳴くのが聞こえた。
「ふくろうが鳴くね」
と一人が言った。
 するともう一人が
「なに、ありゃあふくろうじゃない、すっぽんだろう」
と言った。
 彼の顔のどこにも戯れの影は見えなかった。
 しばらく顔を見合わせていた仲間の一人が
「だって、君、すっぽんが鳴くのかい」
と聞くと
「でもなんだか鳴きそうな顔をしているじゃないか」
と答えた。
 皆が声を放って笑ったが、その男だけは笑わなかった。
 彼はそう信じているのであった。
 その席に居合わせた学生の一人から、この話を聞かされた時には、自分も大いに笑ったのではあったが、
  あとでまたよくよく考えてみると、どうもその時にはやはりすっぽんが鳴いたのだろうと思われる。
 ……過去と未来を通じて、すっぽんがふくろうのように鳴くことはないという事が科学的に立証されたとしても、
  少なくも、その日のその晩の根津権現境内では、たしかにすっぽんが鳴いたのである。(寺田寅彦)

 NHK のみんなの歌で、”このはずく”が鳴くのか”ぶっぽうそう”が鳴くのかというような歌をやっているが、 
  ひょっとすれば、真犯人は、”すっぽん”なのかも知れない^^(筆者)

  光のエーテル仮説はマイケルソン・モーリーの実験によって否定されたけれども、ニュートリノやダーク・マター
などというのは、この分野の”すっぽん”的存在なのかも知れない。(筆者)


 虱(しらみ)をはわせると北へ向く、ということが言い伝えられている。
 まだ実験したことはない。
 もし、多くの場合にこれが事実であるとすれば、それはこの動物の背光性によって説明されるであろう。
 多くの人間の住所(すまい)では一般に南側が明るく、北側が暗いからである。
 この説明が仮に正しいとしても、この事実の不思議さは少しも減りはしない。
 不思議さが少しばかり根元へ喰い込むだけである。
 すべての科学的説明というものについても同じことが言われるとすれば、……
 未来の宗教や芸術はやはり科学の神殿の中に安置されなければならないような気がする。(寺田寅彦)

 切符をもらったので、久しぶりに上野音楽学校の演奏会を聞きに行った。
 あそこの聴衆席にすわって音楽を聞いていると、
  いつでも学生時代の夢を思い出すと同時にまた夏目先生を想い出すのである。
 オーケストラの太鼓を打つ人は、どうも見たところあまり勤めばえのする派手な役割とは思われない。
 何事にも光栄の冠を望む若い人にやらせるには、少し気の毒なような役である。
 しかし、あれは実際はやはり非常にだいじな役目であるに相違ない。
 そう思うと太鼓の人に対するある好感をいだかせられる。
 ロシニのスタバト・マーテルを聞きながら、こんなことも考えた。
 ほんとうのキリスト教はもうとうの昔に亡(ほろ)びてしまって、ただ幽(かす)かな余響のようなものが、
  わずかに、こういう音楽の中に生き残っているのではないか。(寺田寅彦)

  私はハードディスク内のデータを作ったり廃棄したりできる。が、私自身はハードディスク内に存在してはいない。
 同じように、人間の側からは神に干渉できないが、神の側からは人間に干渉できるというような形で神が存在する
ということはあり得る。(筆者)

  生命誕生の原因はもはや科学で解明できる。しかし生命誕生の理由はむしろ神秘である。(筆者)

                                                                                     (2007'07'04)
  天井に 扇風機の影映って 大きく動く (筆者)

                                                                                     (2007'07'05)

 古典的物理学の自然観はすべての現象を広義における物質とその運動との二つの観念によって表現するものである。
 しかし、物質をはなれて運動はなく、運動を離れて物質は存在しないのである。自分の近ごろ学んだ芭蕉(ばしょう)
のいわゆる「不易流行」の説には、おのずからこれに相通ずるものがある。(寺田寅彦)


               三毛の墓

         三毛(みけ)のお墓に花が散る
           こんこんこごめの花が散る
             小窓に鳥影小鳥影
           「小鳥の夢でも見ているか」

           三毛のお墓に雪がふる
           こんこん小窓に雪がふる
  炬燵蒲団(こたつぶとん)の紅(くれない)も
          「三毛がいないでさびしいな」             (寺田寅彦)
                                                                                     
                          
                     天国と地獄

 自分のような中途半端な者は地獄にでも落ちる他はない。
    そう覚悟を決めて潔く地獄に落ちることにした。
     するとそこは「地獄に最も近い島」であった。
          そして、それは、
   「天国に最も近い島」の隣にあった。      (筆者)
                                                                                     (2007'07'06)
  円周率 行けども行けども 誤差残る     (筆者)

              固体と液体

 整数と有理数は固体のようなものなので、
 容器が無くても手渡しでお売りできます。                                              
         一方、
   無理数は液体のようなものなので、
 誤差という容器がないとお売りできません。
              ‐店主敬白‐          (筆者)
                                                                                     (2007'07'08)
  猫の尻尾(しっぽ)は猫の感情の動きに応じてさまざまの位置形状運動を示す。
  よく観察していると、どういう場合にどんな恰好をするかということはいくらかわかって来る。
  しかし、尻尾のないわれわれ人間には猫の「尻尾の気持ち」を想像することは困難である。
  舌で舐めたり後脚(あとあし)で掻いたりする気持ちはおおよそ想像してみることができても
  尻尾の振りごこちや曲げごこちは夢想することもできない。
  従ってわれわれは猫の尻尾の行動について「批評」する資格を持ち合わせない。
 科学の研究に体験をもたない言わばただの「科学学者」の科学論には
  往々人間の書いた「猫の尻尾論」のようなのがあるのも誠にやむを得ない次第であろう。(寺田寅彦)
                                                                                     (2007'07'11)

  矢ケ部 巌先生の「ガロアの理論」には、広田先生、佐々木与次郎、小川君が登場するが、あれはきっと、
 夏目漱石の「三四郎」の広田先生、佐々木与次郎、小川三四郎がモデルであるに違いない。
 漱石の「三四郎」の話を数学の話と結びつけれるのは私を除けばそうザラにはいまい^o^
 また「三四郎」の野々宮さんはきっと寺田寅彦がモデルに違いない。
  そして、エンディング・シークレットは「ストレイ・シープ、ストレイ・シープ」(筆者)
                                                                                     (2007'07'12)

  艱難は忍耐を生じ、忍耐は練達を生じ、練達は希望を生ず。希望は恥を来らせじ。((文語体)新約聖書)

                    水泳

  音も無く 水上に我が身を そろりと浮かべる
 自信あり 終日浮きて いずくまでも泳ぐ
  省エネのコツ クロールと背泳を 交互に泳ぐ
  いかにゆとりを持って泳げるか 過去の自分と勝負する

 海がめの 団扇のような腕と足で 水を大きく巻き取るように扇ぐ
 陸上では大木の根が安定 水中では軽い卵が安定
 陸上か水中か ガリレイかベルヌーイか ベクトルか連続か 踏ん張りか脱力か
  
 スイミングプールで 適度に疲労した後 
 涼しい風と茜色の西日を身体一杯に浴て 自転車を漕ぎながら 我が家に帰る
 生き物として 生きていて良かったと つくづく思う   (筆者)
 
                                                                                     (2007'07'15)

  宗教は往々人を酩酊させ官能と理性を麻痺させる点で酒に似ている。
  そうして、コーヒーの効果は官能を鋭敏にし洞察と認識を透明にする点でいくらか哲学に似ているとも考えられる。
  酒や宗教で人を殺すものは多いがコーヒーや哲学に酔うて犯罪をあえてするものはまれである。
  前者は信仰的主観的であるが、後者は懐疑的客観的だからかもしれない。
 芸術という料理の美味も時に人を酔わす、その酔わせる成分には前記の酒もあり、
ニコチン、アトロピン、コカイン、モルフィンいろいろのものがあるようである。
  この成分によって芸術の分類ができるかもしれない。
  コカイン芸術やモルフィン文学があまりに多きを悲しむ次第である。(寺田寅彦)

                 マウスのお手入れ

 この間からマウス・カーソルが思った位置に行き辛くなってきていた。
 そして、とうとう今日は左右に移動することすら全くできなくなってしまった。(TOT)
 しかたがないので、マウスを分解掃除してみることに。

 キーボードだけの操作でPCの電源をOFFにした。
 マウスの裏側のビスを時計用の精密ドライバーで丁寧に揉むように外した。
 コードとプリント基板の収まり具合を良く観察してからマウス本体を静かに上下に切り離した。
 
 マウスの微妙な運動の検知はシャフトを中心に回転する水平と垂直にある二組の小さな円盤でやっているようだ。
 それぞれの円盤には自転車のスポークのような放射状のスリットが切ってあって、
 どうやら動作不良の原因は、このスリットの目詰まりによるらしいと思えた。
 そこで、この隙間の埃とシャフトやローラーに絡まっている糸状のゴミをブラシで入念に取り除くように努めた。
  扇風機を軽く掛けて、化粧用のミニブラシで埃を払い飛ばしていく。

 基盤とコードを元通りの正しい位置に収めて後、ビスをゆっくり揉み込んだ。
 コントロール・パネルからマウスの感度を調整してPCを再起動したところ、、、

              ・・・・・・・・・

 マウスは以前とは比べものにならない程、元気に素早く思った所に直行してマ~ス。<:⊃~ =3 =3 =3 (筆者)
                                                                                     (2007'07'31)
          寿限無と円周率

 円周率を寿限無にしても落語にならない。

 なぜなら、

  ・・・・・・・・・

 落ちがないから。(筆者)
                                                                                     (2007'08'05)
           広島そしてルシファー

 神や悪魔はある意味で人間自身の写像であると思う。
 神や悪魔は人の中に、あるいは人の造り出したものの中に必ず潜むのである。
 原子力もまた人が造り出し得るものであり、それゆえ、神性と魔性を併せ持つ。
 広島や長崎の原爆投下の悲劇について、また一般に戦争というものについて想う事は、
 常に無力な関係のない人たちが表面上の加害者であり被害者であるということだ。
 私は原爆を投下したアメリカの兵隊さん達を恨む気がしない。
 彼らもまた、自己の信念と命令に従ってやったまでである。
 そして原爆は、
 アメリカ国民にとっては泥沼の戦争を終わらせる救いの神となり、
 日本国民にとっては悪魔の使いとなったのである。
 私は、
 原爆投下が日本軍によるものではなかったことをむしろ喜びたい。
 同じ不幸を相手に与えたよりは、幸いであったと思う。  
 
 聖書において、悪魔も、もとはルシファーといって天使の長であった。
 
  我々の現実において、悪魔とは人間の最も高等な部分に潜む闇である。(筆者)
                                                                                     (2007'08'07)

            金魚鉢
  
 目ぇ一杯 振袖金魚 ズームイン


      風鈴

  チリ チリリン ゆらめく夏を クールダン


            花火

  シュルシュル ドンッ 音より速く 町ひかる
                                              (筆者)                                 (2007'08'08)
  
 解決までに長時間を要すると思える問題を数分で解ける人がいたとしたら、すごい人だと思う。
 でも、
 その解けなかった問題を一生かかってでも解いてやろうとしている人がいたら、この人が最も有望である。
 なぜなら、
 真の大問題には制限時間なんてないのだから。(筆者)                                   
  
  開かぬ缶詰め何にするかと嘲けられても、ただ眺めておる、万一開いたら食ろうてしまう了見である。(高木貞二)
                                                                                     (2007'08'11)

            蝉

 這い出でて たった一夏 鳴きまくり   (筆者) 


 [ 今考えていること + 次回予告 ]

 例えば,

  x,y,u,v を実数, z,w を複素数, f(z) を z で微分可能な関数として次のように定める.

  z = x + iy, 

 w = f(z) = u(x,y) + iv(x,y)

 さらに, α を正の実定数, β を実定数として 

  等高線 C1(u,v) → √(u2 + v2) = α

  等傾線 C2(u,v) →  v = βu  

とすれば, C1(u,v) と C2(u,v) は u-v 平面上では直交している.

 ( ∵ u-v 平面で C1(u,v) は原点を中心とする半径 α の円で, C2(u,v) は原点を通る一次直線であるから.)

 ( 具体的には,

  w = f(z) = z2 - 1

  u + iv = ( x + iy )2 - 1 =  x2 + i2xy - y2 - 1

  ∴ u = x2 - y2 - 1, v = 2xy

などを考えている.)

 ここで, さらに

 C1(u,v) = C1(x,y)

  C2(u,v) = C2(x,y)

となると考えれば,

 C1(x,y) と C2(x,y) は x-y 平面上でも直交していると云えるだろうか?

 これは自明のことのように考えられるが、いざ証明するとなるとかなり難問であると思われた.

  これは (複素)解析関数では以下に述べるような等角写像が成立するからというのがその理由である.

 少し分かり難くなるかも知れないが解析関数の重要な特徴でもあるので以下に粗い証明を与えておこう.

 z 平面上で適当に選ばれた滑らかな曲線を C(x,y) とする.

  w = f(z)
 
による C(x,y) の写像を C(u,v) とする. 

 C(x,y) 上で点 z0, z1 を取り, ⊿t を微小な実数として, 

  z(t0) = z0, 

  z(t0 + ⊿t) = z1,
 
  w0 = f(z0) = f(z(t0)) = w(t0),  

  w1 = f(z1) = f(z(t1)) = w(t1), 
 
であるように取るとする. ここでさらに,   

  dz/dt(t0) = ℓim(⊿t → 0) ( z1 - z0 )/⊿t = ℓim(⊿t → 0) ( z(t0+⊿t) - z(t0))/⊿t 

を考えれば, dz/dt(t0) は C(x,y) の z0 における接線となる.同様に,

 dw/dt(t0) = ℓim(⊿t → 0) ( w1 - w0 )/⊿t = ℓim(⊿t → 0) ( w(t0+⊿t) - w(t0))/⊿t 

を考えれば, dw/dt(t0) は C(u,v) の w0 における接線となる.

  微分の性質から,

 dw/dt = (df/dz)(dz/dt)

  ∴ (dw/dt)(t0) = f'(z0)(dz/dt)(t0)

  二数の複素数の積において偏角は和となるから,

 arg (dw/dt)(t0) = arg f'(z0) + arg (dz/dt)(t0)  ( f'(z0) ≠ 0 )

  ここで arg (dz/dt)(t0) は C(x,y) の z0 における接線と x の正の向きとの間の偏角を表す.

 arg f'(z0) は定数であり, z0 を通る滑らかな曲線であれば C の取り方によらない.

  arg (dw/dt)(t0) は C(u,v) の w0 における接線の偏角を表し, 

  arg (dw/dt)(t0) -  arg (dz/dt)(t0) = arg f'(z0) = Const.

となる. これを, 

 arg C(x,y) = arg (dz/dt)(t0), arg C(u,v) = arg (dw/dt)(t0)  

と書いて良いとする.然らば,

 arg C(u,v) -  arg C(x,y) = arg f'(z0) = Const.
  
  このような写像 w = f(z) を等角写像と呼び, 一般に解析関数では f'(z) = 0 を除く全ての点で成り立つ.

  これらを C1(x,y), C1(u,v), C2(x,y), C2(u,v) に応用すれば,
 
  arg C1(u,v) -  arg C1(x,y) = arg C2(u,v) -  arg C2(x,y) 

  ∴ arg C1(u,v) -  arg C2(u,v) = arg C1(x,y) -  arg C2(x,y) 
 
  ところが既に,

 arg C1(u,v) - arg C2(u,v) = π/2

 ∴ arg C1(x,y) - arg C2(x,y) = π/2

  (証明終わり)

 このことから, 

 [解析関数の等高線と等傾線の直交定理]

 いかなる解析関数 w = f(z) も f'(z) = 0 であるような点と, f(z) = 0 であるような点を除けば,

 その等高線と等傾線は z 平面と w 平面のどちら側であっても常に直交する.//

と言える.
                                                                    (筆者)
                                                                                     (2007'08'29)
  解析関数にはコーシー・リーマンの微分方程式という公式が成立する.

  この公式こそが解析関数で最も重要な基本公式である.

 f'(z) = ℓim(⊿z→0)((f(z+⊿z)-f(z))/⊿z) 

 = ℓim((⊿x+i⊿y)→0)(((f((x+⊿x)+i(y+⊿y))-f(x+iy))/(⊿x+i⊿y))

 = ℓim((⊿x+i⊿y)→0)(((u(x+⊿x,y+⊿y)+iv(x+⊿x,y+⊿y))-(u(x,y)+iv(x,y))/(⊿x+i⊿y))

  この微分を第一番目の経路では ⊿y→0,⊿x→0 の順に縮めて微分したと考え, 

  第二番目の経路では⊿x→0,⊿y→0 の順に縮めて微分したと考える. 

 しかもどちらであっても微分の結果が変わらないと仮定する.

 ( いわば微小領域内では微分の経路の取り方とは無関係に微分が定まると仮定することだと考えられる.)

 [第一番目の経路による微分]

  ℓim(⊿y→0)(((u(x+⊿x,y+⊿y)+iv(x+⊿x,y+⊿y))-(u(x,y)+iv(x,y))/(⊿x+i⊿y))

  = ℓim(⊿x→0)(((u(x+⊿x,y)+iv(x+⊿x,y))-(u(x,y)+iv(x,y))/(⊿x))

  = ℓim(⊿x→0)((u(x+⊿x,y)-u(x,y))/⊿x) + iℓim(⊿x→0)((v(x+⊿x,y)-v(x,y))/⊿x)

  = ∂u/∂x + i∂v/∂x ( この式で記号の定義を兼ねるものとする.)

  [第二番目の経路による微分]

  ℓim(⊿x→0)(((u(x+⊿x,y+⊿y)+iv(x+⊿x,y+⊿y))-(u(x,y)+iv(x,y))/(⊿x+i⊿y))

  = ℓim(⊿y→0)(((u(x,y+⊿y)+iv(x,y+⊿y))-(u(x,y)+iv(x,y))/(i⊿y))

  = ℓim(⊿y→0)((u(x,y+⊿y)-u(x,y))/i⊿y) + iℓim(⊿y→0)((v(x,y+⊿y)-v(x,y))/i⊿y)

  = -i∂u/∂y + ∂v/∂y ( この式で記号の定義を兼ねるものとする.)

  ここで x, y, ⊿x, ⊿y は実数であったので ∂u/∂x, ∂v/∂y, ∂v/∂x, -∂u/∂y も実数となる.

  第一番目と第二番目の両方の微分の結果が一致するためには実部と虚部が一致しなければならないから,
 
 ∂u/∂x = ∂v/∂y, ∂v/∂x = -∂u/∂y

でなければならない.

 この公式をコーシー・リーマンの微分方程式という.

 ( ここから以下は少しこじ付けっぽくなるので, そのつもりで御覧頂きたい.悪しからず.) 

  ここで コーシー・リーマンの微分方程式が以下の条件の下でも拡張的に成立すると仮定する.

  今まで ⊿x,⊿y,⊿u,⊿v を実数としていたが, 以降は同じ記号で向きと絶対値を持ったベクトルであるとする.

  例えば ⊿u には |⊿u| と arg ⊿u があり

  ⊿u = |⊿u|(cos(arg⊿u) + i sin(arg⊿u))

と考える.
 
 f(z0) = w0

であったとして,

 f'(z0) を考える.

 z 平面上で z0 を出発点として ⊿x と ⊿y が直角に置かれていると考える.同様に,

  w 平面上で w0 を出発点として ⊿u と ⊿v が直角に置かれていると考える.

  そこで, 方向だけの議論に限れば, z0 と w0 を重ね合わせても良いと考える.

 ここで話を分かり易くするために例えば, 

  y の正の向きを時計の12時の向きに, x の正の向きを時計の3時の向きに

 v の正の向きを時計の1時の向きに, u の正の向きを時計の4時の向きに取ってあったとする.

 ( これは別に v の正の向きが2時の向きで, u の正の向きが5時の向きとかの他の組み合わせでも良い,

 x の正の向きと y の正の向き, v の正の向きと u の正の向きが各々90度の角度だけ開いていれば良い.)
  
  そこで, x の正の向き(3時)を u の正の向き(4時)に重ね合わせることを考える.

 すると, x, y 側の針を一斉に一時間分だけ進ませれば良いことになる.

 このとき y の正の向き(12時)は v の正の向き(1時)に重なる.

 そこで コーシー・リーマンの前半の公式で, ∂u/∂x = ∂v/∂y を角度の意味的に

 arg ⊿u - arg ⊿x = arg ⊿v - arg ⊿y = θ

と書けば θ は +1時間を意味している. 

 今度は, x の正の向き(3時)を v の正の向き(1時)に重ね合わせることを考える.

 すると, x, y 側の針を一斉に2時間分だけ遅らせれば良いことになる.

 このとき y の正の向き(12時)は u の負の向き(10時)に重なる.

 そこでコーシー・リーマンの後半の公式で, ∂v/∂x = -∂u/∂y を角度の意味的に

 arg ⊿v - arg ⊿x = arg (-⊿u) - arg ⊿y = θ'

と書けば θ' は -2時間を意味している.

  ( 実際 ⊿x, ⊿y, ⊿u, ⊿v を微小ベクトルと考え, 偏微分の意味をこれらの微小ベクトル間の割り算である

と見なせば, 割り算の商のベクトルの偏角は分子と分母の偏角の差となると考えられる.)

 そして, これがコーシー・リーマンの後半の式で-(マイナス)が付いている, 謎のマイナスの説明である. 

 このことは z0 の微小な周辺でも w0 の微小な周辺でも写像 f や逆写像 f-1 において

  角度は全方向に等方的( isotoropic )に曲がって写像されることを意味するものと考えられる.

 私は,

  arg ⊿u - arg ⊿x = arg ⊿v - arg ⊿y = θ 

  arg ⊿v - arg ⊿x = arg (-⊿u) - arg ⊿y = θ'

  θ - θ' = π/2  

を角度に関する コーシー・リーマン の差分方程式とでも呼べばいいと思う.

  それでは, この角度のコーシー・リーマンの公式から等角写像を説明して見よう.

 f(z0) = w0

として, z0 を中心として微小な正の実数を ⊿r, 向きを φ ( 0 ≦ φ ≦ 2π ) として

 f( ⊿rcosφ + i⊿rsinφ ) = ⊿r*cosφ* + i⊿r*sinφ*

となったとする.

 このとき, 角度に関するコーシー・リーマンの公式

 arg ⊿u - arg ⊿x = arg ⊿v - arg ⊿y = θ

から, z0 を含む微小領域内では

 φ* = φ + θ

となると考える.

 この関係は z0 を通る滑らかな曲線 C の接線の方向においても成り立つと考えて良い. 

 さて z0 を通る二組の滑らかな曲線 C1, C2 があり, 交点での各々の接線が,

  arg C1 = φ1, arg C2 = φ2,  
 
で与えられた角度であったとする.

  このとき C1 と C2 の交角は,

 arg C1 - arg C2 = φ1 - φ2 

  さらに,

 f(C1) = C1*, f(C2) = C2*

  f(φ1) = φ1*, f(φ2) = φ2*

とすれば, 角度の コーシー・リーマン から

 arg C1* = φ1* = φ1 + θ

  arg C2* = φ2* = φ2 + θ

 ∴ arg C1* - arg C2* = arg C1 - arg C2 

  = φ1 - φ2 

  すなわち, 等角写像が成立している.

  コーシー・リーマンの微分方程式

  ∂u/∂x = ∂v/∂y, ∂v/∂x = -∂u/∂y

で ⊿x,⊿y,⊿u,⊿v をベクトルだと考えるのは明かに無理があるが,

  しかしながら, 等角写像の同値な言い換えとして,

 arg ⊿u - arg ⊿x = arg ⊿v - arg ⊿y = θ
  
  arg ⊿v - arg ⊿x = arg (-⊿u) - arg ⊿y = θ'
  
  θ' - θ = π/2 

という式を考えることには無理が無いようである.

  記号を形式的に 

  ±∂x ⇔ arg ±⊿x,  ±∂y ⇔ arg ±⊿y, 

 ±∂u ⇔ arg ±⊿u,  ±∂v ⇔ arg ±⊿v

  / ⇔ -

で互いに置き替えることで, コーシー・リーマンの微分方程式と等角写像の公式を入れ替えることができる.

  そうすると コーシー・リーマンの微分方程式も等角写像の公式も形式的には同型であって,

 前者は乗法除法的で後者は加法減法的であると言えなくないと考えられる. 

 そして, この両者は解析関数の最も重要な特徴であると考えられる.

(筆者)


  n 次の多項式解析関数 f(z) の零点は |f(z)| の非正則点であり, この逆も成り立つ.

  簡単に言えば f(z) は z 平面全体の至る所で滑らかだが |f(z)| は n 個の零点で尖っている. 

  z = x + iy, w = f(z) = u + iv

とすれば,

 y = 0   ⇒   v = 0

  一般にこの逆は成り立たない.

 理由は v は y の奇数次の項だけで出来ていて定数項を持たなく, y|v による.

  f(x,y) = u(x,y) + iv(x,y)

  f(x,-y) = u(x,-y) + iv(x,-y)

と書くとする.このとき,

 u(x,-y) = u(x,y),  v(x,-y) = -v(x,y)

が言える.この結果,

  f(z) = u + iv   ⇒   f(zc) = u - iv   ( zc は z の共役複素数 )

  u = ( f(z) + f(zc) )/2, v = ( f(z) - f(zc) )/(2i)

 f(z) = 0   ⇒   f(zc) = 0

  |f(z)| = √(u2 + v2) = √(f(z)f(zc)) 

 (筆者)
                                                                                     (2007'09'10)

     黄色いカラスの子

 見てきたように絵をかいた
 黄色いカラスの子をかいた
 カラスの子供は黒いはず
 黄色くなんかないだろう
 クラスのみんなは笑ったが
 でも、でも 私は知っている
 お山の奥のカラスのおうち
 そうっと そうっと のぞいてみたら
 なんと かわいい カラスの子
 黄色い かわいい カラスの子

 (本当の烏の子は生まれて直ぐだと黒くなく, また黄色くもない, どちらかと云えばピンク色である.)(筆者)  

  烏の子が神に向かって泣き叫び、食物がなくてさまようとき、烏にえさを備えるのはだれか。
 ( 旧約聖書:ヨブ記38.41 )

( 特別付録 ) 

§§X.二次多項式複素解析関数 f(z) = z2 + c  鞍型放物面の等高線と等傾線の概形

§0. 序.

 x,y,u,v ∈ R ( R は 実数の集合 ), z,w ∈ C ( C は 複素数の集合 ),  ∀ a,b,c ∈ C

として,

  z = x + iy, w = u + iv,

 w = f(z) = az2 + bz + c

を二次多項式複素解析関数と呼ぶ.( 複素解析関数とは z で微分可能な関数の意.) 

 以後は複素解析関数のことを簡単に解析関数と呼んでおく.

 このとき,

 f(z) = az2 + bz + c

       = ((√a)z + b/(2√a))2 - b2/(4a) + c
       
       = ((√a)z + b/(2√a))2 - ( b2 - 4ac )/(4a)
       
       = ((√a)z + b/(2√a))2 - ( √( b2 - 4ac )/(2√a) )2

  ここで新たに, z0, c0 を取って,

 z0 = (√a)z + b/(2√a), c0 = √( b2 - 4ac )/(2√a)
       
とする.然らば,

 z0, c0 ∈ C

 さらに,

  (1) c0 = 0  ならば,
 
 f(z0) = z02 

 このとき f(z) は一葉回転放物面と呼ばれている.

  z0 = x0 + iy0,  x0,y0 ∈ R

  w = f(z0) = u + iv

とすれば,

 u = x02 - y02, v = 2x0y0  

となる.

  (2) c0 ≠ 0  ならば,

  f(z0) = z02 - c02

       = c02( ( z0/c0 )2 - 1 )

  そこで, さらに新たに z1 を取って,

 z1 = z0/c0

とする.然らば,

 z1 ∈ C
 
  それで (2) の場合の概形を要約すれば,
 
 f(z1) = z12 - 1  

を考えれば充分であると思われる.

 この曲面を鞍型放物面と呼んでおく. 
 
  z1 = x1 + iy1,  x1,y1 ∈ R

  w = f(z1) = u + iv  

とすれば,

  u = x12 - y12 - 1, v = 2x1y1

となる. 

 それで本章では主に, この場合を研究して見ようと思う.

 研究の方針は, 複素解析関数全体で一般的に必ず考察されると思われる性質を優先する.具体的に列挙すると、

 (1) w 平面で x = Const, y = Const の曲線の考察.

 (2) z 平面で u = Const, v = Const の曲線の考察.

  (3) 逆写像 z = f-1(w) の考察.

  (4) 不動点についての考察.

 (5) 等傾線 arg f = Const., 等高線 |f| = Const. の考察.

 (6) 等高線がカッシーニの卵形曲線 ( 二定点からの距離の積が一定である曲線 ) になるので, その概略的な考察.

  さらに 等高線 |f| = 1 において, ベルヌーイのレムニスケート曲線が得られる.

 これは鞍型放物面の重要な特徴であると考えられる.

  歴史的にはアーベルが五次方程式の研究でドーナツ面の真ん中の穴の縁を平面で垂直切断してレムニスケートを得た.

  しかしながらドーナツ面を切らなくても複素的な二次式を切っても同様な事が起こせたのである.

  ( ここで言わんとするドーナツ面は学術的にはトーラス (torus) とか輪環面と呼ぶのが正式である.

  紛らわしい用語に円環面 (annulus) があるが, これは円筒を意味している.

  些細なことだが, ネットを検索してもかなりのサイトでトーラスのつもりで円環面と言っている.

 それで, 間違いでもないようだが, 私の頁では敢えて円環面とは言わずに輪環面と言っておく.)

  例えばその方程式は,

 ( x2 + y2 + z2 + 3a2/4 )2 - 4a2( x2 + z2 ) = 0
  
となる.これを z = a/2 で切ると,

  ( x2 + y2 + a2 )2 - 4a2( x2 + a2/4 ) = 0

  ( x2 + y2 )2 + 2a2( x2 + y2 ) - 4a2x2 = 0

 ( x2 + y2 )2 = 2a2( x2 - y2 )

となる.これはレムニスケート曲線に相当する.さらに切断面を平行にずらした場合は特別な関係がないと,

  カッシーニの卵形曲線と酷似した外観の曲線にはなるが正確にはカッシーニの曲線にはならないようである.
 
 意図的に輪環面と切断面を取って故意に切口をカッシーニの曲線にするには次のようにすれば良い.

 まず輪環面を次のように定義する.( おそらく数多の参考書の中で最も簡単な輪環面の定義が以下の式である.)

 輪環面: ( √(z2+x2) - a )2 + y2 = b2

  a は小円の中心から回転の中心までの距離, b は回転させる小円の半径, a > b

  以下に変形の経過を示す.

 x2 + y2 + z2 + a2 - b2 = 2a√(z2+x2)

  ( x2 + y2 + z2 + a2 - b2 )2 = (2a)2( z2 + x2 )

  ( x2 + y2 + z2 + a2 - b2 + 2ax )( x2 + y2 + z2 + a2 - b2 - 2ax ) = (2az)2

  ( ( x + a )2 + y2 + z2 - b2 )( ( x - a )2 + y2 + z2 - b2 ) = (2az)2

  ここで z = b なる平面で輪環面を切断したとする.

 ( ( x + a )2 + y2 )( ( x - a )2 + y2 ) = ( 2ab )2

  すなわち, 二定点 (x,y) = (-a,0), (a,0) からの距離の積が 2ab であるようなカッシーニの曲線となる.

  レムニスケートにするには z = b = a/2 であれば良い.)

 
 レムニスケートの周を等分することはオイラーやアーベルの重要な研究課題であった.

 二次式で生まれたレムニスケートは等高線であって等傾線と直交している.しかも等傾線は角度的に等間隔に取れる.

 だから周の長さではなく等傾線的な等分なら自明な意味で可能である.
  

§1.w 平面における x = Const, y = Const の曲線

  以後の議論で必要となる基本的な前提を再掲する.

 w = f(z) = u + iv = z2 - 1

    = ( x + i y )2 - 1 = x2 + i2xy - y2 - 1

    = ( x2 - y2 - 1 ) + i2xy

 ∴ u = x2 - y2 - 1, v = 2xy

 (1) x = Const を求める.

 v = 2xy から y = v/(2x)

  u = x2 - y2 - 1 = x2 - v2/(4x2) - 1

  ∴ u = -(1/(4x2))v2 + ( x2 - 1 )

 これは w 平面において x = Const の曲線になっている.

 頂点 (u,v) = ( x2 - 1, 0 ) で 対称軸は u 軸で右に凸の放物線となる.

 (2) y = Const を求める.

 v = 2xy から x = v/(2y)

  u = x2 - y2 - 1 = v2/(4y2) - y2 - 1

  ∴ u = (1/(4y2))v2 + ( - y2 - 1 )

 これは w 平面において y = Const の曲線になっている.

 頂点 (u,v) = ( - y2 - 1, 0 ) で 対称軸は u 軸で左に凸の放物線となる.

 このことから, 与えられた 

 z = x + iy

のとき,

 u = -(1/(4x2))v2 + ( x2 - 1 )

という放物線と

 u = (1/(4y2))v2 + ( - y2 - 1 )

という放物線の交点の上下対称な v か -v のうち,

 xy > 0  ⇒  v,  xy < 0  ⇒  -v

となる.
 
 また xy = 0 においては,

  x = 0  ⇒  (u,v) = ( - y2 - 1, 0 ) 

  このとき放物線にならずに, u = -1 で始まる u 軸の左半直線上にある.

  y = 0  ⇒  (u,v) = ( x2 - 1, 0 )

  このとき放物線にならずに, u = -1 で始まる u 軸の右半直線上にある.

 (x,y) = (0,0)  ⇒  (u,v) = (-1,0)

  さらに,

   u = x2 - y2 - 1, v = 2xy  ⇒  f(x+iy) = f(-x-iy) = u + iv
  
であって z = 0 ( 原点 ) を除き z, -z の両者が同じ像 w に写される.( 2 対 1 の写像 )

  v > 0  ⇒  第一象限(x>0,y>0) と 第三象限(x<0,y<0) の点対称な z の二者が対応.

 v < 0  ⇒  第二象限(x<0,y>0) と 第四象限(x>0,y<0) の点対称な z の二者が対応.
                                                                                     (2007'09'13)
§2.z 平面における u = Const, v = Const の曲線

 f(z) = 0

となる z を f(z) の零点という.先ずこれを求めておこう.

 z2 - 1 = 0

  ∴ z = 1, z = -1

  ∴ (u,v) = (0,0)  ⇒  (x,y) = (1,0), (x,y) = (-1,0)

  前節も含めてここまでで分かったことをまとめて |f| や arg f の概形に応用すれば,

 z 平面の零点 (1,0) の周辺と零点 (-1,0) の周辺は z の原点を基準として点対称に対応する.

  具体的には, z の左右どちらかの半平面を原点の周りで半回転すれば残りの半平面にぴったり重なる.

 従って画面全体では, どちらか一方の半平面を基本とすれば良い.( 正規部分空間 )

 (1) u = Const. を求める. 

 u = x2 - y2 - 1

から

 x2 - y2 = u + 1 ( u = Const )

が得られる.これはさらに,

 (1-1) u < -1 ⇒ u + 1 < 0  なので,

 漸近線 y = x, y = -x を持つ x 軸を挟む上下に分かれた一組の直角双曲線

 (1-2) u = -1 ⇒ u + 1 = 0  なので,

 原点を通る二本の直交した直線 y = x, y = -x 

 (1-3) u > -1 ⇒ u + 1 > 0  なので,

 漸近線 y = x, y = -x を持つ y 軸を挟む左右に分かれた一組の直角双曲線

に分けられる.

 (2)  v = Const. を求める. 

  v = 2xy

から

 xy = v/2

が得られる.これらはさらに,

 (2-1) v < 0  ⇒  xy < 0  なので,

 漸近線 y = 0 ( x 軸 ), x = 0 ( y 軸 ) を持つ第二象限と第四象限に分かれた直角双曲線

 (2-2) v = 0  ⇒  xy = 0  なので,
 
  原点を通る二本の直交した直線 y = 0 ( x 軸 ), x = 0 ( y 軸 ) 

  (2-3) v > 0  ⇒  xy > 0  なので,

  漸近線 y = 0 ( x 軸 ), x = 0 ( y 軸 ) を持つ第一象限と第三象限に分かれた直角双曲線

に分けられる.

                                                                                     (2007'09'14)
§3.逆写像 z = f-1(w)
 
  u = x2 - y2 - 1, v = 2xy

から

 x2 - y2 = u + 1, 4x2y2 = v2

  ( x2 + y2 )2 = ( x2 - y2 )2 + 4x2y2

  x2 + y2 = √((u+1)2+v2) ( > 0 )

  ゆえに

  x = ±√((u+1)+√((u+1)2+v2))/√2, y = ±√(-(u+1)+√((u+1)2+v2))/√2

となる.

  これらは,

 (3-1) v < 0  ならば  xy < 0   なので

  x = √((u+1)+√((u+1)2+v2))/√2, y = -√(-(u+1)+√((u+1)2+v2))/√2

 かつ 

 x = -√((u+1)+√((u+1)2+v2))/√2, y = √(-(u+1)+√((u+1)2+v2))/√2

となる.特に,

 (3-1-sp) u = -1 のとき,

  x2 - y2 = 0   かつ   xy < 0  なので

 (x,y) = (√(-v/2),-√(-v/2))   かつ  (x,y) = (-√(-v/2),√(-v/2))

となる.

 (3-2) v = 0 のとき xy = 0  なので 

  (3-2-1) u < -1  ならば

  (x,y) = (0,√(-(u+1)))   かつ   (0,-√(-(u+1))) 
  
  (3-2-2) u = -1  ならば

  (x,y) = (0,0)

 (3-2-3) u > -1  ならば

 (x,y) = (√(u+1),0)   かつ   (x,y) = (-√(u+1),0)     

となる.

  (3-3) v > 0  ならば  xy > 0  なので 

  x = √((u+1)+√((u+1)2+v2))/√2, y = √(-(u+1)+√((u+1)2+v2))/√2

 かつ 

 x = -√((u+1)+√((u+1)2+v2))/√2, y = -√(-(u+1)+√((u+1)2+v2))/√2

となる.特に,

 (3-3-sp) u = -1 のとき,

  x2 - y2 = 0   かつ   xy > 0 

となるので

 (x,y) = (√(v/2),√(v/2))   かつ  (x,y) = (-√(v/2),-√(v/2))

となる.


§4.不動点について

  意外にも黄金比すなわち一辺を単位とする正五角形の対角線の長さ ( 1 + √5 )/2 が現れる.

 n 次多項式解析関数には不動点が必ず存在する.すなわち,

 f(z) = z

となる点のことである.これを解こう.

  f(z) = z2 - 1 = z

  ∴ z2 - z - 1 = 0

  ( z - 1/2 )2 = 1/4 + 1 = 5/4

  z = (1±√5)/2 

となる.

  ゆえに, その解(根)は,

 x = ( 1 + √5 )/2, ( 1 - √5 )/2, y = 0

となり, 確かに黄金比が不動点となっている.

 このような補助方程式と補助解(根)はフィボナッチ数列

  0, 1, 1, 2, 3, 5, 8, 13,… 
 
  an+2 = an+1 + an  ( n = 0,1,2,… )

の一般解

  an = ( αn - βn )/√5  ( α =  ( 1 + √5 )/2, β = ( 1 - √5 )/2 )

を求める場合にも重要である.

 ( 些細なことだが,このように用語を並べてみると補助根を補助解と呼んでも良さそうだが, 
  しかし一般解を一般根とは呼べない.根は根であって, 解ではない.
  逆に根という用語には解との混同を避けるような限定的な意味があると言えよう.
  そこで根と解という用語を並行して用いて, 
  補助方程式側と主方程式側とを暗黙の内に区別するのが便利であると私は考えている.)

 ついでに 

 ( 1 + √5 )/2

が一辺を単位とする正五角形の対角線の長さになることも簡単に述べておこう.

 対角線の長さを X とする.

 正五角形に五本の対角線を引いた場合.

 横に細長い二等辺三角形と縦に細長い二等辺三角形の二種類がある.

 それで, 

 (1-1) 横に細長い最も大きな二等辺三角形を A 型と呼ぶ.

  この三角形の三辺は (1,1,X) である.

 (1-2) A 型の内側で低角を共有する相似な二等辺三角形を a 型と呼ぶ.

 この三角形の等しい二辺をそれぞれ x とする.

 然らば, この三角形の三辺は (x,x,1) である.

 (2-1) 縦に細長い最も大きな二等辺三角形を B 型と呼ぶ.

  この三角形の三辺は (X,X,1) である.

 (2-2) B 型の内側で頂角を共有する相似な二等辺三角形を b 型と呼ぶ.

  この三角形の三辺は (x,x,1-x) である.
 
 A と a は相似なので  1:X = x:1  すなわち  Xx = 1  である.

 B と b も相似なので  X:1 = x:(1-x)  すなわち  x = X(1-x)

  すなわち

 x = 1/X  かつ  x = X(1-x)

  これらから,

  1/X = X - Xx = X - 1

  ∴ X2 - X - 1 = 0   ( X > 0 )

  ∴ X = ( 1 + √5 )/2    

  よって示された.

( あるいは, 縦に細長い二等辺三角形で相似なものを探すと大中小の三つあり, このうち中は横に寝ている. 

  それぞれの辺は (X,X,1),(1,1,x),(x,x,1-x) となっている.これらを利用しても X を求めることができる.)

 黄金比という名の由来については,

  (√5 + 1)/2 : 1

の長方形を考える.

 ここから最大の正方形を引き去ると, 長い辺は 1 だけ縮められて

 (√5 - 1)/2 ( > 0 )

となり, 今度は長さが 1 であった辺が長くなっている.

 そのときの縦横の比は

 1/((√5 - 1)/2) = 2/(√5 - 1) = 2(√5 + 1)/((√5 - 1)(√5 + 1))
 
 = ( √5 + 1 )/2

すなわち元の比に戻っている.

 この操作を無限回繰り返したと仮定し正方形を意図的に統一して取り仮想的にその中心を繋ぐと

 渦を巻きながら消えていく点(消失点)が得られる.

 このような点の存在が画面で自然に運動を暗示させ描かれた対象を動的かつ美的に見せるのだと言われている.

 また自然界には花弁の様なもので連接した輪環内の枚数を数えると前述のフィボナッチ数列になるものがある.

 従って黄金比がそのような自然界の造形をも暗示するので人間に特有の美的安定感を与えるのだとも言われている.

                                                                                     (2007'09'14)

  今日の科学によれば, 自然界は無作為(ランダム)の繰り返しで森羅万象を作ったことになっている.
 この前提が正しいとして, 自然界が無作為に作ったものが人間が作為的に作ったものより優れているのはなぜか?
  物理学のエントロピー増大の法則を簡単に言えば
 サイドを引かずに坂道の上の方に停めた車が徐々に下の方に向かって転がり落ちることだと言えるであろう.
 一方, 生物学の進化論は
 坂道の下の方にいる下等生物が坂道の上の方にいる高等生物になっていくことに譬えられると思える.
 だとすると, エントロピー増大の法則と進化論は相矛盾していると言えないだろうか? (筆者) 


§5.等傾線 arg f = Const., 等高線 |f| = Const.

(1-1) w 平面上の等傾線 arg f* = Const. 

 θ* ( 0 ≦ θ* ≦ 2π ) を弧度として,

 w 平面上の任意の座標 (u,v) に対して,

 v/u = tan‏θ*

を考える.言い換えると,

 v = tan‏θ*u

  さらに, tan‏θ* を t* と略記して良いとする.

 すなわち,

 v = tan‏θ*u = t*u

  また,

 f(z) = u + iv

であるような (u,v) に対し,

 tan-1(v/u) = arg f* = θ* = Const.

で arg f* を定義する.

 v = tan( arg f* )u = tan‏θ*u = t*u  (arg f* = Const.)

は全て同じ意味を表している.

 この直線を w 平面上の等傾線 arg f* と呼んで良いとする.

  arg f* は原点を通る傾き tan‏θ* の一次直線となる.

  ( 本来は等傾線を指すには arg f では不正確で arg f = Const. とすべきだが単に arg f としても良いとする.

 同様な注意は等高線にも言える.本来は |f| = Const. と書くべきだが単に |f| としても良いとする.) 

(1-2) w 平面上の等高線 |f*| = Const. 

 f(z) = u + iv

であるような (u,v) に対し,

  |f*| = √(u2+v2) = Const.

を w 平面上の等高線 |f*| と定義する.  

  さらに

  |f*| = r*

と書いて良いとする.

 |f*| は w の原点を中心とする半径が r* であるような円となる.

 また arg f* と |f*| は直交している.

(2-1) z 平面上の等傾線 arg f

  f(z) = u + iv

であるような (u,v) に対し, z 平面上で

  arg f = tan-1(v(x,y)/u(x,y)) = Const.  

を z 平面上の等傾線 arg f と定義する.

 このとき,

 v(x,y) = tan‏θ*u(x,y) = t*u(x,y) 
 
の関係がある.これを,

 v = t*u

と略記して良いとする.

 arg f と arg f* は一般に異なった曲線であるが互いに写像 f で対応している.

 ( 従って実際の曲線に角度の名称を付ける場合, 両者は同じ名称で呼ばれる.)

  さて,

 w = f(z) = z2 - 1

  u = x2 - y2 - 1,   v = 2xy

において, arg f は

 v = t*u

  2xy = t*( x2 - y2 - 1 )

  y2 + (2/t*)xy - x2 = -1

  ( y + (1/t*)x )2 - (1/t*)2x2 - x2 = -1

  ( y + (1/t*)x )2 - ((t*2+1)/t*2)x2 = -1
 
  ( y + (1/t*)x - (√(t*2+1)/t*)x )( y + (1/t*)x + (√(t*2+1)/t*)x ) = -1

  ( y - ((√(t*2+1)-1)/t*)x )( y - ((-√(t*2+1)-1)/t*)x ) = -1

  ここで新たに a, b, X, Y を

  a = (√(t*2+1)-1)/t*

  b = (-√(t*2+1)-1)/t*

 Y = y - ax

  X = y - bx

  Y = 0  ⇒  y = ax  ( X 軸 )

  X = 0  ⇒  y = bx = -(1/a)x  ( Y 軸 )

と定義する.

 すると,

 ab = ( -(t*2+1) + 1 )/t*2 = ( - t*2 - 1 + 1 )/t*2 = - t*2/t*2

     = -1

  ∴ b = -1/a

となることから X 軸と Y 軸は直交している.

  等傾線 arg f は

  YX = ( y - ax )( y - bx ) = -1 ( arg f = Const. )

となり X 軸 と Y 軸を漸近線に持つ直角双曲線となる.

  ( この形式での座標変換の問題点はグラフ上の見かけの単位長が 

  X 軸 の単位長と Y 軸の単位長, x 軸や y 軸の単位長との間で異なることである.

 しかし, これはむしろ実用上の問題であると考え, 本稿では未処理のままにしておく.

 敢えて解決を試みるとすれば,

 tan-1a = φ とすれば a = tanφ = sinφ/cosφ となることから

 Ys = cosφY = cosφ( y - ax ) = cosφ( y - (sinφ/cosφ)x ) = cosφy - sinφx

  Xs = sinφX = sinφ( y - bx ) = sinφ( y + (cosφ/sinφ)x ) = sinφy + cosφx

となるような座標( Xs, Ys ) を採用すれば良い.

 このとき二行二列の変換行列の値を考えれば

 [Y,X] = [ 1, -tanφ, 1, cotφ ][y,x] = [ 1, -sinφ/cosφ, 1, cosφ/sinφ ][y,x]

  det[ 1, -sinφ/cosφ, 1, cosφ/sinφ ] = 1・cosφ/sinφ -(-sinφ/cosφ)・1 = cosφ/sinφ + sinφ/cosφ

  = ( cos2φ + sin2φ )/(sinφcosφ) = 2/sin2φ ≠ 1 

 一方,

  [Ys,Xs] = [ cosφ, -sinφ, sinφ, cosφ ][y,x]

  det[ cosφ, -sinφ, sinφ, cosφ ] = cosφcosφ -(-sinφ)・sinφ = cos2φ + sin2φ = 1 

  後者の座標では計算上の単位とグラフの見かけ上の単位とが一致する.

  その理由は変換行列の式の値の絶対値が 1 であることによると考えられる.

  ( ここで det[⊿] で行列 ⊿ の式の値を意味している.) ) 


  もう少し説明を加えておくと, 

  z 平面の任意の座標 (x,y) を水平成分 x と垂直成分 y で合成された原点から伸びたベクトルであると考える.

 別に原点を共有して直交する X 方向のベクトルと Y 方向のベクトルがあると仮定する. 

 本例では x,yX,Y は各組が互いに直交したベクトル系で両者は互いに φ だけ回転していることになる.

 こうして先ほどのベクトルを X 方向ベクトルと Y 方向ベクトルのベクトル和によって復元したとする.

 このとき X 方向成分の大きさは XsY 方向成分の大きさは Ys であらわされる. 

  改めて前の双曲線の式を X,Y から Xs,Ys で書き直すと,

  Ys = cosφy - sinφx = cosφY
 
  Xs = sinφy + cosφx = sinφX
 
  XY = -1  ⇒  XsYs = -sinφcosφ = -(1/2)sin2φ


  傾き t* = tanθ*, a, b の間の対応も少し調べておこう.

 (1-1-1) a = (√(t*2+1)-1)/t* = (t*/|t*|)√(1+(1/t*2)) - (1/t*)

  (1-1-2) b = (-√(t*2+1)-1)/t* = -(t*/|t*|)√(1+(1/t*2)) - (1/t*)

 (at*+1)2 = t*2+1  ⇒  (1-a2)t*2 = 2at*

  ⇒(1-1-3) t = 2a/(1-a2), ( t = 0 ⇒ x = 0 または y = 0 となるが, t = 0 は今暫く考察から除く.

  (1-1-4) t = 2b/(1-b2)

  (1-1-5) t = 2/((1/a)-a) = -2/(a+b)

  これらから,
   
  (1-2-1) 0 < t* ≦ 1  ⇒  0 < a ≦ √2 - 1, -∞ < b ≦ -√2 - 1    
  
  (1-2-2) 1 < t* < ∞  ⇒  √2 - 1 < a < 1, -√2 - 1 < b < -1

  (1-2-3) - ∞ < t* ≦ -1  ⇒  -1 < a ≦ -√2 + 1, 1 < b ≦ √2 + 1
  
  (1-2-4) -1 < t* < 0  ⇒  -√2 + 1 < a < 0, √2 + 1 < b < +∞

  更に f の零点を arg f = Const. に代入すると,

 (2-1-1-1) 零点 (x,y) = (-1,0) のとき,

 XY = ( y - ax )( y - bx ) = ( 0 - a(-1) )( 0 - b(-1) ) = ab = -1

  ゆえに XY = ( y - ax )( y - bx ) = -1 を満たす.

 ゆえに全ての等傾線 arg f = Const. は f の零点 (-1,0) を通る.

 (2-1-1-2) 零点 (x,y) = (1,0) のとき,

 XY = ( y - ax )( y - bx ) = ( 0 - a(1) )( 0 - b(1) ) = ab = -1

  ゆえに XY = ( y - ax )( y - bx ) = -1 を満たす.

 ゆえに全ての等傾線 arg f = Const. は f の零点 (1,0) を通る.


  そこで z の右半平面 -π/2 < θ < π/2 内で角度を振り分けると,

 (2-1-2-1-1) -π/4 < tan-1a < 0  ⇔  π/4 < tan-1b < π/2  

  (2-1-2-1-2) 0 < tan-1a < π/4  ⇔  -π/2 < tan-1b < -π/4  

  これらの等傾線 arg f = Const. は零点(0,1) を通るように描かれる.

  さらに z の左半平面 π/2 < θ < 3π/2 内で角度を振り分けると,

 (2-1-2-2-1) 3π/4 < tan-1a < π  ⇔  5π/4 < tan-1b < 3π/2
  
  (2-1-2-2-2) π < tan-1a < 5π/4  ⇔  π/2 < tan-1b < 3π/4
  
  これらの等傾線 arg f = Const. は零点(0,-1) を通るように描かれる.


 ここで右半平面について等高線 arg f = Const. 左端の点の座標を求めて見よう.そのためには,

 ( y - ax )( y - bx ) = -1

  この式の左辺を y について偏微分して = 0 とおけば求める左端の座標が与えられると考える.

 (∂/∂y)( ( y - ax )( y - bx ) ) = ( y - bx ) + ( y - ax ) = 2y - (a+b)x 

  2y - (a+b)x = 0

  ∴ y = ((a+b)/2)x,  これを元の式に代入して,

 ( (a+b)/2 - a )( (a+b)/2 - b )x2 = -1

  ((a-b)/2)x)2 = 1

  右半平面では x > 0 であるので

  ∴ x = 2/(a-b) = 2a/(a2+1) ( a > 0 )  または  x = 2/(b-a) = -2a/(a2+1) ( a < 0 )  

  ∴ y = (a+b)/(a-b) = (a2-1)/(a2+1) ( a > 0 )  または

    y = (a+b)/(b-a) = -(a2-1)/(a2+1) ( a < 0 ) 

  まとめると

 (2-1-2-3-1) 右半平面 ( x > 0 ) で等高線 arg f = Const. の左端の点の座標は

 (*1-1) a > 0  ならば 左端の点の座標は (x,y) = ( 2a/(a2+1), (a2-1)/(a2+1) )

  (*1-2) 特に 0 < a < 1  ならば 0 < x < 1, -1 < y < 0

  (*2-1) a < 0  ならば 左端の点の座標は (x,y) = ( -2a/(a2+1), -(a2-1)/(a2+1) )

  (*2-2) 特に 0 > a > -1  ならば 0 < x < 1, 1 > y > 0

 同様に

 (2-1-2-3-2) 左半平面 ( x < 0 ) で等高線 arg f = Const. の右端の点の座標は

 (*1-1) a > 0  ならば 左端の点の座標は (x,y) = ( -2a/(a2+1), -(a2-1)/(a2+1) )

  (*1-2) 特に 0 < a < 1  ならば 0 > x > -1, 1 > y > 0

  (*2-1) a < 0  ならば 左端の点の座標は (x,y) = ( 2a/(a2+1), (a2-1)/(a2+1) )

  (*2-2) 特に 0 > a > -1  ならば 0 > x > -1, -1 < y < 0

 また特に 

  (2-1-3-3) t* = 0  ⇒  v = t*u = 0  かつ v = 2xy

となるので, このとき等高線 arg f = Const. は,

 y = 0 ( x 軸 )  または  x = 0 ( y 軸 )

であると考えられる.

 (2-1-3-4) |t*| → ∞ ⇒ v/|t*| = u → 0  かつ u = x2 - y2 - 1

となるので, このとき等高線 arg f = Const. は,

 x2 - y2 = 1

であると考えられる.

 これは x 軸切片が 1, -1 で 漸近線が y = ±1 であるような直角双曲線である.
  

 今までで分かったことをまとめると等傾線 arg f は 

  t* ≠ 0 では X 軸と Y 軸を漸近線に持つ直角双曲線で 

  (2-1-3-1) t* < 0  ⇒  a < 0, b > 0

  Y = 0  かつ  X > 0  の条件を解いて X の正の軸が z のどの象限にあるかを調べる.

  ( Y = y - ax, Y = 0 ) かつ a < 0   ⇒  ( y/x < 0, x/y < 0 )  
  ( X = y - bx, X > 0 ) かつ b > 0 かつ y/x < 0
  ⇒  x( (y/x) - b ) > 0  ⇒  x < 0  
  ( X = y - bx, X > 0 ) かつ -b = 1/a < 0 かつ x/y < 0 
  ⇒  y( 1 - b(x/y) ) > 0  ⇒  y > 0

 ∴ Y = 0  かつ  X > 0  ⇒  x < 0 かつ y > 0 ( X 軸の正は z の第二象限 )

  X = 0  かつ  Y > 0  の条件を解いて Y の正の軸が z のどの象限にあるかを調べる.

  ( X = y - bx, X = 0 ) かつ b > 0   ⇒  ( y/x > 0, x/y > 0 )  
  ( Y = y - ax, Y > 0 ) かつ a < 0 かつ y/x > 0
  ⇒  x( (y/x) - a ) > 0  ⇒  x > 0  
  ( Y = y - ax, Y > 0 ) かつ a < 0 かつ x/y > 0
  ⇒  y( 1 - a(x/y) ) > 0  ⇒  y > 0
  
 ∴ X = 0  かつ  Y > 0  ⇒  x > 0  かつ  y > 0  ( Y 軸の正は z の第一象限 )

 ゆえに t* < 0  ⇒  a < 0, b > 0 の条件で arg f = Const. は

  ( X > 0, Y < 0 ) の象限と ( X < 0, Y > 0 ) の象限にあって,

 x 軸上に切片を持ち, それらは零点 (-1,0),(1,0) である. 

  X 軸は直線 y = ax で Y 軸は直線 y = bx = (-1/a)x である. 

  X の正の軸は z の第二象限( x < 0, y > 0 ) で Y の正の軸は z の第一象限( x > 0, y > 0 ) である. 

 (2-1-3-2) t* = 0 のとき v = 2xy = t*u = 0

  ゆえに 直線 y = 0 ( x 軸 ), x = 0 ( y 軸 ) となり双曲線とはならない.

 (2-1-3-3) t* > 0  ⇒  a > 0, b < 0

  Y = 0  かつ  X > 0  の条件を解いて X の正の軸が z のどの象限にあるかを調べる.

  ( Y = y - ax, Y = 0 ) かつ a > 0   ⇒  ( y/x > 0, x/y > 0 )  
  ( X = y - bx, X > 0 ) かつ b < 0 かつ y/x > 0
  ⇒  x( (y/x) - b ) > 0  ⇒  x > 0
  ( X = y - bx, X > 0 ) かつ b < 0 かつ x/y > 0 
  ⇒  y( 1 - b(x/y) ) > 0  ⇒  y > 0

 ∴ Y = 0  かつ  X > 0  ⇒  x > 0  かつ  y > 0  ( X 軸の正は z の第一象限 )  

  X = 0  かつ  Y > 0  の条件を解いて Y の正の軸が z のどの象限にあるかを調べる.

  ( X = y - bx, X = 0 ) かつ b < 0   ⇒  ( y/x < 0, x/y < 0 )  
  ( Y = y - ax, Y > 0 ) かつ a > 0 かつ y/x < 0
  ⇒  x( (y/x) - a ) > 0  ⇒  x < 0  
  ( Y = y - ax, Y > 0 ) かつ a > 0 かつ x/y < 0
  ⇒  y( 1 - a(x/y) ) > 0  ⇒  y > 0
  
 ∴ X = 0  かつ  Y > 0  ⇒  x < 0  かつ  y > 0  ( Y 軸の正は z の第二象限 )

 ゆえに t* > 0  ⇒  a > 0, b < 0 の条件で arg f = Const. は

  ( X > 0, Y < 0 ) の象限と( X < 0, Y > 0 ) の象限にあって,

 x 軸上に切片を持ち, それらは零点 (-1,0),(1,0) である. 

  X 軸は直線 y = ax で Y 軸は直線 y = bx = (-1/a)x である.

  X の正の軸は z の第一象限( x > 0, y > 0 ) で Y の正の軸は z の第二象限( x < 0, y > 0 ) である. 

 総合すると,

  X 軸の正の軸は t* < 0 では z の第二象限にあり t* > 0 では z の第一象限にある.  

 Y 軸の正の軸は t* < 0 では z の第一象限にあり t* > 0 では z の第二象限にある.  

 しかも, いかなる場合においても X 軸と Y 軸は直交している.

 z 平面上には同一名称の等傾線 arg f = Const. が独立して二本ずつあり互いに原点対称でしかも零点を通る.

  従って本例において, 任意の等角度線 arg f = Const. は右半平面の零点(1,0) と左半平面の零点(-1,0) を 

  x 軸切片に持つ一組の双曲線となり, z 平面の原点で点対称である.

 漸近線は X 軸と Y 軸で表され, これらの漸近線に基づく直交変換座標は Xs, Ys となる.


(2-2) z 平面上の等高線 |f| = Const.

  f(z) = u + iv

であるような (u,v) に対し, z 平面上で

  |f| = √( u(x,y)2 + v(x,y)2 ) = Const.

を z 平面上の等高線 |f| と定義する.

 |f| と |f*| は一般に異なった曲線であるが写像 f で互いに対応している.

 ( 従って実際の曲線に高さの名称を付ける場合, 両者は同じ名称で呼ばれる.)

 ( x, y, |f| ) を三次元空間と考えモジュラー曲面と呼ぶことがある.

 モジュラー曲面には等高線 |f| = Const. と 等傾線 arg f = Const. が重ね描きされる.

 さて,

 w = f(z) = z2 - 1

  u = x2 - y2 - 1,   v = 2xy

において, |f| は h ( ≧ 0 ) を高さを表す実数として

 |f| = h,

  u2 + v2 = h2  

として良い.即ち,

 ( x2 - y2 - 1 )2 + ( 2xy )2 = h2

  x4 + y4 + 1 - 2x2y2 - 2x2 + 2y2 + 4x2y2 = h2

  x4 + 2x2y2 + y4 + 1 - 2x2 + 2y2 = h2

  ( x4 + 2x2y2 + y4 ) + 1 - 2x2 + 2y2 = h2

  ( ( x2 + y2 )2 + 2( x2 + y2 ) + 1 ) - 4x2 = h2

  ( x2 + y2 + 1 )2 - 4x2 = h2

  ( x2 + y2 + 1 + 2x )( x2 + y2 + 1 - 2x ) = h2

  ( ( x + 1 )2 + y2 )( ( x - 1 )2 + y2 ) = h2

 あるいは,

 ( ( x2 + y2 )2 - 2( x2 + y2 ) + 1 ) + 4y2 = h2

  ( x2 + y2 - 1 )2 + 4y2 = h2

  このように, この式は同じ意味の幾通りもの式で表せる.それぞれに使い分けると便利なのでそれを列挙しておく.

 (2-2-1) x4 + 2x2y2 + y4 - 2x2 + 2y2 = h2 - 1

  (2-2-2) ( ( x + 1 )2 + y2 )( ( x - 1 )2 + y2 ) = h2

  (2-2-3) ( x2 + y2 - 1 )2 + 4y2 = h2

  (2-2-4) ( 1 + tanθ2 )2x4 - 2( 1 - tanθ2 )x2 = h2 - 1, y = tanθx 


  特に, これらの等高線 |f| は (2-2-2) で分かるように

  f の零点 (-1,0),(1,0) について二定点からの距離の積が一定の曲線となっている.

 一般にこのような曲線はカッシーニの卵形曲線と呼ばれている.

 この曲線は h の大きさに応じてさらに概形が分類できる.次節でそれを調べて見よう.


    芒の穂 天のまあるい 窓を掃く  (筆者)
                                                                                     (2007'09'16)

§6.等高線 |f| = Const. の概形 ( カッシーニの卵形曲線の分類 )

  前節と重複するが本節で必要となる事柄をまとめて再掲しておく.要素の定義は前節に従う.

  z = x + iy, w = u + iv,

 w = f(z) = z2 - 1,

  u = x2 - y2 - 1, v = 2xy  

  |f| = √( u2 + v2 ) = Const.

  |f| = h

 u2 + v2 = ( x2 - y2 - 1 )2 + (2xy)2 = h2  ( h = Const.)

(6-1-1) x4 + 2x2y2 + y4 - 2x2 + 2y2 = h2 - 1

(6-1-2) ( x2 + y2 )2 - 2( x2 - y2 ) = h2 - 1

(6-1-3) ( ( x + 1 )2 + y2 )( ( x - 1 )2 + y2 ) = h2

(6-1-4) ( x2 + y2 - 1 )2 + 4y2 = h2
  
(6-1-5) ( 1 + tan2θ )2x4 - 2( 1 - tan2θ )x2 = h2 - 1, y = tanθx 

  本例の全体的な特徴は等傾線 arg f = Const.でも等高線 |f| = Const.でも原点対称な図形となること. 

  さらに, 等高線は x 軸や y 軸に関し線対称でもあること.

 z 平面で原点の周りで一周すると w 平面上では対応した図形上を二周することである.

 
(6-2-1) ベルヌーイのレムニスケート曲線

 特に (1-1) で h = 1 と置けば,

 x4 + 2x2y2 + y4 - 2x2 + 2y2 = h2 - 1 = 0  ( h = 1 )

  x4 + 2x2y2 + y4 = 2x2 - 2y2

  ( x2 + y2 )2 = 2( x2 - y2 )

  ここで r, θ を

  r = |z| = √(x2+y2),

  x = rcos‏θ, y = rsin‏θ  ( 0 ≦ θ ≦ 2π )

として極座標で書き直してみれば,

 ( r2cos2θ + r2sin2θ )2 = 2( r2cos2θ - r2sin2θ )

  r4 = 2r2( cos2θ - sin2θ )

  (r/√2)2 = cos2θ  

 ( ∵ cos2θ + sin2θ = 1, cos2θ - sin2θ = cos2θ )

  ここで r1 = r/√2 とすれば,

  r12 = cos2θ

となるが, この式はベルヌーイのレムニスケート曲線( 標準形 )と呼ばれている.

  ( 一般形は a を任意の実数として, r2 = 2a2cos2θ ) 

 レムニスケートとはフランス語でリボンを結んだ形の意味である.また連珠形とも和訳される.
 
 以下でこの式の特徴を調べる.

  この式は 

 r1 = 0, θ = π/4, 3π/4, 5π/4, 7π/4  ( r = r1√2 = 0, 2θ = π/2, 3π/2 )

でも成立する.すなわち原点を通る.

  ここで注意すべきは, レムニスケートの一つの特徴として z 平面の角度 θ に関し休止区間があることである.

 具体的には 

  π/4 < θ < 3π/4, 5π/4 < θ < 7π/4

の区間でグラフが存在していない.理由は,

 cos2θ < 0 ( π/4 < θ < 3π/4, 5π/4 < θ < 7π/4 )

であるために,

  r12 ≧ 0 かつ cos2θ < 0  ⇒  r12cos2θ

となるためである.

  今度は逆に角度 θ の有効範囲を求めて見よう.

  y = (tan‏θ)x 

であるとする.すなわち tan‏θ は傾きであるとする.

  ( x2 + y2 )2 = 2( x2 - y2 ) ( y = (tan‏θ)x )

  ( x2 + (tan2θ)x2 )2 = 2( x2 - (tan2θ)x2 )

  x4( 1 + tan2θ )2 = 2x2( 1 - tan2θ )

  ∴ 1 - tan2θ = 1 - (y/x)2 ≧ 0  ⇒  |y| ≦ |x|

  ∴ -π/4 < θ < π/4, 3π/4 < θ < 5π/4
 
 これらが θ の有効範囲となる. 

  結局 z 平面側の角度を θ, w 平面側の角度を θ* として粗い対応表を示すと以下のようになる.

 [ レムニスケート曲線について z - w 間の角度の対応 ]

      θ          x    y         θ*        v
    0 ~ π/4     +    +       0 ~ π      + ( w の上半平面 )   
      休止                         ‐
    3π/4 ~ π    -    +       π ~ 2π     - ( w の下半平面 )
    π ~ 5π/4    -    -       0 ~ π      + ( w の上半平面 ) 
      休止                         -
    7π/4 ~ 2π   +    -       π ~ 2π     - ( w の下半平面 ) 

 θ が休止区間も含めて z 平面上を一周する間に θ* は w 平面上を見かけ上連続に二周している.

 それゆえ w 平面上の等高線 |f*| = Const. を見ただけでは z 平面上の θ に休止区間があることが分かり難い. 

 また, この曲線は原点で少なくとも π/4 と -π/4 の二本の接線を持っている.

 すなわち接線の唯一性が崩れている.ゆえにレムニスケート曲線は原点で解析的に不連続である.


 等高線 |f| = Const. ( 0 < |f| < 1 ) の場合は

 零点(0,-1),(1,0) の周りに一個ずつ原点対称な独立した閉曲線となる.

 しかも |f| の大きさの順に内側より外側に向かって互いに共有点を持たない同心閉曲線を描いている.

 その規模は |f| の大きさの順に大きくなる.

 従って |f| の小さい者ほど θ の休止区間が長く上下に対称にある.

 休止区間でない場合, 一つの θ には一般には長短二つずつの半径があり, 

 四つの方向でのみ半径を一つ持つ, これは原点から引いた等高線への接線に相当する.

 対応する w 平面上の等高線は原点を中心とする半径が |f| の円が唯一つあり, 

 z 側 θ の休止区間も含めた一周の間に w 側では同じ円を二周する. 


 等高線 |f| = Const. ( 1 < |f| ) の場合は

 原点対称な唯一つの閉曲線となる.

 それゆえ θ の任意の角度に対し唯一の半径が存在する.

  対応する w 平面の等高線は原点を中心として半径が |f| の円が唯一つあり, 

 z 側 θ の一周の間に w 側では同じ円を二周する. 

  この場合に等高線 |f| = Const. の式を考えると, 先に挙げた

(6-2-2) ( x2 + y2 )2 - 2( x2 - y2 ) = h2 - 1
 
からさらに, 極座標式として

 x = rcosθ, y = rsinθ

を考えれば,

 r4 - 2r2( cos2θ - sin2θ ) = h2 - 1

(6-2-3) r2 + ( 1 - h2 )/r2 = 2cos2θ  ( h = Const. h < 1 )

が得られる.ここで,

 r2 × (( 1 - h2 )/r2) = 1 - h2 = Const.

から,

 r2 = ( 1 - h2 )/r2

であれば (1-2-1) の右辺 2cos2θ は最小となり, θ は最大となる. 

 ( ∵ 二数の積が定数であれば二数の和は二数が等しいとき最大か最小となる. 

  並びに, 二数の和が定数であれば二数の積は二数が等しいとき最大か最小となる.(最大最小定理)

  式を r で微分して = 0 とおいても同様の結果が得られるが, しかし, この程度の問題で微分するのは冗長で

 「鶏を裂くに牛刀を用いる」 に等しい.とある大先生に教わった.)

 ∴ r2 = √(1-h2)

  代入して,

 √(1-h2) + (1-h2)/√(1-h2) = 2√(1-h2) = 2cos2θcos2θ = √(1-h2)

  ∴ θ = ±(cos-1√(1-h2))/2

  この θ は原点から等高線 |f| = Const. ( |f| < 1 ) に引いた接線の角度であると考えられる. 

(6-2-4-1) 等高線 |f| = h = Const. ( h < 1 ) ならばこの等高線への接線の角度 θ は

 θ = ±(cos-1√(1-h2))/2

である.この極限を考えれば,

(6-2-4-2) レムニスケート曲線 |f| = h = 1 の原点から引いた接線の角度 θ の極限値は

 θ = ( ℓim h→1 )( ±(cos-1√(1-h2))/2 )

   = ±(cos-10)/2 = ±π/4 

となる.

 このとき同時に r の極限値は,

 ( ℓim h→1 )r = 0 

となる.

 結局, 

  (1-2-2-0) 等高線 |f| = h < 1 の原点から引いた接線の角度 θ は 

  θ < ±π/4

であると言える.


 一般に原点から等高線へ原点を通る一次直線 

  y = tanθx

を考え, 等高線の式に代入して

(6-2-5-0) ( 1 + tan2θ )2x4 - 2( 1 - tan2θ )x2 = h2 - 1

からも等高線の概形を考察できる.この場合を簡単に調べて見よう.

 式を x2 の二次式であると見なしてさらに整理すると,

(6-2-5-1) ( 1 + tan2θ )2x4 - 2( 1 - tan2θ )x2 + ( 1 - h2 ) = 0
 
となる.ここで 

(6-2-5-2) a = 1 + tan2θ, b = 1 - tan2θ, c = 1 - h2

と置けば与式は

(6-2-5-3) a2x4 - 2bx2 + c = 0 

となっている.これを x2 について解いて見よう.

  ( ax2 - b/a )2 - (b/a)2 + c = 0 

  ( ax2 - b/a )2 - ( b2 - a2c )/a2 = 0 

ここで,

(6-2-5-4) ( 本例の特別な ) 判別式 D = b2 - a2c 

 = ( 1 - tan2θ )2 - ( 1 + tan2θ )2( 1 - h2 )

(6-2-5-5) D = h2(tan2θ+1)2 - 4tan2θ

 = ( htan2θ + 2tanθ + h )( htan2θ - 2tanθ + h )

(6-2-5-6) h ≧ 1  ⇒  D ≧ 0

(6-2-5-7) 0 ≦ θ ≦ π/2  ⇒  ( htan2θ + 2tanθ + h ) ≧ 0

  ∴ 0 ≦ θ ≦ π/2, D ≧ 0  ⇒ ( htan2θ - 2tanθ + h ) ≧ 0

(6-2-5-8) h ≦ 1, 0 ≦ θ ≦ π/2 で ( htan2θ - 2tanθ + h ) ≧ 0 である条件

 tan2θ - (2/h)tanθ + 1 ≧ 0

  ( tanθ - (1+√(1-h2))/h )( tanθ - (1-√(1-h2))/h ) ≧ 0
 
  (1) ( tanθ - (1+√(1-h2))/h ) ≧ 0  かつ  ( tanθ - (1-√(1-h2))/h ) ≧ 0 

  ならば (6-2-5-8) を満たすと仮定する.

 ∴ tanθ ≧ (1+√(1-h2))/h,  0 ≦ θ ≦ π/2  ⇒  tanθ ≧ 1,  θ ≧ π/4  

  ところが, このとき本来の等高線の等式も満たされていなければならない.それは,

(6-2-5-1) ( 1 + tan2θ )2x4 - 2( 1 - tan2θ )x2 + ( 1 - h2 ) = 0
 
 ところが h ≦ 1 ならば  

 ( 1 + tan2θ )2x4 ≧ 0 かつ ( 1 - h2 ) ≧ 0

 三つの実数項の和が零であれば, 少なくともその内の一つは負または零である.
 
  ∴ - 2( 1 - tan2θ )x2 ≦ 0

  ∴ 1 - tan2θ ≧ 0

  ∴ tanθ ≦ 1

(6-2-5-8-1)  h ≦ 1, 0 ≦ θ < π/2  ⇒  0 ≦ θ ≦ π/4  ⇒  0 ≦ tanθ ≦ 1

 ゆえに tanθ ≧ (1+√(1-h2))/h > 1 ( h ≠ 1 ) は不正であって該当しない.

  ( レムニスケートの接線で θ = π/4 であり, h < 1 なら等高線はレムニスケートの内部にあり

  その幾何学的な意味からも h < 1 ⇒ θ < π/4 であるが言えはする.

 しかし, 必ずしもレムニスケートに言及しなくても同値なことが簡単な前提だけから導けるのである.(発見!)  )

  (2) ( tanθ - (1+√(1-h2))/h ) ≦ 0  かつ  ( tanθ - (1-√(1-h2))/h ) ≦ 0

  ならば (6-2-5-8) を満たすと仮定する.

 ∴ tanθ ≦ 1+√(1-h2))/h  かつ  tanθ ≦ 1-√(1-h2))/h

  ところが

 1-√(1-h2))/h ≦ 1+√(1-h2))/h  ( h ≦ 1 )

 ∴ tanθ ≦ (1-√(1-h2))/h ≦ 1
  
  この結果

 0 ≦ tanθ ≦ (1-√(1-h2))/h, 0 ≦ θ ≦ tan-1((1-√(1-h2))/h)

 とすれば (6-2-5-8) が満たされ, D ≧ 0 とできる.

  かくして,

(6-2-5-9) 任意の h で 0 ≦ θ ≦ π/2 の範囲で適当な tanθ が存在し, D ≧ 0 とできる.

  ( ただし D = 0 は後に調べるように h ≦ 1 の場合に限る.)


  さて D ≧ 0, tan2θ ≧ 0,  D,tan2θ は実数であった. 

  ゆえに tan‏θ = √tan2θ, -tan‏θ = -√tan2θ

となるような実数 tan‏θ, -tan‏θ が存在する.

 そこで

  y = tanθx

が成立して, 一組の (x,y) が等高線上に取れるならば,

 -y = tanθ(-x), y = -tanθx = tanθ(-x), -y = -tanθ(-x) = tanθ(x)

も成立することになるから 

 (-x,-y), (-x,y), (x,-y) が同じ等高線上か高さが同じもう一組の等高線上に存在することになる.

 結局, x > 0, y > 0 として,

  (q-1) 0 < h < 1 ならば

 (x,y), (x,-y) が零点(0,1) を囲む等高線上にあり, (-x,y), (-x,-y) が零点(0,-1) を囲む等高線上にある.

  (q-2) 1 < h ならば

  (x,y), (x,-y), (-x,y), (-x,-y) が原点を囲む等高線上にある.

  これらのことから

 本例の等高線は x 軸や y 軸に対して線対称でしかも原点に対しても点対称になっている.

 と言える.

 本例の等高線は第一象限の形が分かれば残りの象限の形は対称性の応用で簡単に復元できる.

 従って本例の等高線は第一象限を基本部分空間であると見なしておいても良い.


  さて,	このようなことから x2 について解こうとしていた変形中の式は, 

  ( ax2 - b/a )2 - D/a2 = 0 

  ( ax2 - b/a - √D/a )( ax2 - b/a + √D/a ) = 0

(6-2-5-10) ( ax2 - ( b + √D )/a )( ax2 - ( b - √D )/a ) = 0, ( √D ≧ 0 )

  これを解いて,

(6-2-5-11) x2 = ( b + √D )/a2, ( b - √D )/a2

  そして, さらに,

 D < 0 ⇒ x2 が存在しない.( ∵ x2 は実数なので負の実数の平方根にはならない.) 

 D ≧ 0 ⇒ x2 が存在する.

  x2 ≧ 0  ⇒  x が存在する.

 x2 < 0  ⇒  x が存在しない.( ∵ x は実数なので負の実数の平方根にはならない.) 

 
 既に述べた等高線の方程式

   y = tanθx

(6-2-5-2) a = 1 + tan2θ, b = 1 - tan2θ, c = 1 - h2

(6-2-5-3) a2x4 - 2bx2 + c = 0 

を根拠として次が言える. 

  a2x4 ≧ 0, x2 ≧ 0 が常に成り立つことから, 0 ≦ θ ≦ π/2 を前提として,

(6-2-6-1-1) b < 0  ⇔  1 - tan2θ < 0  ⇔  tanθ > 1 ⇔  π/4 < θ < π/2  

(6-2-6-1-2) b = 0  ⇔  1 - tan2θ = 0  ⇔  tanθ = 1  ⇔  θ = π/4
  
(6-2-6-1-3) b > 0  ⇔  1 - tan2θ > 0  ⇔  tanθ < 1  ⇔  0 < θ < π/4

  (1-6-2-1) ( -2b > 0  ⇒  c ≦ 0 )  ⇒  ( b < 0  ⇒  c ≦ 0 )  

  ⇒  ( tanθ > 1  ⇒  h ≧ 1 )  ⇒  ( π/4 < θ < π/2  ⇒  h ≧ 1 )  (この逆は言えない.)

  (1-6-2-2-1) ( b = 0  ⇒  c ≦ 0 )

  ⇒  ( tanθ = 1  ⇒  h ≧ 1 )  ⇒  ( θ = π/4  ⇒  h ≧ 1 )  ( この逆は言えない.)

  ( ※ b = 0, tanθ = 1, θ = π/4, c = 0, h = 1  ⇒  x = 0  ⇒  y = 0 )
  
  (1-5-2-2-2) ( c = 0  ⇒  -2b ≦ 0 )  ⇒  ( c = 0  ⇒  b ≧ 0 )

  ⇒  ( h = 1  ⇒  tanθ ≦ 1 )  ⇒  ( h = 1  ⇒  0 ≦ θ ≦ π/4 )  ( この逆は言えない.)

  ( ※ c = 0, h = 1, b = 0, tanθ = 1, θ = π/4  ⇒  x = 0  ⇒  y = 0 )
  
  (1-6-2-3) ( c > 0  ⇒  -2b < 0 )  ⇒  ( c > 0  ⇒  b > 0 ) 

 ⇒  ( h < 1  ⇒  tanθ < 1 )  ⇒  ( h < 1  ⇒  0 ≦ θ < π/4 )  (この逆は言えない.)
   

  さて, これらの準備の下でいよいよ本例の等高線を分類して見よう.

 しばらくは議論を第一象限内に限る.すなわち

 (p-0) 0 ≦ x, y ≦ 0, 0 ≦ θ ≦ π/2, x2 = b ± √D,  √D ≧ 0,  b, √D は実数.

として, 考え方の方針だけをを簡単に示しておく.

 (p-1) 0 < b < √D  ならば

  b + √D > 0  ⇒  x = ±√( b + √D ) が存在する. 

  b - √D < 0  ⇒  x は存在しない. 

 このとき原点は等高線の内部にあり, この条件の下で y = tanθx は z の同一象限内に一つの交点を持つ.

  (p-2) 0 < √D < b  ならば

  b + √D > 0  ⇒  x = ±√( b + √D ) が存在する. 

  b - √D > 0  ⇒  x = ±√( b - √D ) が存在する.

 このとき原点は等高線の外部にあり, この条件の下で y = tanθx は z の同一象限内に二つの交点を持つ.

  (p-3) b < 0, 0 < |b| < √D  ならば

 b + √D > 0  ⇒  x = ±√( b + √D ) が存在する. 

  b - √D < 0  ⇒  x は存在しない. 

  このとき原点は等高線の内部にあり, この条件の下で y = tanθx は z の同一象限内に一つの交点を持つ.

  (p-4) b < 0, 0 < √D < |b|  ならば

  b + √D < 0  ⇒  x は存在しない.

  b - √D < 0  ⇒  x は存在しない. 

  (p-5) b > 0, √D = 0  ならば

  b + √D = b - √D = b > 0  ⇒  x = ±√b が存在する.

 このとき原点は等高線の外部にあり, この条件の下で y = tan‏θx は等高線への接線となる.

  これが成立する条件で特に |f| = h や θ の範囲を確認しておこう.満たされるべき条件を再掲すると,

  D = ( htan2θ + 2tanθ + h )( htan2θ - 2tanθ + h ) = 0

 0 ≦ θ ≦ π/2  ⇒  htan2θ + 2tanθ + h > 0

  ∴ 0 ≦ θ ≦ π/2, D = 0  ⇒  htan2θ - 2tanθ + h = 0

となる.変形して解いた粗筋は,

  tan2θ - (2/h)tanθ + 1 = 0

 ( tanθ - (1-√(1-h2))/h )( tanθ - (1+√(1-h2))/h ) = 0

 tanθ = (1-√(1-h2))/h  または  (1+√(1-h2))/h   

  ゆえに,

(p-5-1) 1 - h2 > 0  ⇒  h < 1 

 ゆえに, 前述の

(6-2-5-8-1)  h ≦ 1, 0 ≦ θ ≦ π/2  ⇒  0 ≦ θ ≦ π/4

の場合と全く同様な結論で良い.が, ここではわざとこのことを使わないでやって見よう.

  次が成り立つ.

 ((1+√(1-h2))/h)((1-√(1-h2))/h) = (1-(1-h2))/h2)) = h2/h2 = 1

  すなわち互いに他の逆数となっている.また,

  (1+√(1-h2))/h > (1-√(1-h2))/h > 0

 ∴ (1+√(1-h2))/h > 1, (1-√(1-h2))/h < 1

 ところが

(p-5-2) b > 0  かつ b = 1 - tan2θ  ⇒  tanθ < 1 

  ゆえに

(p-5-3) tanθ = (1-√(1-h2))/h, θ = tan-1(1-√(1-h2))/h  

 これが条件に適う傾きとなる.

(p-6) b < 0, √D = 0  ならば

 b + √D = b - √D = b < 0  ⇒  x は存在しない. 


  さてここで, さらに等高線の全体に応用できる簡単な原理を示そう.

 言わばこのような曲線がどのように膨らみ, 括(くび)れているかの評価方法を示す.

 この曲線がなめらかに膨らんだ楕円のような形なら, x 軸に平行な接線や, y 軸に平行な接線を持つはずである.

 このことは, 少し考えて見ればほとんど自明なことのように思えるので証明なしに結果だけを掲げておく.

(2-1-1) 等高線 |f| = Const. が y 方向に局所的に最大か最小の限界を滑らかに持つとき.

 ∂|f|/∂x = 0

となる.すなわち等高線 |f| = Const. の x での一次偏微分の値が 0 となる.

  言い換えれば, このとき x 軸に平行な接線(水平な接線)が引ける頂点となる.

  本例の場合.

 ∂|f|/∂x = (∂/∂x)( x4 + 2x2y2 + y4 - 2x2 + 2y2 ) 

  = 4x3 + 4y2x - 4x

  = 4x( x2 + y2 - 1 )

となる.すなわち,

 x = 0 ( y 軸 )上 と |z| = 1 ( 原点を中心とする単位円周 )上 の z で

 等高線 |f| = Const. の y の最大か最小値を持つ.

  それゆえ (1-1) で x = 0 を代入すれば,

 ( x4 + 2x2y2 + y4 - 2x2 + 2y2 = h2 - 1 )( x = 0 )

  y4 + 2y2 = h2 - 1 
 
  ( y2 + 1 )2 = h2

  ゆえに, 

(2-1-1-1) (x,y) = (0,√(h-1)),(0,-√(h-1)) 
 
  さらに x2 + y2 - 1 = 0 を (1-1) と同義な (1-3) に代入すれば 

 ( ( x2 + y2 - 1 )2 + 4y2 = h2 )  ( x2 + y2 - 1 = 0 )
  
  4y2 = h2

  ∴ y2 = h2/4, y = ±(h/2)

  x2 + y2 - 1 = 0  に  y2 = h2/4  を代入して,

 x = ±(√(4 - h2))/2

  すなわち x2 + y2 - 1 = 0 では,

 (2-1-1-2) (x,y) = (√(4-h2)/2,h/2),(√(4-h2)/2,-h/2),(-√(4-h2)/2,h/2),(-√(4-h2)/2,-h/2)

の四箇所で等高線 |f| = h = Const. は y の最大または最小値を取る.

(2-1-2) 等高線 |f| = Const. が x 方向に局所的に最大か最小の限界を滑らかに持つとき.

 ∂|f|/∂y = 0

となる.すなわち等高線 |f| = Const. の y での一次偏微分の値が 0 となる.

 言い換えれば, このとき y 軸に平行な接線(垂直な接線)が引ける頂点となる.

 本例の場合.

 ∂|f|/∂y = (∂/∂y)( x4 + 2x2y2 + y4 - 2x2 + 2y2 ) 

  = 4x2y + 4y3 + 4y

  = 4y( x2 + y2 + 1 )

となる.すなわち,

  y = 0 (x 軸)上でのみ y 軸に平行な接線が引ける.

  そこで (1-1) と同義な (1-2) で y = 0 を代入すると,  

 ( ( ( x + 1 )2 + y2 )( ( x - 1 )2 + y2 ) = h2 )  ( y = 0 )

  ( x + 1 )2( x - 1 )2 = h2

  x2 - 1 = h  または  x2 - 1 = -h

  ∴ x = ±√(1+h), x = ±√(1-h) ( 1 > h > 0 )

 すなわち y 軸に平行な接線が引けるところは,

 (2-1-2-1)  (x,y) = (√(1+h),0), (-√(1+h),0)  ( h > 0 )

  (2-1-2-2)  (x,y) = (√(1-h),0),(-√(1-h),0)  ( 1 > h > 0 )

となり ( 1 > h > 0 ) では四箇所ある.

 これは零点(-1,0),(1,0) を中心として二個の独立した等高線が原点対称に存在している為である.

(2-2-1) 等高線 |f| = Const. が y 方向に上下に括れているとき, すなわち上下に滑らかに凹んでいれば,

  ∂|f|/∂x = 0  かつ  ∂2|f|/∂2x < 0

  なぜなら, この様な頂点の付近では x 軸に平行な微小な接線成分が引けると仮定すると

 それらは自分より内部の等高線たちと交わると考える.

 すると自分の内部の等高線たちは自分と比べれば全て値の低い等高線たちである.

 その結果、二次偏微分の値が負となると考えれば良い.

 本例の場合, 以前に求めた ∂|f|/∂x は 

 ∂|f|/∂x = 4x3 + 4y2x - 4x = 4x( x2 + y2 - 1 )

 ∴ ∂2|f|/∂2x = 12x2 + 4y2 - 4

  = 4( 3x2 + y2 - 1 )

となる.それで,

(2-2-1-1) x2 + y2 = 1  ⇒  ∂2|f|/∂2x = 8x2

(2-2-1-2) x = 0  ⇒  ∂2|f|/∂2x = 4( y2 - 1 )

  それで等高線が上下に凹んでいる場合

(2-2-1-3) ∂|f|/∂x = 0 かつ ∂2|f|/∂2x < 0  ⇒  x = 0 ( y 軸 )上  かつ  -1 < y < 1

となる.

 すなわち |f| > 1 かつ |y| < 1 かつ y 軸上の頂点で等高線 |f| = Const. は上下に括れている.


(2-2-2) 等高線 |f| = Const. が y 方向に上下に膨らんでいるときは,

  ∂|f|/∂x = 0  かつ  ∂2|f|/∂2x > 0

  なぜなら, この様な頂点の付近では x 軸に平行な微小な接線成分が引けると仮定すると

  それらは自分より外部の等高線たちと交わると考える.

 すると自分の外部の等高線たちは自分と比べれば全て値の高い等高線たちである.

 その結果、二次偏微分の値が正となると考えれば良い.

  本例の場合, 既に求めた (2-2-1-1), (2-2-1-2) から, 上下に膨らんでいる頂点は,

(2-2-2-1) ∂|f|/∂x = 0 かつ x2 + y2 = 1  ⇒  ∂2|f|/∂2x = 8x2 > 0

(2-2-2-2) ∂|f|/∂x = 0 かつ x = 0 かつ |y| > 1  ⇒  ∂2|f|/∂2x = 4( y2 - 1 ) > 0
   
 すなわち原点を中心とする単位円周上と |y| > 1 となる y 軸上の頂点では上下に膨らんでいる.


(2-2-3) 等高線 |f| = Const. が y 方向に括れてもいないければ膨らんでもいないときは,

  ∂|f|/∂x = 4x( x2 + y2 - 1 ) = 0  かつ  ∂2|f|/∂2x = 0

  なぜなら, この様な頂点の付近では x 軸に平行な微小な接線成分が引けるが

  それらは自分より内部や外部の等高線たちとは交わらず自分自身に重なると考えられる.

 もう少し詳しく言えば ∂|f|/∂x が二つ以上の因数を持ち, その二つ以上で 0 になるからである.

 この様な場合 ∂|f|/∂x = 0 は高次の 0 であるとも見なされる.

  本例では, 既に求めた (2-2-1-1), (2-2-1-2) から, 括れと膨らみの臨界条件となるのは,

 (2-2-3-1) ∂|f|/∂x = 0 かつ x2 + y2 = 1 かつ x = 0  ⇒ ∂2|f|/∂2x = 4( 3x2 + y2 - 1 ) = 0

 これは ∂|f|/∂x = 4x( x2 + y2 - 1 ) = 0 となるための条件として

 原点を中心とする単位円周上にあること ( x2 + y2 - 1 = 0 ) と y 軸上にあること ( x = 0 ) 

の両者が満たされた為であると考えられる.

  実際,

 ∂2|f|/∂2x = ( ∂/∂x )( ∂|f|/∂x ) = ( ∂/∂x )( 4x( x2 + y2 - 1 ) )

と考えた場合に,

 ∂2|f|/∂2x = ( 4x( x2 + y2 - 1 ) )'

  = ( 4x )'( x2 + y2 - 1 ) + ( 4x )( x2 + y2 - 1 )'

  = 4( x2 + y2 - 1 ) + ( 4x )( 2x ) = 4( x2 + y2 - 1 ) + 8x2

  = 4( 3x2 + y2 - 1 )

となるから,

 ∂2|f|/∂2x = 4( 3x2 + y2 - 1 ) = 4( x2 + y2 - 1 ) + 8x2

であるとしても良い. そうすると,

 x2 + y2 - 1 = 0  かつ  x = 0  ⇒  ∂2|f|/∂2x = 0    

が言えている.( α(x) = 0  かつ  β(x) = 0  ⇒  (α(x)β(x))' = α(x)'β(x) + α(x)β(x)' = 0 )

  なおこのとき x = 0, y = ±1, u = -2, v = 0, h = 2 となる.

 さて, 今までで分かったことから推測すると等高線の形と個数の概略は,

(3-1) 0 < h < 1 ならば零点(-1,0),(1,0) を中心として独立した閉曲線が原点対称に一個づつ合計二個ある.

(3-2) h = 1 ならベルヌーイのレムニスケート曲線となり8字型に原点で交差する閉曲線である.

(3-3) 1 < h < 2 なら y 軸上で上下に括れた一個の閉曲線である.  

(3-4) h = 2 なら y 軸上で上下に括れと膨らみの臨界となる小判型の一個の閉曲線である.(臨界小判=勝手な命名)

(3-5) 2 < h なら y 軸上で上下に膨らんだ一個の閉曲線である.

(3-6) h ≒ ∞ なら w ≒ z2 となり f(θ) = θ* として θ* ≒ 2θ であるような回転放物面で近似される. 

と予想される.

 ここまでの議論は思いつきを取り止めもなく書き散らしてきた.

 それで以後ではこれらをもう少し整理し順序立てて書き直して見ることにしよう.


  中学二年生の頃、英語辞典で should を調べると "shall の過去形" となっていた.
 そして shall を調べてみると "未来形の助動詞" となっていた. そうすると、
 should は "未来形の助動詞の過去形" であることになる.??? (@_@) 何のことか訳が分からなくなってしまったw
 こんなことがあってから, 勉強の合い間にお笑いや音楽を聴いたり, 哲学みたいな本をちょっと読んでみたり
  詩とか俳句とか短歌とかを作ってみたりすることにした.
 こんなことをやっている内に少しは頭の風通しが良くなって、うまいコジツケを思いつくことがある.(筆者)

  我輩は公式である証明はまだニャい.(筆者)
                                                                                     (2007'09'21)

  ホームページ 十四の春に病み負いし あの頃の自分に 書いてみようか  (筆者)
                                                                                     (2007'09'23)
  モジュラー面 頭のコアで 金魚パクパク  (筆者)
                                                                                     (2007'09'24)
  モジュラー面 ( レモン汁ラーメン ) の作り方  

 チキンラーメンに茶さじ半分ぐらいのレモン果汁 ( 入れすぎない ) を落とすとさっぱりして美味しい.(筆者)


  f(z) = z2 - 1 と数学工作について

 本例で言うところのレムニスケート曲線

 ( x2 + y2 )2 = 2( x2 - y2 )

の右半平面の図形を x 軸を回転軸として回転した立体を考えレムニスケート回転体と呼んだとする.

 仔細は省略するが因みにこの回転体の最大半径は 1/2 である.

  また曲線の右端は (x,y) = (√2,0) にあると考えられる.

  そうすると, 図形は左の方で尖っている訳だから, この立体の重心は (x,y) = (√2/2,0) より右側にある. 

 そこで y 方向を √2 倍にして最大半径を 1/2 から √2/2 に拡大したもので改良した回転体を考え直す. 

 ( y 方向の拡大倍率はこれより大きくても良い.大きいほど安定するはずである.)

 すると, この改良した回転体の重心からの最短距離の点は図形の右端の (x,y) = (√2,0) になると考えられる. 

 この改良した回転体を均質な素材で作れば原点 (x,y) = (0,0) を真上にして立ち上がると考えられる.

  上手に作れば重りを使わない起き上がり子法師が作れるはずである.

 ( 実際にはまだ作っていないのでそんなにうまく出来るかどうかは疑問ではあるけれども.

   ベルヌーイのレムニスケート曲線の一般形は任意の実数を a として,

 ( x2 + y2 )2 = 2a2( x2 - y2 )

である.しかしながら, 弧長を線積分で求める場合などでは既約な標準形として, 普通は

  ( 2 + 2 )2 = 2 - 2  ( さらに極座標式に変形して r2 = cos2θ )

が用いられている.これを標準形と呼んでおく.( x = a√2, y = a√2 とおいて式を直すと後の式が出る. )

 標準形では右辺の係数が 2a2 ではなく 1 となる.この結果 y の最大は 1/(2√2), x の右端は 1 となる,

 標準形では我々の a = 1 の場合のレムニスケートと比べて 1/√2 の長さになっている.)

 あるいは |f| > 1 のカッシーニの卵形曲線で亜鈴 (アレイ) 形をした適当なものを選んで回転体にすれば

  一種の転がりおもちゃのようなものが作れると思える.

 あるいは |f| の曲面の切断面をケント紙で印刷して貼り合わせれば鞍型放物面の立体模型が作れる.

 二箇所の零点 (1,0),(-1,0) で尖った曲面が得られる.( これは実際に作ったことがある.)

 また等高線 |f| = Const. と等傾線 arg f = Const. を z 平面上で重ね描きしたモジュラー地図を作図

して見るのも興味深い.

 こんなわけで解析関数の概形が造形的に思いがけない閃きを暗示してくれる場合も少なくない.

  しかも解析関数を何でも良いから単に例示するだけなら意外に簡単である.

 通常の実数関数 У = f(Х) を取り w = f(z), z = x + iy, w = u + iv と再定義するだけでよい.
 
                                                                                              (2007'09'29)

  あまがえる トマトの赤に 乗れている 

  おばあちゃん 優しいねんけど しっかりもん

  眩しさや 磐をも射抜く 蝉の声   (筆者)
                                                                                     (2007'09'30)
 
§7.f(z) = z2 - 1 のモジュラー地図の作図法

 等高線 |f| = Const. と等傾線 arg f = Const. を z 平面上で重ね描きしたものをモジュラー地図と呼ぼう.

 モジュラー地図を構成する二種類の曲線たち等高線や等傾線は実際に作図するとなると意外に簡単である.

 しかも両者はほぼ同じ共通の原理で作図し得る.

 その共通の原理とは以前に述べた逆写像 z = f-1(w) である.

 本例において,

 f(x+iy) = u + iv 

と見た場合.

 u = x2 - y2 - 1, v = 2xy

となっていた.ここから,

(7-1-1) x2 - y2 = u + 1 

(7-1-2) 4x2y2 = v2

(7-1-3) ( x2 + y2 )2 = ( u + 1 )2 + v2

(7-1-3') ( x2 + y2 )2 = h2 + 2u + 1  ( h = |f| )
 
(7-1-4) x2 + y2 = √((u+1)2+v2)

(7-1-5-1) x2 = ( u+1 + √((u+1)2+v2) )/2

(7-1-5-2) y2 = ( -(u+1) + √((u+1)2+v2) )/2  ( ≧ 0 )

(7-1-6-1) x = ±√(( u+1 + √((u+1)2+v2) )/2)

(7-1-6-2) y = ±√(( -(u+1) + √((u+1)2+v2) )/2)

などが次々と得られる.

 等高線の場合は (7-1-6-1),(7-1-6-2) から計算した x, y から符号の違いを組み合わせて

(7-2) 等高線の有効座標 (x,y), (x,-y), (-x,y), (-x,-y)

が全て z 平面上で有効である.

 しかし, これに反して等傾線の場合は v = 2xy の符号に応じて

(7-3-1) v < 0 の場合の等傾線の有効座標 (-x,y) (第二象限), (x,-y) (第四象限) 

(7-3-2) v = 0 の場合の等傾線の有効座標 x = 0 ( y 軸 ), y = 0 ( x 軸 ) 

(7-3-3) v > 0 の場合の等傾線の有効座標 (x,y) (第一象限), (-x,-y) (第三象限) 

となる.

 さらに等高線については ∂|f|/∂y = 0 から閉曲線の左右の端を予め求めておくと良いと思える.

 同様に等傾線についても ∂(arg f)/∂y = 0 から双曲線の原点に近い端を予め求めておくと良いと思える.

  仔細は省略するが等高線は w の上半平面を z の第一象限に対応させると基本部分空間が作図できる.

 後にこれらを x 軸で下半平面に折り返し右半平面を作図し y 軸で折り返して左半平面を作図する. 

 同様に等傾線は w の始線 ( 0* rad ) から時計回りに一周させたものを

  z の右半平面で反時計回り ( -π/2 ~π/2 rad ) に対応させると基本部分空間となる.

  このように取ることで w の下半平面 ( v < 0 ) を z の第四象限 ( xy < 0 ) に対応させ,

  w の上半平面 ( v > 0 ) を z の第一象限 ( xy > 0 ) に対応させている.

  これらは z の右側の零点 (1,0) を通っている, 後にこれを原点で点対称に回転させ左半平面を作図する. 

(7-4) |f| = h であるような等高線の z 平面上での作図.

 w 平面上において原点を中心とする半径 h の円周を考え, 等高線 h と呼ぶ.

 さらに上半平面 (v≧0) の半円周上で (u,v) = (h,0),(0,h),(-h,0) を考え各象限の区切りとする.   

  第一象限 (u>0,v>0) で等高線 h の四半円周上にほぼ円周等分に数個の点たちを取り, 同様に, 

  第二象限 (u<0,v>0) で等高線 h の四半円周上にほぼ円周等分に数個の点たちを取る. 

 これらを逆写像して z 平面上の第一象限 (x≧0,y≧0)の部分等高線を描く.

 後に対称性を応用して閉じた等高線を復元する.

(7-5) arg f = θ* であるような等傾線の z 平面上での作図.

  w 平面上で v = tanθ*・u となるような原点を通る一次直線を考え, これを等傾線 θ* と呼ぶ.

 (1) tanθ* > 0 の場合.

  w 平面上の第三象限 (u<0,v<0) で等傾線 θ* 上にほぼ等間隔に数個の点たちを取る.

 さらに第一象限 (u>0,v>0) で等傾線 θ* 上にほぼ等間隔に数個の点たちを取る.

  (2) tanθ* < 0 の場合.

 w 平面上の第ニ象限 (u<0,v>0) で等傾線 θ* 上にほぼ等間隔に数個の点たちを取る.

 さらに第四象限 (u>0,v<0) で等傾線 θ* 上にほぼ等間隔に数個の点たちを取る.

 (3) tanθ* の符号とは無関係に. (1),(2) の点たちを z 平面上に逆写像する, 

 (3-1) v > 0 ならば z の第一象限 (x>0,y>0) に写る. 

  (3-2) (u,v) = (0,0) は常に (x,y) = (1,0) に写る.

  (3-3) v < 0 ならば z の第四象限 (x>0,y<0) に写る.

 こうして z の右半平面の等傾線を描いて後, 原点対称に回転して左半平面を復元する.


  わっ・・・我が部屋で 子ねこが 子ねずみ 飼っていた (><;)!! (+_!) (^&^);  (筆者)
                                                                                     (2007'10'03)

  円に内接する四辺形には対角線が三本ある.
 四次方程式の代数的解法が分かった人はこの意味の正しさも分かると思う.(筆者)

  ネコ戦士 こないだヤモリ 今日トカゲ (筆者)
                                                                                     (2007'10'05)
 立方体を平面で切った切口の図形が七辺形以上にならないのはなぜか? (答えは明日)
                                                                                     (2007'10'07)
  (昨日の回答)
  切口の多辺形の一辺は切り取られる立体の一つの面にのみ属していたと考えられる.
 ゆえに切口の図形が七辺形以上であるためには切り取られる多面体は少なくとも七面体以上でなければならない.
 ところが題意から切り取られる多面体である立方体は六面体であるとも言える.
 ゆえに立方体を平面で切った切口の図形が七辺形以上になることはない.(筆者)
                                                                                     (2007'10'08)

 (特別コラム)†円に内接する四辺形の対角線の求長.

 円に内接する四辺形には対角線が三本あることについての詳しい説明をしておこう.

 四辺形の四辺の長さをそれぞれ z1,z2,z3,z4 とする.

 内接円の中心を O としてこれら四辺が既に円 O に内接しているとする.

 このとき四辺の並べ方(順列)を変えてもまだ円 O に内接し, しかも四辺形の面積も不変であることに注意.

 いま図に現れている対角線の長さをを K, L とし,

 z1,z2 が向かい合った二辺で z3,z4 も向かい合った二辺であれば
 
 プトレマイオス(トレミー)の定理から,

 KL = z1z2 + z3z4 

となる.

  そこで隣り合った二辺, 例えば z2,z3 を入れ替えると以前と同じ円 O に内接して四辺形の面積も同じであるが, 

  しかし対角線の種類は例えば L,M というように K と入れ替わって, 新たに対角線 M が現れる.

 さらにプトレマイオスの定理から,

 LM = z1z3 + z2z4 
  
が成立する.さらに今度は z3,z4 を入れ替えれば,

  MK = z1z4 + z2z3

となる.

 ここで以後の議論のために α,β,γ を取って,

(1-1) α = KL = z1z2 + z3z4 

(1-2) β = LM = z1z3 + z2z4 
 
(1-3) γ = MK = z1z4 + z2z3 

としておく.

 さてここで, 改めて K,L,M の長さを求めることを問題としてみよう.

(2-0) α/β = (KL)/(LM) = K/M, γ = MK から

(2-1) K = √(γα/β)

となり, 同様に

(2-2) L = √(αβ/γ)

(2-3) M = √(βγ/α)

として求めることができる.

 ここで円に内接する四辺形の対角線は形式的には三本あることの発見が解決の重要な鍵となる.(黄色い烏の子)
 
 このように α,β,γ 三文字の対称式が z1,z2,z3,z4 四文字の対称式となる.

  このことは四次方程式を代数的に解く場合にも重要となる.(筆者)
                                                                                     (2007'10'09)
 †四次方程式の代数的解法の要約

 代数的に解くと言うからには次のことが守られねばならぬと考える.

(0-1) 未知数 z を解く問題であること.

(0-2) 与えられた係数に四則と冪根(べきこん)演算を有限回施して未知数を求めなければならない.

(0-3) 扱う数体は有理数体の有限次拡大体で複素数体の部分体までとする.

(0-4) 1 の原始根にあたる複素数は初めから無条件で与えられるものとする.

 例えばこの規則に違反する未知数の問題としては無限等比級数の求和, 有限体上の擬代数が挙げられる.

 一般に z をガウスの複素数として解くべき四次方程式を

(1-0) z4 - p1z3 + p2z2 - p3z + p4 = 0

 p1,p2,p3,p4 は基本対称式と呼ばれ, ここでは有理数とする.

(1-1) p1 = z1 + z2 + z3 + z4

(1-2) p2 = z1z2 + z1z3 + z1z4 + z2z3 + z2z4 + z3z4

(1-3) p3 = z1z2z3 + z1z2z4 + z1z3z4 + z2z3z4

(1-4) p4 = z1z2z3z4

  さてこれを解くには前節で述べた α,β,γ を用いて次のような三次の補助方程式を立てる.

(2-0) ( t - α )( t - β )( t - γ ) = 0

  これを展開すると,

(2-1) t3 - ( α + β + γ )t2 + ( αβ + βγ + γα )t - αβγ = 0

  これらの係数は p1,p2,p3,p4 の有理式で表せる.

 以下で必要な式の変形を示す.

(3-0-1) z12 + z22 + z32 + z42 = p12 - 2p2

(3-0-2) z12z22z32 + z12z22z42 + z12z32z42 + z22z32z42 = p32 - 2p2p4

(3-1-1) α + β + γ = p2

(3-1-2) αβ + βγ + γα = p1p3 - 4p4

(3-1-3) αβγ = ( p12 - 4p2 )p4 + p32 

  ゆえに

(2-2) t3 - p2・t2 + ( p1p3 - 4p4 )t - (( p12 - 4p2 )p4 + p32 ) = 0

を解けば良い.三次方程式は代数的に可解なので α,β,γ が求まる.

  これより後は α,β,γ のうち任意の一つを取る.例えば α を取るとする.

(4-1-0) α = z1z2 + z3z4 とする.

(4-1-1) u = z1z2, v = z3z4 と置くとする.

(4-1-2) p4 = z1z2z3z4 = uv

(4-2-0) ( t - u )( t - v ) = 0 という補助方程式を解くことを考える.結局,

(4-2-1) t2 - αt + p4 = 0 を解けば良い.  

 これを二次方程式の代数的解法によって解くことができる.こうして (4-1-1) はもはや既知となる.

 さて p3 を変形すると次の重要な関係を得る.

(5-1-0) p3 = z1z2z3 + z1z2z4 + z1z3z4 + z2z3z4

= z1z2( z3 + z4 ) + z3z4( z1 + z2 ) 

  ところが,

(5-1-1) z3 + z4 = p1 - z1 - z2

(5-1-2) z3z4 = α - z1z2 = α - u

 ∴ p3 = u( p1 - z1 - z2 ) + ( α - u )( z1 + z2 )
 
 ∴ p3 - p1・u = ( α - 2u )( z1 + z2 )

(5-1-3) z1 + z2 = ( p3 - p1・u )/( α - 2u )

  この式により二根の積から二根の和が有理演算だけで求められる.すなわち代数拡大が不要である.(重要!!) 
 
 そこで,

(5-2-0) ( t - z1 )( t - z2 ) = 0 という補助方程式を解くことを考える.結局,

(5-2-1) t2 - (( p3 - p1・u )/( α - 2u ))t + u = 0 を解けば良い.

 この式は二次式の代数的解法によって解ける.

 ゆえに z1,z2 が代数的に解ける.同様に z3,z4 が代数的に解ける.

  こうして四次方程式は代数的に解ける.(筆者)
                                                                              (2007'10'11)
 ”方程式”を漢字の意味から考えてみると, ”方”は”計る(計算する)”の意味, ”程”は ”数量”の意味,
 ”式”は”順序”の意味だと考えてみると”数量を計算する順序”を意味していると考えられる.
  これは現代の”プログラム”や ”アルゴリズム”の意味にも通じるものがあり, 
  単純な英訳の "Equation" より優れていると思える.(筆者)
                                                                                     (2007'10'21)

  私はポアンカレ予想は間違っていると思う.( たとえ正しいことを誰かが証明しているとしても )
  なぜなら宇宙全体が解析関数のような形式で記述できるとして, 局所的には特異点を持ち得る.
 新しい宇宙の湧き出し点のようなものが存在していた場合そこは簡単に非正則点に成り得るからである.
 すなわち, 全空間的に正則であると考えることには明らかに無理があると思える.
  もっと簡単に言えば 「 宇宙には絶対に穴がある 」 と私は信じている.
  例えば 「 ブラックホール 」 などは明らかに「 ポアンカレ予想 」 にとって都合の悪い存在であろう.
 しかもそのような存在はポアンカレの時代にはまだ知られていなかったのではなかろうか?

  ガロアの夢 群論と微分方程式 久賀道郎 日本評論社 にある有尾人の例え話を拝借すれば,
 
 尻尾を持つ有尾人がいて, 自分の家の柱に尻尾の先を括りつけて宇宙の庭を一周して帰ってくるとする.
 尻尾は自由にいくらでも伸び縮みするものと考える.
 さて家に帰り着いて, 自分の尻尾を手繰り寄せたとして,無事に手繰り寄せられるならば
 「 ポアンカレ予想 」 は正しいことになる.
 しかし, 例えば, 微分の出来ないような非正則点は無限に長い柱が立っていることに相当するので, 
 尻尾はこの柱に絡みつくことになり, 安全に手繰り寄せることが出来ない.
  このとき 「 ポアンカレ予想 」 は間違いとなる.そして私は後者の立場を信じる.
 
  宇宙の空間に微小な空洞が一つあるだけでも厳密には三次元球と位相同形であるとは言えまい.
 「 ポアンカレの予想 」 などは私には不自然で不健全な問題としか思えない.
  ( しかし NHK の同名の番組自体はとても面白かったのでまた類似の番組を放送して欲しい. )
                                                                                     (2007'10'25)

  机の上ぐらいの空間の大きさでいうトポロジーと宇宙空間全体のような大きさでいうトポロジー
を区別しないで扱っていいかどうかもはなはだ疑問である.
 机上トポロジーは全ての点や位置が同時にそこにあると考えていいかも知れない.( 空間的かつ時間的同期性 )
  しかし宇宙空間の何億光年も離れた二点を近づけたり離したりするのに机上トポロジーが適用できるかどうか ?
極めて疑問である.
  論者が始から終わりまで明確な問題を明確な方法で議論して行けるかどうかも定かでない.
 このような特有の曖昧さを持つ問題を私は不自然で不健全な問題と考える.
 これはポアンカレ特有の HATTARI であると思う.(筆者)

 さよならは HATTARI のあとで ( ガロアの夢 ∞週 久賀道郎 )

  寺田寅彦はアインシュタインの一般相対性の理論( 光ではなく重力の相対性 ) において、アインシュタインが 「 自分
の理論が理解できるのは世界中で1ダース程しかいない 」 と言っていたのは自慢というより不満なのだと述べている.
  自分の作った理論を自分自身があまり良く把握できていなかったのではないかという意味のことを述べている.
 そしてアインシュタインの物理学がニュートン物理学を詳細に説明してみせたように
 未来のアインシュタインが現代のアインシュタインの理論の意味を明快に説明してみせるだろうと述べている.
 「 ポアンカレ予想 」 にも同様に詳しい解説者が必要である.(筆者)
                                                                                     (2007'10'27)

  ◇ ポアンカレが真に予想したこと.

 ポアンカレ予想を3次元多様体に限った言い方で分かり易く述べれば, 
  「 3次元閉多様体が単連結のとき,3次元球面と同相になるであろう.」 ( 現代数学小事典:寺坂英孝編:講談社 )
ということらしい.
  しかし,ここで私は,こんなこと証明する必要があるのか ? と考える.むしろ,
 「 ポアンカレ予想が初めから正しいと仮定して何が云えるかを研究することがポアンカレの数学なのだ.」
と思った.
 これは丁度これから整数論をやろうと云う人が
 「 1は整数である 」 ことを証明する必要があると考えるのとどこか似ていないだろうか ?
  初めから無条件で「 1は整数である 」 としておくだけで良いのではないのか ?
 ポアンカレがポアンカレ予想を証明しなかったとすれば,それこそが彼が天才的な証拠なのではないか ?
  ポアンカレが本当に予想したことは
 「 私が掲げた予想はある意味で直感や経験に頼れば誰にでも分かることである.
 しかしながら,これを従来の記号論理や厳密な証明に頼っていては永久に目途が立つまい.」
と考えていたのではなかろうか ? 
 だから本人は敢えて証明しなかったし,証明できるとも思っていなかったのではないだろうか ?
 実際,ポアンカレ予想は約100年間もの長きにわたって誰にも解けなかったではないか.
  ポアンカレ予想はポアンカレ数学の公理なのだと私は思いたい.
 しかし 「 フェルマー予想 」 が整数論を発展させたように数学のあらゆる分野において 「 予想 」 と称する
 一流の数学者による一種の HATTARI がその方面の分野の若い研究者や数学愛好家たちを刺激し奮い立たせ
 むしろ豊かな実りある立派な一分野に育て上げるだろうことは想像に難くない.
 トポロジー数学はポアンカレ予想の解決という大目標によって発展したと言っても過言ではなかろう.(筆者)

                                                                                     (2007'11'10)
  ◇ ローカル版めっちゃクソやすいトポロジーの問題

 西洋のコーヒーカップは輪ぁのような取っ手が付いてるんで単連結でないとすんねん.
 これと違ごて日本の湯飲み茶碗は輪ぁが付いてないんで単連結であるとすんねん.
  ほんで穴開きや離れ小島も単連結でないとすんねん.
 大という字みたいに周りに枝が出てても単連結であるとすんねん.

 さて次の問題を解いてんか.

 (1-1) 単連結なアルファベットの小文字を全ぶ書いてんか.
 (1-2) 単連結なアルファベットの大文字を全ぶ書いてんか.
 (1-3) 単連結なアルファベットの小文字と単連結なアルファベットの大文字とは読み方で一致するかぁ ? 
 (2-1) 単連結なひらがなを全ぶ書いてんか.
 (2-2) 単連結なカタカナを全ぶ書いてんか.
  (2-3) 単連結なひらがなと単連結なカタカナとは読み方で一致するかぁ ? 

◇ ポアンカレ予想が成立しないかも知れないような空間の例.

 例えば3次元多様体や3次元球面の意味を従来の定義に従うとして,
 単連結の意味だけを少し変更して,表面が一つに連なっている場合に単連結であると再定義したとする.
 すると,通常は同値にならないはずの球面と輪環面がどちらも単連結となって同値となる.
 しかし,輪環面は自分の表面の一点に絞れないが球面は自分の表面の一点に絞れるから両者は同相ではない.
 よってこの場合, 「 単連結な3次元閉多様体は3次元球面と同相である 」 は偽となる.
  ( 実際の n 次元多様体の考え方に従えば, 球面や輪環面は3次元ではなく2次元閉多様体に属しており,
 筆者が言ったような矛盾は起こらないようになっている.しかし多様体の次元も再定義できるとすれば
 この例のような場合も起こり得ると考えられる.)
  ( ◇ 物干し竿の単連結の詭弁( 屁理屈 ) ( 筆者考案 )
  一本の物干し竿に通して干せるものを単連結であると言ったとする.
 ここに浮き輪( 輪環面 )とビーチボール( 球面 )とがあったとする.
 浮き輪は物干し竿に通せるがビーチボールは物干し竿に通せない.
 そうするとこの例では,
 「 単連結な多様体が球面と同相であるとはいえない 」 
  ことになっている.
  こんなことばかりを連想してみるとポアンカレが主張するような理屈だけが通る理屈でもあるまい.ho^5
  しかもこのような屁理屈の応酬を論理記号でやった日にゃ屁理屈どころか団子理屈になってまう.he^5 )

 このように用語の定義を少し変えるだけでポアンカレ予想が偽となる空間が存在すると考えられる.
 結局のところ
 (1) n 次元閉多様体という用語の定義
 (2) 単連結という用語の定義 
 (3) n 次元球面という用語の定義
  (4) 同相という用語の定義
  (5) 許される基本演算の定義
と,
  ポアンカレ予想が真である為の必要十分条件が解明されて初めてポアンカレ予想が解決されたと云えよう.
  私の屁理屈の工夫の原理は以下のようである.
 まず,n 次元閉多様体の集合を考える.
 しかしながら単連結という用語と同相という用語だけはまだ未定義であったとする.
 n 次元閉多様体の集合の中から球面を取りこれを Q とする. 
 さらに Q とは異なる適当な閉多様体を選んで X としておく.
 そして Q と X が単連結の集合に属するように単連結を定義する.
 さらに Q と X が同相にはならないように同相を定義する.
  ( あるいは先程の物干し竿の屁理屈のように X は単連結だが Q は単連結ではない様にしておいても良い.)
 たったこれだけの仕掛けで,
 「 任意の単連結な n 次元閉多様体は n 次元球面と同相である 」 とは言えなくなる.
 実際にはこの様な単連結や同相の考えの下で解かなければならない応用問題も存在すると考えられる.
 ( 何を単連結と考え何を同相と考えるかは現場の応用の問題である.
 全ての現場で周回積分の同値性を問題としているわけでもない.)
 そしてこの様な不正が起こらないように単連結や同相といった用語を定義しなければならないとすれば,
 先に述べた必要十分条件の考察が応用的にも理論的にも必要となるのではないだろうか ?
  そして,そして,そして,・・・, かなり漠然とはしているけれども
 その二つの異なる世界の区別のための必要十分条件こそが ・・・・・・・・・
 初めに掲げられたポアンカレの予想でいう命題
 「 任意の単連結な n 次元閉多様体は n 次元球面と同相である 」
という主張そのものではないだろうかと私は考える.
  言い替えればこの命題が真となるように各々の用語( 自由項変数 ) を決定しなければならないと考える.
 このような命題を一般に ( 自由項変数の間の ) 関係公理と言う.
 従って私はポアンカレ予想はポアンカレのトポロジー公理系における関係公理に相当するのだと考える.
 ポアンカレのものとは多少異なる独自のトポロジーの数学であっても大なり小なりこの様な類似の関係公理を
 置くことだけは必要であると私は考える.
 それゆえ,ポアンカレ予想をこのような関係公理にあたると見なした場合に
 他の公理という入り口からは証明という廊下伝いにはやって来れない独立した入り口となるのではなかろうか ?
 もっと簡単な入り口と置き換わらないかと考えるに詰まるところこれが最も簡単なのではあるまいか ?
  ともかくもポアンカレが熟慮に熟慮を重ねた末に選んだ入り口に違いない.
 
 例えば A では命題 P が真で B では命題 P が偽であったとする.
 K は A と B を包含しているとする.
 このとき K の中から P が真であるとか偽であるとかが一方的に言えるならば矛盾である.
 しかも A と B の区別に P と同値な原理自体が用いられているとする.
 この様な場合に命題 P は決定不能になるのだと思う.
  この場合に決定不能であることは相反する原理の保存という意味からすればむしろ自然なことである.
 自然界は相反する二つ以上の原理が存在している場合に決定不能という手段でこれを守ろうとするのである.
 こんな場合に肯定的な証明にせよ否定的な証明にせよそのどこかに誤りを含んでいると見なすべきである.
 かつてこの様な命題 P の例に平行線公理があったのである.
 そしてポアンカレ予想の成立しない空間の存在がポアンカレ予想の決定不能を暗示していると私は考える.
 従ってポアンカレ予想は一方的に肯定したり否定したりできないはずであるし
 応用的にもしない方が良い.そんなことすれば応用範囲が狭くなるだけのことである.
 ( 例えば太陽電池パネルの折り畳み問題を考える場合に一つの面に広げられるならば単連結なのであって
 必ずしも周回積分の同値性で考えるわけでもない.)
 ポアンカレ予想は他のどの原理からも導けない独立した原理なのではないのかと私は考える.
 それゆえまた 「 決定不能 」 なのではないかとも考える.
 
  †鍵のパラドックス( 筆者考案 )

  ある部屋 R があって,その所有者を C とする.
 部屋 R は鍵 P で施錠されているとする.
 しかもこの世界のどこに行っても鍵 P を製造できるのは部屋 R の中に限るとする.
 そして世界中のどこにもまだ鍵 P が存在していないとする. 
 C は不幸にも部屋 R の外に締め出されているとする.
 このとき C が「 自分は部屋 R に入って鍵 P を製造した 」 と言ったときにその陳述を真とみなし得るか ?
 同様に, 
  未解決の命題 P があって P が真であるという証明をしようとしたとする.
 それをするのに R という分野の中に入ってその証明を完成したと仮定する.
 ところが R に入るために暗黙の内に P が真であることがこっそり使われていたとする.
 このときこの証明が真であると言えるだろうか ?

 ( ここでゲーデルの不完全性定理が真であるとすれば,「 ポアンカレ予想 」の証明は
 一種の「 自己言及 」に当たるので証明出来ないのではないかというのが私の「勘」である.
  部屋の外に出ればどの部屋もそれなりに正しく見えるので一つの部屋だけが特に正しいとは言えない.
 部屋の中に入れば部屋自身の正しさを云うのは自己言及になるので否定も肯定もできない.
 こうしてポアンカレ予想は否定も肯定も出来ない決定不能命題となる.というのが私の考えである.)

 数学の証明は証明したと自負する人がその証明を簡単にして万人に理解させる責任がある.
 ロシアのある数学者がポアンカレ予想を解いたという話だけれども,その際に古典解析学が応用されたという.
 しかし,それでは単に古典解析学の空間がポアンカレ予想が真となる空間であることが証明されたにすぎない.

  ロシアの数学者の証明が 「 決定不能証明 」 だと言うのなら私は疑いも無く素直に受け入れられたと思う,
 しかし 「 肯定証明 」 だというのだからどうも受け入れ難い.
 「 決定不能証明 」 なら「 ポアンカレ予想 」 を独立した原理であると見なして良いだろうが,
 「 肯定証明 」 されてしまえば 「 ポアンカレ予想 」 が肯定証明に用いられた原理に従属してしまうことになり,
 「 ポアンカレ予想 」 の証明というより摩り替えのように思われて, それがどうも残念である.

 「 ポアンカレ予想 」 が化合物であったならば, 元素に分解することが証明にあたるであろう.
 しかし,もし 「 ポアンカレ予想 」  が元素であったならば,もはや元素に分解できないから証明もできない.
 そして私は 「 ポアンカレ予想 」 は化合物というよりは,むしろ元素であると考える.
 だから 「 ポアンカレ予想 」 は証明できないというのが私の主張である.
 しかし,策が全く無いわけでもない.
 「 ポアンカレ予想 」 に今風な言い方と古風な言い方とがあった場合に,
 古風な言い方で今風な言い方を,悪く言えば摩り替える,良く言えば翻訳するのである.
 そしてロシアの数学者のやった 「 ポアンカレ予想 」 の証明というのはこの様なことではないのかと想像する.
 これは証明しようとする命題が公理的な場合には,むしろ致し方のないことなのではあるまいか ?  

  例えばユークリッド幾何学で,
 P:「 二本の平行な直線は交点を持たない 」 
という命題 P は平行線公理と呼ばれて一般には証明出来ないことになっている.
 しかしこれでも証明紛(まが)いが過去において全く無かったわけでもない.
 例えば有名な過去の出来事としてルジャンドルの証明というのがあったのである.
 Q:「 三角形の内角の和は二直角である 」
という命題 Q から,極めて巧妙な論法によって,
 Q ⇒ P 
が言える.そしてその証明のどこにも間違いは無い.
 なら,それでいいのではと思ってしまうが,実は良くない.
 P ⇒ Q
もまた言えてしまうからで,
 共食いというべきか,堂々巡りというべきか,鶏が先か卵が先か,になっていて良くない.
 これでもまだ,
 P ⇔ Q
とやればりっぱな定理に成り得る.
 ともかくルジャンドルの功績は平行線公理のより実用的な代用品を発見したところにあると言えそうである.
 ポアンカレ予想も,どちらかと言えば公理か公理に近いものではないかと思う.
 たとえポアンカレ予想に向かってそれより高い所から滑り降りて来れるとしても,その落差は知れていると思う.    
 公理や準公理はどちらにせよ摩り替えと言うか代用品というかそんなものしか有り得ないのではないかと思う.
  だからダメ押しの意味で
 P ⇒ Q か それとも P ⇒× Q なのか
をはっきりさせておくことは重要であると思える.
 証明とは上位の事実(原因)から下位の事実(結果)を導くことであると考えられる.
 そうするとこれらの事実関係の最上位にあるものだけは証明できないことになる.
 そういうものは結局のところ公理にしておく以外になかろうと思われる.
 そして恐らくポアンカレ予想はそれぐらい上位にあると考えて良いのではないのかと思う. 
  頂上より高いところには上がれない.

 ここで少し別の卑近な例を挙げる.
 「 x2 + x + 1 = 0 は整数解を持たない 」
という命題を考える.
 これは実際、ガウスの複素数のような数体上では真である.そこでは与式の根は,
 -1/2 + i√3/2, -1/2 - i√3/2
となり,確かに整数解ではない.
 ( 後にガウスは代数的整数を定義して,この様な複素数を代数的整数であるとしたのではあるが.)
 しかし,ここで
 「 0 とは何か ? 」 
を再定義するだけで与式は簡単に整数解を持ち得る.
 与式は,3 の倍数を 0 と考えれば 1 を整数解(重解)に持つ.
 また p が素数で p = 6k+1 となるようなときは二つの異なる整数解を持ち得る.
 例えば p = 7 なら 2 と 4 を p = 13 なら 3 と 9 を p = 19 なら 7 と 11 を整数解に持っている.
 この様な p を一般に体の標数という.従って上の命題は
 「 x2 + x + 1 = 0 は標数 0 の体上では整数解を持たない 」
と云えば真となる.しかし標数を伏せておけば与えられた命題は真にも偽にも成り得る.
 あるいは平たく言えば 0 をどう定義するかによって命題が真にも偽にも成り得る.
 さて,ここで,この項の初めのポアンカレ予想の問題に帰るならば,
 n 次元閉多様体の意味や n 次元球の意味が従来通りであったとしても
 「 単連結とは何か ? 」 
の意味をどう定義するかによってもポアンカレ予想の指す命題が真にも偽にも成り得るのではないか ?
  ( 言い替えれば,ポアンカレ予想を少し変更して問題を解かなければならない応用も存在し得るということである.)
 かつて平行線公理の証明が幾多の著名な数学者たちによって試みられ多くは後に誤りであることが判明したりもした.
 結局,非ユークリッド空間の存在とそれらの間の双対性や判別法の発見によって
  一応,平行線公理の問題は終結を迎えるに至った.
  簡単に云えばユークリッド空間の用語を用いて非ユークリッド空間のモデルが作れることが分かっている.
 このことからユークリッド空間だけが真で,非ユークリッド空間が偽であるとは言えない.
  言い替えれば平行線が交わらないことの証明は不可能であると言える.  
 しかもこのモデルを始めて示して平行線公理の不可能証明をしたのは他ならぬポアンカレ自身なのである.
 ( 数学雑談「平行線の話」:高木貞二:共立出版 参照 ) 
 だとすればポアンカレが自身のポアンカレ予想を敢えて証明しなかった理由もそれとなく頷けよう.
 ポアンカレ予想もこの平行線公理の問題と同様なのではあるまいか.
 これが真とも偽とも言い難いのは非ポアンカレ空間の存在とそれらの間の双対性や判別法といったような研究が
 まだ充分には進んでいないからではあるまいか ?
 平行線公理の場合と同様に,もしポアンカレ空間の用語を用いて非ポアンカレ空間のモデルが作れるとすれば,
 前者だけが真で後者が偽であるとは言えなくなる.
  近い将来においてポアンカレとヒルベルトを兼ね備えたような天才的な大数学者が現れたときに,
  ポアンカレ予想は満足の行く形で決着を見るのではないかと私は予想する.
 
 ポアンカレ予想の成立する空間をP, ポアンカレ予想の成立しない空間をP-としたとき
 Pの用語でP-のモデルが作れると私は予想する.
  だから私はロシアの数学者の証明は間違いであると思う.(筆者の予想)

  平行線の公理は正しいと信ずる人はそれを正しいと信じて差し支えない.信ずるのは宜しいが,それを証明せん
と試みるならば無効果に終わらざるを得ないことを証明するのが本話の目的であったのである.(高木貞二)

  異なる部分の思わぬ接触からこそ科学の進歩が起こるのである.(ポアンカレ)  
                                                                                     (2007'11'13)
  ◇ ポアンカレ予想の述べ方について.
  例えば,
 初めからポアンカレ予想が自明に成立するようなミニ空間を作っておく.( 悪く言えばデッチ上げておく.)
 ここではポアンカレ予想が真であることが比較的たやすく言えるとする.
 果たしてこのような証明をポアンカレ予想の証明と呼べるだろうか ?
 こんなことを考えてみれば「 ポアンカレ予想が解決した 」 という言い方は不正確であると思う.
 少なくとも,これを次の様に改めるべきではないのか.
 懸案となる数学空間を ℱ とする.例えばこれを古典的な複素解析学の空間に取って良いとする.
 このとき,
 「 与えられた数学空間 ℱ ではポアンカレ予想が真であることが証明された.」
というべきである. 
 あるいは,この ℱ を我々の住んでいる宇宙空間であるとした場合には,
 「 我々の住む宇宙空間 ℱ ではポアンカレ予想が真であることが示された.」
というべきである.
 これを一律に
  「 ポアンカレ予想が真であることが証明された.」
と言えば誤解が生じる.
 なぜならポアンカレ予想が成立しないような偽空間をいくらでも仮想的には作り得ると考えられるから.
 そこで大事なことはどんな空間 ℱ がポアンカレ空間的であるか無いかという様なことである.

  例えば過去に代数学の基本定理の証明を本稿で取り扱ったことがある.
 自明な数体を標数 0 の数体に限っておけば確かに代数学の基本定理は真となる.
 しかしそうでもないような例えば有限体上では代数学の基本定理は偽となる.
 少し控え目に言うと弱くなっている.

 ポアンカレ予想の解決でいうような自明な空間とは何だろうか ?
  一口では掴み難いぐらい今日この自明空間が複雑多岐に渡っているように思える.
 そのどの部分空間においてもポアンカレ予想は本当に真となるのだろうか ?
  ここまで来ると私にはもう何がなんだか見当もつかなくなって来るのである.
  私はどちらかと言えば自明な空間から弾き出されてしまった様な謂わば非ポアンカレ空間により興味がある.
  (筆者)  
                                                                                     (2007'11'20)
  代数学の基本定理から次の様な数体についての分類が可能である.
 P:「 適当な数体 k があり,z を変数として, k 上一変数多項式環を k[z] とする.
 このとき,
 k[z] の任意の n 次式 f(z) は k[z] の n 個の一次式で常に分解できる 」
 という命題 P を考える.
 そして,この様な命題 P を真とする数体 k の例に( ガウスの )複素数体があるということになる.
 有理数体や実数体や有限体などはこの様な数体 k には属さないということになる.
 従って代数学の基本定理自体を基にして抽象的な複素数体を定義することも可能であると思える.
 この定義に従う( もはや数体とは限らない )どのような体も複素数体と類似のものであると考えられ得る.
 この様な考え方を暫く続けていると,
 代数学の基本定理こそが複素数体の合理的な定義の仕方であるとさえ見えて来る.
 同様に私にはポアンカレ予想で言う命題の文章を見れば見るほど
 ポアンカレ予想こそが n 次元多様体の合理的な定義の仕方であると日を追う毎に思えて来る.
 ポアンカレ予想の命題そのものにはほとんど神秘性が感じられない.
 むしろ,この当たり前なことを証明しようとする人の真意が測りかねる.
  もともと n 次元多様体と言うのは一点の近傍を微小な n 次元球面と同相であるとして
 このような点たちの集合が作る図形を n 次元多様体としている.
 単連結とは同相変形をして一点に縮まる多様体のことであるとすれば,
 この一点の微小な n 次元球面に同相変形をして適当な半径を与え普通の大きさの n 次元球面にしてしまえばいい
 だけのことではないのかと考える.
 ポアンカレの命題でいう述べ方では単連結な閉多様体に同相変形を施して一点に縮め再び同相変形を施して
  n 次元球面にするという,往復の手間を節約したような合理性を持つ.
 むしろポアンカレ予想自体を n 次元多様体の定義であると見なして良いと思える.
  複素数体のより抽象的な定義が先の命題 P であったように,n 次元閉多様体のより抽象的な定義があるとすれば,
 それはポアンカレ予想が指そうとする命題そのものではないのかと私は言いたいわけである.
 だからポアンカレもこれに証明を与える必要を感じなかったのではあるまいか.
 そこに百年有余のポアンカレの天才的な先見性があるというべきである.
 こんなことを解決しなければならない大問題のように考えるのは,
 「 二点を通る直線がただ一本であるのは何故か ? 」
  と考えて,これを証明しなければ幾何学が始められないと考えている人と似ていると思う.
 こんなとき,経験あるいは直感というものがそれを納得させてくれるのである.
 理論に頼っていてはただ停滞あるのみである.
  実際にポアンカレはヒルベルトのような形式主義ではなく直観主義の数学者であったとされている.
 私はポアンカレから直観(感)の大切さを教えられた思いがする.( 筆者 ) 
                                                                                     (2007'11'21)
 n 次元多様体の定義を命題 P として
  P:「 各点の近傍が n 次元球面 Enと同相であるものを n 次元多様体と定義する 」 
と書き,
 ポアンカレ予想を命題 Q として   
 Q:「 単連結な n 次元閉多様体は n 次元球面 En と同相である 」
と書いたとする.
 今まで我々はややもすると,
 P ⇒ Q
を示すことがポアンカレ予想の証明に当たると考えていたのである.
 しかし,次のような考え方もまた有効である. 
  Q': 「 n 次元多様体の内で n 次元球面 En と同相であるものを単連結であると定義する 」
と書き直して見るならば Q と Q' は同値な主張であると考えて良いと思える.
 しかし Q は何やら定理の様な主張に見える一方で Q'ではただの単連結の定義に過ぎなくなっている.
  こうしてみると P でも Q' でも単なる用語の定義に過ぎないと思える.
 つまりポアンカレ予想は単連結とは何かを定義していただけであると考えられなくもない.
 数学ではこのような定義は通常は証明などしないのが筋であるとすればポアンカレ予想の書き替えに当たる
 命題 Q' も証明するには及ばないと考えて良いはずである.     
 結局のところ n 次元多様体では点は初めから n 次元球面 En と同相であると約束してあった.
 しかし点以外の多様体であっても En と同相であるようなものが存在すればそれを単連結であるとするのである.
  すなわち単連結の集合は点を代表者とするような多様体の類に当たっていると考えて良い.( 基本群, ポアンカレ群 )
  このようにポアンカレ予想は何も証明する必要のない主張であるとすれば問題点は次の事柄に転嫁されよう.
 (1) En と同相な多様体の考察に適うように全ての n 次元多様体を漏れなく重複なく分類する方法とは何か ?
  (2) 上記の分類の内で En と同相な多様体はどれだけあるか ?
  (3) 従来の単連結の定義で与えられる多様体は En と同相なものを漏れなく全て含んでいるか ?  
  また En と同相でないものを含んでいないか ?
 そしてポアンカレが初めてポアンカレ予想なるものを提出して以来,実に約百年後の今日において
 n = 3 を除く場合について肯定的に解決し,n = 3 の場合についてもごく最近になって
  ロシアの数学者グリゴリー・ヤコフレヴィチ・ペレルマンによってほぼ肯定的に解決したと考えて良いようである.
 結局ポアンカレ予想の解決という話題を誤解のないように表現するにはその表題を
 「 ポアンカレ予想に関する単連結閉多様体の分類問題 」
とでもされるべきであったかも知れない.(筆者)
                                                                                     (2007'11'22)
  ◇ 群論の初歩から考えたポアンカレ予想の自明性.
 
 (1) 点と呼ばれる ε は n 次元球面 En と同値であるとする.
   ( ここで点が最も次数の低い量であるという従来の古典幾何学の発想を捨てる.
   点といえども n 次元の要素であって,ただどの次元の座標も極めて微小であるだけのことである.)
 (2) 点の適当な合併を要素たちとして n 次元閉多様体の集合 G を定義する.
  ( 閉じているとは有限の座標だけで出来ていて,しかもどこにも端が無いことである.
     n = 1 の場合に限った例では一周の輪となる.しかし正確な円である必要はない.)
 (3) 適当な同値関係 ~ と二項演算 * の定義により G が群となるとする.
     特に 点 ε は G の単位元に当たるとする.
  ( G が群であるとは (1)単位元の存在 (2)逆元の存在 (3)結合法則の成立 を意味する.)
 (4) G が自明でない正規部分群 H を持っているとする.
  ( H が部分群であるとは H ⊂ G となる部分集合自身がまた群であるものをいう.
 自明でない群とは単位元だけや G 全体の場合は除くということである. 
 H が正規部分群とは先の同値関係 ~ に関し G を H で類別した類たち( G/H と書く )がまた群となる場合をいう.

  もしも与えられた n 次元多様体で (1) から (5) が成立すれば,
 H をポアンカレ予想でいう単連結な n 次元多様体であると見なすことにより,
 群論の初歩的な知識だけでポアンカレ予想が真であることが簡単に確かめられる.

 詳細は明日, 乞うご期待 !!^^!!  ( 筆者 )
                                                                                     (2007'11'24)
  証明と言うてもそんな大層なもんでない.次の四つの簡単な算数の式となる.

 g は G ( n 次元閉多様体 )の任意の要素
  ε は n 次元多様体の点
 En は n 次元球
 H は単連結な n 次元閉多様体 ( H の定義は以下の (3) によるものとする )
 このとき 
 (1) g + ε ~ g  ( 任意の g に点を加えても ( 例えば周回積分の同値性において ) g と同じである ) 
  (2) g + En ~ g  ( 任意の g に球を加えても g と同じである ) 
 (3) g + H ~ g  ( 任意の g に単連結な n 次元閉多様体を加えても g と同じである )
  (4) H ~ ε ~ En  ( 単連結でも点でも球でも効果においては同じ )

  たったこれだけw  
  だからポアンカレが敢えて証明の必要なしと考えたとしても無理からぬことである.( 筆者 )

  この (3) から (4) への飛躍を群論らしくやれば次のようになる.
  g + H ~ g   ( これが H の定義なので初めから真であるとして良いとしておく. )
 ∴ g- + g + H ~ g- + g  
  ( ∀g∈G ⇒ ∃g-∈G|g- + g = ε )
  ( g- + g ) + H ~ g- + g  
  ε + H ~ ε 
  ∴ H ~ ε
  ∴ H ~ ε ~ En  ( ε ~ En は n 次元多様体の前提であるので真となる.)

  G が群であればこの論法が使えるだろうが G が群でもないときは 
  (1) ∀g∈G ⇒ ∃g-∈G|g- + g = ε
が言えないかも知れない.
 すなわち任意の g の逆元 g- が存在しないか,あるいは存在を言うことが難しいかである.
 (2)  ( g- + g ) + H ~ g- + g 
で結合法則を使っているが G が群でないときは成り立たないかも知れない.
 例えば超複素数体では結合法則が成り立たない.( ただし積分路の加法の結合法則は保存されると思える. ) 
                                                                                     (2007'11'25)
 G を n 次元閉多様体の集合とする.
 (1) 適当な 二項演算 * や 同値関係 ~ が定義できるか ?
  (2) G が群となるか ? 
 G が群であると言えるための具体的な問題点としては G の任意の要素 g が逆元 g-1 を持つと言えるか ?
  だから球面が裏返せるかなどと言う様なとんでもない議論が真面目な意味で必要となるのかも知れない.
 更に結合法則が成立するか ? ( 超複素数体の乗法などの場合で結合法則が崩れるらしい.これは心配ないかも.)
  これらのことが少しでも崩れると群論的な手法で
  H ~ En
を結論付けるのは難しくなる.
 (3) n 次元多様体は n + 1 次元空間が基礎( 土俵 )となっている.
 例えば 1 次元多様体は二次元空間が基礎となっている.
 複素解析関数の周回積分が 1 次元多様体の例となる.
 そこでは二項演算 * を周回積分路の加法とし,同値関係 ~ を周回積分の値と考える.
  逆元の存在は積分の経路を逆にたどることで簡単に存在すると言える.結合法則の成立も自明である.
 正則な周回積分路の集合 H をポアンカレの 1 次元の単連結な閉多様体と考えると
 任意の周回積分路 g に任意の H の要素を加えても g の周回積分と同値で 
 H の要素のどれもが一点や正則な円周( n = 1 の場合の球面 )と同値になっている.
 だから n = 1 でポアンカレ予想は自明に真となる. 
 n = 2 では三次元空間( 立体 )の表面をなぞった様な曲面となる.
 ここではポアンカレ予想の真であることが確かめられていて応用上重要な結果を持つ.
 n = 3 では四次元空間が基礎となる.
 そうなると物理学的な空間に当てはめると時間軸が含まれてくると思える.
 n = 3 で周回積分を拡張できるか ? がそもそも疑問である.
 たとえ同値関係を周回積分の同値であると出来る場合であっても時間軸を逆向きにたどらないと
 元の時点に戻って来れなくなる.
 どう考えても見当もつかない謎となる.
 
 例えば音楽の楽譜は四次元的な表現であると考えて見たとする.
 並んでいる音符の内,左側の音符は右側の音符よりも早い時間に属すると考える.
 そして音符たちは縦・横・高さの三次元の空間において演奏家の楽器から聴衆に向かって奏でられる.
 このとき時間を逆にたどるとは単純に楽譜を逆向きに演奏することではない.
 聴衆の耳元から演奏家の楽器に向かって音が以前とは逆向きに発射されるのである.
 どう考えてみても不可解である.
 
  物理学では電子が時間に逆行して流れると陽電子になるという仮説がある.これはちょっと面白い.
 あるいは我々の住んでいる本当の世界は八次元ぐらいあるらしいけれど, 
 我々に感知出来ない方向の重力を我々が光として感じているのだという仮説もある.(らしい)
  ポアンカレはアインシュタインよりも前にローレンツ変換( 光の特殊相対性に当たる )の原理を高度な理論
として述べた人でもあって,そういう意味でもやはり天才的である.
  そうすると時間が縮むかも知れないことも予想していたかも知れない.
 そうなると時間を逆行できる可能性も予感していたのかも知れない.
 いずれにせよSF小説のネタ元みたいな人物であったのかも知れない.

 数学的には四番目以降の座標軸は極めて素直に取っているはずだから
  今の時間軸の例の様に逆向きにたどれないという困難は初めから除いてあると考えて良いようではある.

  今度はポアンカレ予想を文法的に考えてみよう.
 そこで平行四辺形の面積の問題を例に取ってみるとする.
 「 底辺の長さが a 高さが b であるような平行四辺形の集合 」 という文で
 ポアンカレの文章の「 単連結な n 次元閉多様体 」 という文と置き替える.
 「 a×b の長方形 」 という文でポアンカレの文章の「 n 次元球面 」 という文と置き替える.
  「 同じ面積 」 という文でポアンカレの文章の 「 同相 」 という文と置き替える.
 そうするとポアンカレの
 「 「 単連結な n 次元閉多様体 」 は「 n 次元球面 」 と 「 同相 」 である 」
という文章は
 「「 底辺の長さが a 高さが b であるような平行四辺形 」 は「 a×b の長方形 」 と 「 同じ面積 」 である 」
と言い替えられる.
 この場合に命題 ( 主張 ) は真となっている.
 しかし「 a×b の長方形 」 を「 a×b の直角三角形 」 で置き替えて,
 「「底辺の長さが a 高さが b であるような平行四辺形 」 は「 a×b の直角三角形 」 と 「 同じ面積 」 である 」
となるが,この場合に命題は偽となってしまう.
 それで 

 ◎「 要素 X は 要素 Y と比較して 性質 Z を持つ 」
を一般命題と考えるとする.

  ( X, Y, Z ) = ( 底辺の長さが a 高さが b であるような平行四辺形, a×b の長方形, 同じ面積 )
と取れば一般命題は真である.
 
  ( X, Y, Z ) = ( 底辺の長さが a 高さが b であるような平行四辺形, a×b の直角三角形, 同じ面積 )
と取れば一般命題は偽である.
 
 結局, 一般命題
 ◎「 要素 X は 要素 Y と比較して 性質 Z を持つ 」
は決定不能である.
 
 そうするとまた次のことが言えたことになる.
 
  ポアンカレ予想は一般構文的に決定不能である.

  そうして私はこの最後の結論が好きである.( 数学の分野における世界的な権威の結論に反する新見解 !! )

 読者は 「 そんなん当たり前や 」 と思われるかも知れない,
 でもこれを論理記号でやれば不思議なぐらい当たり前には思えないです.ハィ ( 一種の心理学 )

  「 見えるものは見えないもので 見えないものは見えるものである 」
とやるとどうしょうもないくらいア○らしくなってくるが
 「 色即是空 空即是色 」
と言われると誠に有難く思える.( 筆者 )
                                                                                     
  意味で考えればガロアの理論は三日で分かる.
 しかし,論理記号でやれば三年たっても分からないかも知れない.( 筆者 )

  足を括って計算の上を飛ぶこと !!  ( ガロア )
  足を括って記号の上を飛ぶこと !!  ( 筆者 )
  ( ガロアの理論を理解する鍵は過去の数学史, 特に代数学の歴史の研究にある.特にルフィニ.)
                                                                                     (2007'11'25)
◇ n 次元配列を応用したポアンカレ予想の証明~ポアンカレ予想は任意の自然数 n において真である.

 [証明の着想]
 用語として単連結とは 1 から順に通し番号が打てること,閉じているとは最後の m 行目の次に初めの 1 行目が来て
いることすなわち m-1 行目と 1 行目の間に m 行目が来る意味と解釈する.
  桁の方向についても n 桁目 の次に 1 桁めが続くものとする.n 桁目は n - 1 桁目と 1 桁目の間にある.
 さらに m 行の n 次元実配列は m 行の n 次元仮配列と同値な表現空間を持つと考える.
 このとき前者を大きさが m の単連結な n 次元閉多様体と見なし,後者を大きさが m の n 次元球面と見なす.
 すなわち 球 の意味を閉じた輪で出来た空欄とみなすのである.
  すると,この構造はポアンカレ予想の命題と同値となり,しかも任意の自然数 n と m について真となる.
 ここでコジツケられたところの大きさが m の n 次元球面とは 1 から m までの番号の付けられた n 桁
のナンバーリングをドーナツ型につないだ形をした空欄だけの罫線の表である. ( 球と言うより輪環である.)
 少なくともこの構文は単語として球面と輪環面の違いをや n 次元の解釈のついての従来の位相幾何学的な慣例
を無視すればポアンカレ予想を真とする構文であることだけは言えていると思える.

  ポアンカレ予想の命題の文章を
 「「単連結な n 次元閉多様体」 は 「n 次元球面」 と同じ順序構造を持つ」
と書き直したとする.これと次の文章
 「「実の n 次元配列変数(変数に代入)」 は 「仮の n 次元配列変数(変数初期化)」 と同じ順序構造を持つ」
とを比較すると構文的には同値となっていると考えられる.

 この配列変数を実際の n 次元多様体空間上の一つの点の座標の入れ物として利用するには
  配列変数の横の長さは n ではなく n+1 にする必要がある.ここでは構文の同値だけを示せばいいと考えて
 このような仔細を簡略にしたのである.
(終わり)

 これは証明というよりはコジツケっぽい証明紛(まが)いであることをお断りしておく.
 今日において関係型と呼ばれるデータベースは n 次元配列変数を応用したものとなっている.
 そこでの情報検索はSQLと呼ばれる文法に基づいてクエリと呼ばれる検索文を作成することで行われている.
 いわばポアンカレ予想で言うような命題はこのようなクエリの一種のようなものだと考えて良いのかも知れない.
  そうすると異なるクエリ文ごとに異なるポアンカレ型命題を立てているようなものであると考えられなくもない.

  この様にポアンカレ予想は一種の頓知( quick wit )を応用すれば証明できるのかも知れない.
 でも,だとすれば自分に都合の良いような空間を悪く言えばデッチ上げておいて証明する訳であるから
 コジツケっぽくなることは否めない.でもこの空間ではポアンカレ予想が真であることもまた事実である.
 それで結局どんな条件の空間でポアンカレ予想が真であるとか,偽であるとか言うの外にあるまい.
 そして全ての場合を総合すればポアンカレ予想は決定不能であると考えて当然のことのようである.

  微積分に不都合な尖った点のようなものが存在していた場合に 「手術」 と称してこれを除去していたりする.
 私はその数学の権威に伺いたい, そのようなことがコジツケでは無いのは何故か ?
  結局, 都合の悪くなる度に 「手術」 と称して一種のコジツケをやるだけのことである.
 この立場に立てばポアンカレ予想は必ずや肯定的に証明できると言えよう.
 しかしこの 「手術」 を認めなければ否定とまではいかなくても肯定だけはできまい.
 子供同士が互いに出来る出来ないで言い争いをして窮すれば「作ったらある」とやって言い逃れをする.
 どうもそんなやり方にしか思えないのである.残念ながら.
 すなわちこれを見てもポアンカレ予想はより公平な立場では決定不能であることが自白されている.

 だいたい微積分などというのは誤魔化しの数学である.
 一体無限に小さな点が何個集まれば見えるような線分になると言えるのか ?
  そこから一つの点を取り去ったときそのような点の集まりは線分であるのか線分でないのか ?
  点から線ができたり,線から面ができたり,面から立体ができるという考えはどうも嘘に思える.
 線は線から面は面から立体は立体からしか作れないと考える方が自然ではないのだろうか ?
  単純な結合の繰り返しでは結合の原因と同種の結果しか生じようがない.
 整数と整数を割算して分数が生じれば以後は整数も分数の仲間であると考える方が数学的には都合が良い.
 同様に点と点を結んで線が生じれば以後は点を線の仲間ように考える方が数学的に返って自然ではないのか?
と思うときがある.
 無限に小さな量や無限に大きな量を考えることにも抵抗を感じる.
 これは計算の結果に何か決まった一つの値が求まったというよりは,
 無限に継続する計算の内のある現象では無理数という名で一個の数と見なされているだけである.
 幾ら十分小さな一定の有理数を用意しておいてもそれを下回る(under flow)計算上の現象,あるいはこの逆に 
 幾ら十分大きな一定の有理数を用意しておいてもそれを上回る(over flow)計算上の現象が起こった場合に
 これらが無限小や無限大の正体であって計算機上では単なるエラーという故障現象に過ぎない.
 これを論理的な記号で極限値表示をすればエラーでなく見える.誠に困ったことである.
  むしろ記号の方が嘘をついているように見える.(実際にこれは嘘である)
 いくら記号で嘘をついておいたところでいつかは記号化された本質の方が正体を表す.
  記号が事実を正確に表しているならそれで良いが単なる不都合の美化であってはなるまい.
  結局この場合に記号的には一個の数のように書かれていたが実際はエラーに当たる現象であったと言いたい.
 記号には元々このような誇張や歪曲があるので注意を要する.

 無限に続く計算を成し遂げることは我々には不可能であるのにそれを成し遂げてきたかのような振りをする.
 記号を使えばこの不正がなくなるとでも言うのだろうか ?
  しかもそのような不正の隠蔽として 「厳密にする」 という美名の下に記号を使う.
 元々から誤差の有ったものがある種の論理的と称する記号を使うと誤差のない話になるとする.
 ならばその記号は事実の中に誤差を持ち込んでいる, 悪く言えば不正を持ち込んでいるのである.
 それは数字上の誤差より困った不正である.だから少しも厳密になっていない.(^^)
  私はそのような数学を論理的というよりむしろ非論理的であると考える.
 実数論の一つの困難は無理数を一つの数の点(point)のように無理やり考えようとするところにある.(無理な数)
 円周率 π の近似計算でも分かったように, このような無理数はどう考えても数の隙間(gap)である.
 それを理解できないと言う人の側に責任があるのではなく, 
 それを無理やり理解させようとする側にこそ責任があると言うべきである.
 数学はもっと明瞭で素直で分かり易いものでなければならない.
  理解とは何か相手に催眠術を掛けて分からせるということではないはずである. 

 計算に誤差が含まれることは困ったことかも知れないが, 
 事実でない嘘が含まれることはもっと困ったことかも知れないのである.
 極限値の計算を間に挟んで計算機のプログラムを書けばこのままではプログラムは停止してしまう.
 実数の連続性などという概念は人間が錯覚によって作り出した「論理的」な「非論理」であるのかも知れない.  
 心理学で言うような騙し絵の類ではないのかと思うときがある.
  例えば一点から周囲に放射状に直線を引いて置いて, 
 今度はこの点から上下に等距離で二本の平行線を引いたとする.
 するとこの平行線は真ん中で膨らんで見える.つまり絵に騙されていることになる.
 記号にも多少このような騙しの傾向があるのではないだろうか ?
  それが二次元とか三次元の空間の表面で起こるようなことであれば実際のモデルを作って記号の不正の有無
を検査することもできよう.しかし四次元以上ともなればその表面でさえ我々に体験することが不可能である.
 従って記号の不正の検査が不可能であると言うべきであって, その結果を信じて置くしかない.
 結局のところ決定不能であるとして置くのが一番正当で無難な結論であると言えるのではないだろうか ?

  さて,
  ポアンカレ予想が意味する命題を P とする.
 位相同型(順序の同値関係=同相)の空間で命題 P が成り立つ空間を A 組とする.
 逆に命題 P の成り立たない空間を B 組とする.
 ある命題 X を用いて A 組と B 組を一般的な立場で区別できたとする.
 しかも, このとき A 組では命題 P が真であり,B 組では命題 P が偽であることが首尾よく証明できたとする.
 このとき A 組と B 組の区別に用いられた命題 X は 命題 P と同構造の命題ではないかと私は考える.
 故に命題 P すなわちポアンカレ予想はより広義の一般的な意味において決定不能であるというのが私の主張である. 
  すなわち多様体の定義を狭義なものに限定して初めて真であるような特殊な命題であると思える.
 ( 見かけ上は位相幾何学的であっても応用問題が異なれば利用できなくなる恐れが大である.)
  
  いやいっそのことポアンカレ予想が指す命題が真となる多様体だけを n 次元閉多様体であると定義してしまえば良い
だけのことではないのかとも思う.( すなわち多様体の定義の為の公理とするのである. )

 どうも 「 単連結な n 次元閉多様体 」 という言い方が分かり難く, しかも一般性が感じられない.
 いっそのこと
 「 任意の平面で切断しても唯一つの交差しない一周の輪の変形になる図形 」 とでも言えないのだろうか ?
  ただし後者が前者と同値であるかどうか今のところ定かではないけれども.
 
 教訓:公理や定理の表現は平明たるべし.
 ( たとえ小学生であってもその気になれば高等数学に参加できるようにしてやるべきである !! 
  たとえば Wikipedia の記事でも数学に関する記述は小中学生向き, 高校大学生向き, 専門家向きの三部構成
になっていたならばどの段階の人が読んでも復習か予習的な意味を持つので良いかも知れないと思う.)
  
 それでポアンカレ予想は何故それを証明しなければならないのかが良く分からない命題のようにも思える.
                                                                                          (筆者)
                                                                                     (2007'11'26)
  ◇ 要約されたポアンカレ命題 ( 筆者の個人的解釈 )
  単を単へ閉を閉へと変換する変換系は単にして閉なるものを球(空)に変換し得るか ?
                                                                                     (2007'11'27)
 ◇ n ≧ 3 の場合, 式の変形で得られたものが全て真であるとは限らない.

 結局のところ訳の分からないことは決定不能にしておくに限る.
 なぜなら明瞭な肯定の根拠もなければ明瞭な否定の根拠もないからである.
 しかも三次元多様体以上の現象は簡単には実験できないからである.

 例えばである.式の上で起こせる変形だけが全て正しいと言えるかどうか極めて疑問である.
 私でも新しい予想を提出できる.しかも式の変形のみによって起こすことができる.
 そしてポアンカレ予想を解決したとおっしゃる先生方と同じように式の変形だけで得られたものであるから
 正しい結論であると言えるかも知れない.
 それは次の式である.
 いわゆる光の相対性の理論でローレンツ収縮の式は物体の速度を v,光の速度を c,物体の静止時の長さを ℓ として
  ℓ' = ℓ√( 1 - ( v2/c2 ))
  ここで変換後の長さ ℓ' が実数以外はダメであると決まっているなら
 v ≦ c ( v = c は少し怪しげだが )
である.しかし有りえないことだけれど, もしここで虚数的長さ ℓ' というものが仮にあれば
 v > c, v = c + d
として
 ℓ' = iℓ(√(2cd+d2))/c
となるだけであって物体の速度 v は光の速度 c よりも速く成り得る.
 式の変形で得られることが全て正しいならこれも正しいというべきである.
 n = 3, 4, 5 
などの場合のポアンカレ予想は実際には確かめようのない次元を含んでいる為に単に式の上で起こせる変形だけ
に基づいてポアンカレ予想が裏づけられたに過ぎない.
 それで先ほどの v > c が真であると見なされることがまず有りえないのと同じ理由で
 n ≧ 3 のポアンカレ予想の真偽についても決定不能と考えておく外なかろうと思う.
  ( しかしながら, タキオンという素粒子は光の速度よりも速く成り得るらしい.)    (筆者)
                                                                                     (2007'11'29)
  ◇ ガウスの法則とポアンカレ予想.

 古典電磁気学の理論にガウスの法則というのがある.
 実際は電気力の場(電場)や磁気力の場(磁場)の計算の方面の教科書や参考書で必修の法則である.
 しかし, ここでは重力場の話に置き替えてガウスの法則を紹介しておく.
 
 太陽の中心を点 O, 地球の中心を点 O', O と O' の間の距離を r[m] とする. 
 点 O の中心に太陽の質量 M[Kg] が一点に固まって存在していると仮定しても良いとする.
 同様に点 O' の中心に地球の質量 m[Kg] が一点に固まって存在していると仮定しても良いとする.

 太陽の中心から M[本] の重力線が全方向に平等に放射状に出ていると仮定する.
 このとき重力線は互いに交わることも接することも無く, 自分とも再び交わることも接することも無く,
 またその中心から外に向かう重力線は再び中心に戻ることも無く,
 途中で二本以上に分岐することも無く,消滅することも無いと仮定する.  

 このとき O から半径 r の仮想球面を考えるとその表面積は 4πr2 となる.
 しかもこの仮想球面上にある重力線の密度[本/m2]は, これを H と書けば,
 H = M/(4πr2) [本/m2]
となっている.
 このとき, ニュートンの万有引力の公式では二質点間の力を F[N], 重力の定数を k として
  F = k・M・m/r2 [N]
となる.それで上記の H を使えば, k' = 4πk として
 F = k'・m・H [N]
のようにも計算できる.

  今度は, 太陽の半径を R[m] と考えたとき, その表面の重力線の密度はこれを再び H とすれば,
 H = M/(4πR2)
となる.
 このような重力線の密度 H はちょうど重力場の強さを定義していると考えられる.
 太陽が球ではなく例えば松本零士氏のSF漫画のように楽器のオカリナのようなイビツ(歪)な閉曲面であっても
  この閉曲面上の一点を p, p での重力場の強さを Hp,
 この付近の微小面積を⊿S, ⊿S から垂直に出る重力線の本数を⊿m とするならば 
  Hp ≒ ⊿m/⊿S
と考えられる.右辺は微分によって正確に定義することもできる.( ここでは省略.)
 この式だと局所的な重力場の強さが計算でき相手側の質量が分かっていると重力(引力)も計算できる. 

  さてここである閉曲面 S がありその内部の質量の総量を ∑M とすれば S の表面から放射される重力線の総量 ∑N は
 ∑M = ∑N
  となり, これがガウスの法則と呼ばれる公式である.
  さらに一本の重力線とこれと交わる閉曲面 S 上の微小面素片⊿S は常に直交していることも分かっている.
 さてそこでポアンカレのいうような n = 2 の単一閉曲面をここの閉曲面であると考える.
 このとき空間全体の座標は三次元 ( n+1= 3 ) に取られていることに注意する.
 内部の適当な一点を座標系の原点としこれを O としておく.
 そして O から適当な本数の重力線を放射していると考える.
 これらの重力線たちは必ずしも均等に取られる必要はないが一本づつ 1 から順に番号を付けるとする.    
  例えば k 番目の重力線を f(k) と書いておく.( 1 ≦ k ≦ kmax )
 そこで多様体の表面でこれらの重力線 f(k) とこれと直交する k 番目の微小面素片⊿S(k) を考える.
  さてこのとき kmax 本ある微小面素片の一つ一つと同じ番号の付いた重力線とを直交させたままで少しづつ
  重力線の出発点であった座標系の原点 O に向かって逆戻りさせたとする.
 そうすると微小面素片たちは順番を入れ替えることもなくそのまま全て原点 O の周りに集められると考えられる.
 そして n 次元多様体の冒頭の定義で点と球とは位相同型であることが定義されてあったならば.
 もはや点を微小な半径の球と考えても良い.
 このとき O 点を中心とする微小球表面と直交する重力線たちと元の多様体表面と直交する重力線たちとでは
 番号が完全に一致している.これらは増えも減りも入れ替わることもない.
 すなわち, これらの操作のどの段階でも重力線の番号は完全に保存されていたと考えて良い.
 そうすると n = 2 の場合について.ポアンカレの予想でいう命題
 「 単連結な n 次元閉多様体は n 次元球面と同相である.」
と類似の命題
  「 単連結な n 次元閉多様体は n+1 次元球面と同相である.」
が示されていると考えられる.
  ( この二つの命題を並べて見れば分かるように n 次元多様体でいう次元 n は混同され易いと思える.
 恐らく積分型の言い方と微分型の言い方とがあると思える.
 ガウスの法則は力学的なのでニュアンスが少し異なるが積分型, ポアンカレ予想は微分型となるのかも知れない.
  積分だと球の表面全体( 3 次元球面 )となるが微分だと微小な円板( 2 次元球面 ) となると考えられる.
 ( 似たようなことは万有引力の法則にもあった.ニュートンは微分型, ケプラーは積分型に当たる.)
  つまりガウスの法則はポアンカレ予想の n = 2 の場合の変形に当たっていると考えて良いかも知れない
 それで結局, ポアンカレ予想はガウスの法則の広義の拡張に当たると考えても良いかも知れない.
 またこの説明で用いた中心からの力線による番号保存の論法や力線と面素片の交点の座標(n+1次元)の記述に
 先の配列変数( 今の例では配列の寸法は (n+1)×kmax となる. ) を用いることなどは
 ポアンカレ予想の証明(もしやるとするならば)の手ごろな道具と言えそうである.(筆者)
                                                                                     (2007'12'01)
  ガウスでもポアンカレでも数学者にして物理学者でしかも天文学者であるというような面で酷似している.
 それで彼らの数学を宇宙の構造に遠回しに応用して見るのもそれほど的外れにも思えないしまた面白くもある.
  そこでガウスの法則の意味的な変形とポアンカレ予想との(半ば強引な)類推を通して大まかに考えて見ると
 我々の住む宇宙の構造は,
 (1) 中心から外側に向かって放射状に伸びるように作用するような力の場の中に置かれている.
 (2) このような力場では包み込んでいる形の中の質量の総和が影響力の総和を決定する.
 (3) 包み込んでいる形の中心に微小な球形を補い, 
  しかも中心に全質量を集中したと考えても元の形より外部への作用はほぼ同じである.
と考えて良いように筆者には思える.
  そんな宇宙に住んでいると言えそうである.( NHK教育の 「~ポアンカレ予想~」 の内容を回顧.)
 それで次の故事を引用して結句をコジツケるとする.
 「 水は方円の器に従う 」 如き 「 四方八方丸ぁるく収まる 」 ような宇宙に我々は住んでいる.(筆者)

◇ 順序と位相, そして同相について.
 順序も位相も順番を扱っているという点では同じであると考えられる.
 しかし位相というのは順番にさらに周期が付けられている.
 ここに位相を扱う二つの系列が存在していた場合にこれらが同相であるとは
  ◎ 二系の周期と任意の番号が一致する
ことであると考えて良い.(筆者)
                                                                                     (2007'12'05)
◇「 n 次元多様体の一点の近傍は三次元ユークリッド空間 E3 と同相である.」 と定義して良い.
  例えば n = 3 のとき即ち三次元多様体を縦・横・高さ・時間の四次元空間の座標の集合であると考える.
 話を簡単にして動いているメリーゴーラウウンドの一つのゴンドラを三次元閉多様体であると見なして良いとする. 
 このとき時間を停めてゴンドラを基準の位置(原点)に戻し更に縦・横・高さを微小なものに縮めて行った極限では
 このゴンドラは三次元の微小球に収束すると見て良い.
 すなわち n = 3 では 
  「 n 次元多様体の一点の近傍は三次元ユークリッド空間 E3 と同相である.」
 が成り立っていると考えて良い.
 同様な考えは n > 3 の n 次元多様体でも成立すると仮定すれば掲げた定義の正当性が分かる.(筆者) 
                                                                                     (2007'12'07)

◇相対性理論が出現して,ニュートン力学は改築を余儀なくされたが,マクスウェルの方程式は変える必要がなかった.
オーストリアの大物理学者,ルートヴィッヒ・ボルツマンは,その著書の中でファウストの言葉
「 これらの符(しるし)を書いたのは,神だったのではなかろうか 」(山下肇訳)
を引用して,マクスウェル方程式の見事さをたたえたという.
(世界を変えた科学10大理論プラス40理論 学習研究社1994年10月20日発行 マクスウェルの電磁理論 55頁 参照.
  この本は高校生でも予備知識なく読める程度に著名な科学者の業績と伝記が簡潔にまとめられている.
  ニュートン,ガロア,マクスウェル,リーマン,アインシュタインなど優れた科学者の写真入りの紹介がある.
  なお,この本の統一場の理論のところで 117 頁 には岐阜県神岡鉱山に作られた陽子崩壊実験装置 「 カミオカンデ 」 
が写真入りで紹介されている.撮影当時 「 ニュートリノ 」 はまだ発見されていなかった.)

 開かぬ缶詰如何にするかと嘲られてもただ眺めて居る万一開いたら食ろうてしまう了見である.(高木貞二)
                                                                                     (2007'12'10)
◇ ポアンカレ予想が真であることを危うくするかも知れない群論的な一例.

 例えば 10 を法とする偶数の剰余たちの集合 K = { 2, 4, 6, 8 } ( mod 10 ) を考える.

  群論的に K には以下の様な性質がある.

 (1) K は 乗法と除法について閉じている.

  (2) 単位元は 6 である.

 乗法の単位元とは K の任意の要素 k に乗じても結果がまた k 自身になる要素のことである.

  言い替えれば単位元とは二項演算の結果を変えない元のことであると云える.

 任意の乗法群 K において任意の要素との二項演算を不変に保つ要素たちの集合を仮に単位部分類と呼び E とする.

 さて次の様な命題 Q を考える.

 [命題 Q] 任意の乗法群 K の演算不変な部分類 E には自明な単位元 1 が含まれる.
 
 ( 言い替えると命題 Q は「 K の E は 1 を含む 」か ?  となる.)

  ( 命題 Q をより正確に書けば

 「有理整数を要素とする任意の乗法的同値関係 K 上の商群 K/E の正規部分群 E には自明な単位元 1 が含まれる.」

となる.が、ここでは簡単に前記のように表現しておく.)

 先程の様に K = { 2, 4, 6, 8 } ( mod 10 ) を採用すれば 

  E = { 6 } となるが E は自明な単位元 1 を含んでいない.

 よって一般に命題 Q は偽である.

 言い替えれば「 K の E は 1 を含むとは限らない 」が真である.

 ( 実際には「 K の E は 1 を含む 」場合が圧倒的に多いけれども.)

  ( この群を一般化するには p を 3 以上の素数とし K = { 2×1, 2×2, …, 2×(p-1) }(mod 2p) とすれば良い.

 この場合に於いて常に E = { p+1 }, E ∌ 1 が成り立っている.

  また K の任意の元 R について,

 1 ≦ r,r' ≦ p-1, 2rr' ≡ (p+1)/2  ( mod p )

  R = 2r, R' = 2r'

となるような r,r',R' を考えれば 

 2 ≦ R' ≦ 2(p-1), R' ≡ 0 ( mod 2 )

  ∴ R' ∈ K, 

  RR' ≡ p+1 = E ( mod 2p )

となる.
 
  もう少し詳しく述べれば,適当な自然数を n として

 2rr' = np + (p+1)/2

  ∴ RR' = 2np + p + 1 ≡ p+1  ( mod 2p )

 K の任意の元 R について, このような R' が存在することはほぼ自明.

 ゆえに K の任意の元 R に対し逆元 R' が存在する. 

 ゆえに K は p-1 位の乗法群である.

 さらに K は 巡回群である.

 Zp* = { 1, 2, …, p-1 } の巡回生成元の任意の一つを g として 

  (1) Zp* の生成元 g が奇数ならば g' = p+g とする.

 (2) Zp* の生成元 g が偶数ならば g' = g とする.

 いずれにしても

 g' ∈ K, g' ≡ 0  ( mod 2 )

となる.

  一般に既に

 gp-1 ≡ 1  ( mod p )

が成り立っている.

  ゆえに適当な 0 を含む自然数を n として 

 ∴ g'p-1 = 2np +  p + 1 ≡ p+1  ( mod 2p )

が成り立つ.

 ゆえに 

  g'm ≡ p+1  ( mod 2p )

となる最小の自然数を m とすれば

 m = p-1

  ゆえに g' は K の巡回生成元( 原始根 ) である.
 
 例えば p=11 のとき Z11* の生成元たちは { 2, 6, 7, 8 } の φ(11-1)=φ(10)=φ(2)φ(5)=1×4=4 個ある.

 そこで K の巡回生成元たちとして { 2, 6, 11+7=18, 8 } を取ればこれらは全て位数 10 の元たちとなっている.

 結果的に K と Zp* は群同型で p-1 位の巡回群であり φ(p-1) 個の巡回生成元たちを持つ.)  

 さてポアンカレの予想で

 (1) n 次元閉多様体を要素とする任意の群を考え,これを K' とする.

 ( 周回積分路を要素とする二項結合で周回積分の同値関係を考えれば K' の例となる.) 

 (2) K' の二項結合で演算不変な部分類 E' を「 単連結な n 次元閉多様体 」と考える.            
  
 (3) 3 次元球を「 自明な単位元 」と考える.これを 1' と書くとする.  

  そこで命題 Q に倣って次の様な命題 Q' を考える.

 [命題 Q'] K' の E' には 1' が含まれる.

 ( ここでもより正確には「 K'/E' の E' には 1' が含まれる.」と書くべきであった.) 

 結局, 命題 Q の類推から命題 Q' も真であるとは限らないと考えられる.

 n 次元閉多様体を要素とする任意の群 K' において,

  二項結合的に演算不変な部分類 E' が自明な単位元に当たる 3 次元球を含むか含まないかは

 応用問題側に任されている事柄であって応用問題を解くより前に決定できる事柄ではないと筆者は考える. 

  ここで取り上げたような命題 Q や命題 Q' は経験的には殆ど真であるけれども稀に例外を持っている.

 このような命題を偽と云うのは少し憚られる,それで非真な命題であるとでも云っておけば良いのかも知れない.

                                                                               ( 2008'5'18 追記 )
  ( 言い替えれば,ポアンカレ予想が

 常に真となるような必要十分条件を見出すことが非真な命題を真の命題に変える方策であるとも云えよう.

  前の Q の例では零因子を含まない標数の群であれば 1 を含まない元が単位となることを防げる.)

        w = u + iv = z2 - 1 ( z = x + iy ) のモジュラー図

  以前に本稿で取り上げた f(z) = z2 - 1 の等高線と等傾線のグラフ (モジュラー図) を掲載しておく.(筆者)
                                                                                     (2007'12'26)

  このモジュラー図の描き方の粗筋を以前に述べたことのおさらいの意味で簡単にまとめて述べておこう.

 記号の意味とかは以前の定義に従うものとする.

  w = u + iv 
    = f(z) = z2 - 1 
    = f(x+iy) = ( x + iy )2 - 1
    = x2 - y2 - 1 + i2xy

  ∴ u = x2 - y2 - 1, v = 2xy

 等高線は w 平面上では

 u2 + v2 = |w|2 = Const.

となり半径が |w| = Const. であるような円周となる.

 また等傾線(等角度線)は w 平面上では

 v = tanφ・u, ( 0 ≦ φ < 2π, tanφ = Const. )

となり, 傾きが tanφ であるような原点を通る一次直線となる.

 z 側の等高線や等傾線は w 側の座標 (u,v) から次の式で逆変換すると比較的に楽に求められる.

  すなわち,

 u + 1 = x2 - y2, v = 2xy 

から,

  ( u + 1 )2 + v2 = ( x2 + y2 )2

  さらに, これらの式から

 |x| = √(  ( u + 1 + √(( u + 1 )2 + v2) )/2  )       

 |y| = √(  ( - u - 1 + √(( u + 1 )2 + v2) )/2  )       

が求まる.

 これで確かに与式のモジュラー図は描けるが, しかし |f(z)| 全体の曲面をケント紙などで立体工作して復元する
ことを考えるとモジュラー図面的な方法では少し不都合になる.
 それは等高線は |f(z)| = 0 では等高線というよりは等高点となるのであって, 
  この例では (x,y) = (-1,0), (1,0) では尖っている.
 この尖ったところをケント紙を切ったものを積み重ねて作ることは出来ない.
 それで別の断面図, 例えば y = Const. x = Variable と考えてケント紙一枚分の厚みを ⊿y とし
 yn = n⊿y = Const.
として水平成分 x が変化するときの垂直成分 |f(z)| のグラフをケント紙に印刷して挟みで切り抜き y の番号順
に積み重ねることで |f(z)| の曲面が工作できる.
 あるいは x = Const. y = Variable としても良い.
 私は松尾芭蕉の不易流行を文字ってこれを不易流行法と呼ぶことにしている.
 なぜなら不易とは変わらぬこと, すなわち不変を意味し, 流行とは移り変わり, すなわち変化を意味するからである.
 それで y = Const. x = Variable ならば y 不易 x 流行法と呼んでいる.(筆者)
                                                                                     (2007'12'31)
      寒梅

 庭上の一寒梅
 黙って風雪を冒して開く
 争わず また 努めず
 己ずから 百花の 魁を占む (新島 譲)
  
 難波津に 
 咲くや この花 冬ごもり 
 今は春べと 咲くや この花 
  ( この花は梅の古語である.大阪を代表する花である.花も実もある.近畿大学の校章の梅花はこれらに由来する.)
 ( 近畿大学学生手帳参照 )
                                                                                     (2008'1'1)
  この稿で冒頭でお聴き頂いた円周率の和楽器演奏の改良版を作ってみた.以前は数字と音階を
  0 = "し, 1 = ど, 2 = れ, 3 = み, 4 = ふぁ, 5 = そ, 6 = ら, 7 = し, 8 =`ど, 9 = `れ
とし和楽器も三味線だけであった.桁数は 600 桁ぐらいであったと記憶している.
 しかし和製音階は俗に「ヨナ抜き」である.その意味は四番目と七番目の音階の「ふぁ」と「し」が無いことによる.
 逆に和風な感じの曲に仕立てるにはわざと「ふぁ」と「し」の音を抜けば良いわけであって, 
  すなわち 「ヨナ抜き」 にすれば和風な感じに聴こえるだろうということになる.
 この改良版(新バージョン)では,数字と音階を 
  0 = "ら, 1 = ど, 2 = れ, 3 = み, 4 = そ, 5 = ら, 6 = `ど, 7 = `れ, 8 =`み, 9 = `そ
とし和楽器も和琴,三味線,尺八とした.桁数も 1120 桁までとした.(筆者)
_円周率 π ( ヨナ抜きバージョン )
                                                                                       (2008'1'2)
 数日前に取り上げた

  f(z) = z2 - 1

の等高線 |f(z)| = Const. の性質について少し補足しておく.

  |f(z)| = √( u2 + v2 ) = √(  ( x2 - y2 - 1 )2 + ( 2xy )2  )

  = √( x4 + y4 + 2x2y2 - 2x2 + 2y2 + 1 )

  = √(  ( x2 + y2 + 1 )2 - 4x2  )

  = √(  ( x2 + y2 + 1 + 2x )( x2 + y2 + 1 - 2x )  )

  = √( x2 + y2 + 1 + 2x )√( x2 + y2 + 1 - 2x )

 = √( ( x + 1 )2 + y2 )√( ( x - 1 )2 + y2 )

と変形できる.

 ここで任意の等高線 |f(z)| = Const. の上の任意の点を P(x,y) とする.

 また z 平面上で (x,y) = (-1,0) の座標を持つ定点を F1, (x,y) = (1,0) の座標を持つ定点を F2 とする.

 このとき,

 √( ( x + 1 )2 + y2 ) は F1 と P の間の距離であり, 同様に,

 √( ( x - 1 )2 + y2 ) は F2 と P の間の距離である.

 ゆえに与式の等高線は 

 二定点 F1(-1,0), F2(1,0) からの距離の積が |f(z)| = Const. であるような点 P の軌跡となる.

 このような曲線はカッシーニの曲線と呼ばれている.

 なお, F1, F2 は f(z) の零点にもなっている.

 さらに |f(z)| = 1 の場合においては

 |f(z)|2 = x4 + y4 + 2x2y2 - 2x2 + 2y2 + 1 = 1

となるので, これを変形すれば,

 ( x2 + y2 )2 = 2( x2 - y2 )

が得られる.ここで極座標形式を用いて,

 θ = tan-1(y/x) ( = tan-1(Img(z)/Real(z)) ),

 x = |z|cosθ ( = Real(z) ), y = |z|sinθ ( = Img(z) )

とすれば直前の上式は,

 ( |z|2( cos2θ + sin2θ ) )2 = 2|z|2( cos2θ - sin2θ )

となる.ここでさらに,

 cos2θ + sin2θ = 1, cos2θ - sin2θ = cos2θ

であることに注意すれば,

 |z|2 = 2cos2θ  ( θ = tan-1(Img(z)/Real(z)), |f(z)| = 1 )

となる.この曲線は(ベルヌーイの)レムニスケート曲線と呼ばれている.

  掲げたモジュラー図では横向きの8の字型の曲線がこれにあたる.(2008'1'6)

  " あめ二つ 同心円に近づきて 

      やがて一つとなりて 去り行く "                              (この句のみ 2008'3'5 に追記)

                                                                                            (筆者)
                                                                                       (2008'1'8)
  円周率πの演奏で「れ」 と 「ら」 の音を抜いて見た.今度は,
 0 = "し, 1 = ど, 2 = み, 3 = ふぁ, 4 = そ, 5 = し, 6 = `ど, 7 = `み, 8 = `ふぁ, 9 = `そ
としてみた.こうすると琉球民謡風に聞こえる.
_円周率 π ( 琉球民謡風バージョン )
                                                                          (2008'1'25)
  円周率の演奏でさらに今度は

  0="シ♭,1=ド,2=ミ♭,3=ファ,4=ソ♭,5=ソ,6=シ♭,7=`ド,8=`ミ♭,9=`ファ

とやってみた.すると今度は何となくブルース調に聞こえる.
_円周率 π ( ブルース調バージョン )


                                                                                       (2008'2'1)
        f(z) = z2 - 1 の y 不易 x 流行法による断面図分解
                                                                                       (2008'2'6)

    仰げば尊し    (文部省唱歌)

1. 仰げば 尊し 我が師の恩
   教(おしえ)の庭にも はや幾年(いくとせ)
   思えば いと疾(と)し この年月(としつき)
   今こそ 別れめ いざさらば 

2. 互(たがい)に睦し 日ごろの恩
   別るる後(のち)にも やよ 忘るな
   身を立て 名をあげ やよ 励めよ
   今こそ 別れめ いざさらば 

3. 朝夕 馴(なれ)にし 学びの窓
   蛍の灯火 積む白雪
   忘るる 間(ま)ぞなき ゆく年月
   今こそ 別れめ いざさらば 
                                                                                       (2008'2'9)
◇ 極座標形式で表した上半単位円とレムニスケートの基本部分曲線

 本節では, z を複素数, x,y を実数, θ をラジアンとして,

  z = x + iy, θ = tan-1(y/x)

とし, さらに極座標形式を採用して, 

  x + iy = rεiθ 

と書くことを心がける.ここで ε は自然対数の底, 

 また参考としてオイラーの公式によって,

  εiθ = cosθ + isinθ

の関係がある.云い替えると,

 r = √( x2 + y2 ), x = rcosθ, y = rsinθ
 
としても良い.
  
 先ず原点を O(0,0) として, 以後の議論に共通に角度の範囲を 0 ≦ θ ≦ π/4 として, 上半単位円を表そう.

 この曲線上の任意の点を P とし原点 O から出発するベクトルを記号 OP で表すことにする.

(1) OP = x + iy = εi  ( 0 ≦ θ ≦ π/4 )

となる.さらに OP の絶対値を |OP|, 偏角を ∠OP で表せば,

 |OP| = 1, ∠OP = 4θ

となっていると云える.

 ここで原点を O'(-1,0) に移し, 新たに x* = x + 1 を導入すれば (1) の上半単位円は,

 O'P = ( x + 1 ) + iy = x* + iy = εi + 1 = ( εi + ε-ii  

  すなわち,

(2) O'P = ( εi + ε-ii  ( 0 ≦ θ ≦ π/4 )

 |O'P| = εi + ε-i, ∠O'P = 2θ

となる.また偏角について (1) と (2) を比較すると,

 ∠OP = 4θ, ∠O'P = 2θ

のように後者が前者の半分になっているが, これはそれぞれ円の中心角と円周角に相当するからであると考えられる.

  さらに,

 εi + ε-i = 2cos2θ

であることを注意しておく.

  これは前述のレムニスケートの式 r2 = 2cos2θ で既に現れていた.

  レムニスケートは, またベクトル r の意味から考えれば,

 |r| = r = √(2cos2θ) = √( εi + ε-i ), ∠r = θ

となる.レムニスケートは曲線全体では x 軸と y 軸に関し四つの象限で対称になっている.

 そこで, 第一象限( x ≧ 0, y ≧ 0 )内にある曲線を基本的な区間と考え, 以後これを基本部分曲線と呼ぶ.

 r = √( εi + ε-iiθ  ( 0 ≦ θ ≦ π/4 )

と表される.ところが先の (2) では,

 O'P = ( εi + ε-ii

となっていたが O'P のベクトル的な平方根を考えると絶対値は平方根で偏角は 1/2 となると考えられるので,

 √O'P = √( εi + ε-iiθ  ( 0 ≦ θ ≦ π/4 )

となる.これはレムニスケートに他ならない.

 すなわちレムニスケートは原点が O'(-1,0) であるような上半単位円のベクトル的平方根の軌跡であると云えよう.

  さらに, 絶対値は上半単位円と同じ εi + ε-i だが偏角は半分の θ であるようなベクトル P' の軌跡を考えると,

  (3) O'P' = ( εi + ε-iiθ  ( 0 ≦ θ ≦ π/4 )

  これを偏角的擬似レムニスケートと呼んでおく
 
  さらに, 絶対値は √( εi + ε-i ) だが偏角は 2θ であるようなベクトル P'' の軌跡を考えると,

 (4) O'P'' = √( εi + ε-ii  ( 0 ≦ θ ≦ π/4 )

  これを動径的擬似レムニスケートと呼んでおく.

 最後にレムニスケートの基本部分曲線を P''' の軌跡として表せば,

 (5) O'P''' = √( εi + ε-iiθ  ( 0 ≦ θ ≦ π/4 )

となる.これらは類似した曲線たちであると見なして良いようである.

  このような方法でレムニスケート曲線を円周にピッタリ重ね合わせることができる.

 この様な議論から曲線をベクトルの先端の軌跡であると考え, その記述に極座標形式を用いる方法の良さが窺える.

  (筆者)
                                                                                      (2008'2'18)
                                                                     ( この図は 2008'3'8 に追記 )
  
  θ = 0 のときの O'P の絶対値は単位円の直径で 2 となっている.

 それでこの角度のときのレムニスケートの動径 O'P''' の絶対値は

 |O'P'''| = √|O'P| = √2

  ここで |O'P'''|(θ=0) をレムニスケート半径と呼んでおくことにする.

 さらにレムニスケート半径が 1 であるときのレムニスケート基本部分曲線の長さの 2 倍を取り

 これをレムニスケート周率と呼び ω で表すことにする.

 私が掲げたレムニスケート半径は √2 でしかも基本部分曲線だけを表していた.

 それで, レムニスケート周率 ω は我々のレムニスケート基本部分曲線の長さの √2 倍にあたる.

 いま半径 √2 の基本部分曲線の動径をどの方向にも一斉に √2 倍した曲線を考えれば

  この曲線の長さはレムニスケート周率であると考えてよい.

  ( 元のレムニスケート半径が √2 の曲線で動径を r, r の微小変化を⊿r, 偏角をθ, θの微小変化を⊿θとすれば

 動径 r と r+⊿r が作る曲線上の微小素片を⊿s とすれば

 ⊿s = √((⊿r)2 + (r⊿θ)2)

  となる.一方これらの動径を一斉に √2 倍した曲線の ⊿s に対応する微小素片を ⊿s' とすれば,

 ⊿s' = √((√2⊿r)2 + (√2r⊿θ)2) = √2⊿s

  ∴ ∫⊿s' = √2∫⊿s ) 

 ゆえに極めて粗い近似として,

 2 < ω < π

  すなわち,

  2 < ω < 3.1416

が得られる.実際には,

  ω = 2.622057554292119810464839589891 …

となる.

  a,b を適当な実数として,

 f(z) = az2 - b

なる二次関数を考えれば, 仔細は省略するが,

 (1) 半径 1 のレムニスケートは a = 1, b = 1/2, h = |f(z)| = b = 1/2 

  (2) 半径 √2 のレムニスケートは a = 1, b = 1, h = |f(z)| = b = 1

  (3) 半径 2 のレムニスケートは a = 1, b = 2, h = |f(z)| = b = 2
 
をそれぞれ前提としてとして式を変形すれば得られる.

 一般的には上記の関数の下ではレムニスケートの半径は √(2b/a) で与えられる.

 ( w = az2 - b

 u + iv = a( x + iy )2 - b = a( x2 - y2 + i2xy ) - b

 ∴ u = a( x2 - y2 ) - b, v = 2axy

 ∴ h = √( u2 + v2 ) = √( ( a( x2 - y2 ) - b )2 + (2axy)2 )  

 = √( a2( x2 - y2 )2 - 2ab( x2 - y2 ) + b2 + (2axy)2 )  

 = √( a2( x2 + y2 )2 - 2ab( x2 - y2 ) + b2 )  

 h = b  ⇒ x2 + y2  = √(2b/a)√( x2 - y2 ) ( = |z|2 )  

  さらに |z| = r, x = rcosθ, y = rsinθ とすれば,

 r = √(2b/a)√( cos2θ - sin2θ ) = √((2b/a)cos(2θ))    )(筆者) 

                                                                                      (2008'2'19)

  ここから以下の記述では

 ∫(a,b)f(x)dx

で下限 a, 上限 b, 被積分関数 f(x) の x による積分を表しているものとする.

  一般にレムニスケート周率 ω は次の式で定義される.

  r2 = cos(2θ)  ( 0 ≦ θ ≦ π/4 )

  ω = 2∫(0,1)(1/√(1-r4))dr 

  これを証明して見よう.

 前提から

 r = √(cos(2θ))

  dr/dθ = d(√(cos(2θ)))/d(cos(2θ))・d(cos(2θ))/d(2θ)・d(2θ)/dθ

  = 1/(2√(cos(2θ)))・(-sin(2θ))・2

  = -sin(2θ)/√(cos(2θ))

  このとき r と r+⊿r の先端が作る微小な線分を ⊿s とすると

 (⊿s)2 ≒ (⊿r)2 + (r⊿θ)2

が成り立つと考えて良い.

  ∴ ⊿s ≒ ⊿r√(1+(⊿θ/⊿r)2r2) = ⊿r√(1+(1/(⊿r/⊿θ)2)r2)

 = ⊿r√(1+r2/(dr/dθ)2) = ⊿r√(1+r2(cos(2θ))/(-sin(2θ))2)

  = ⊿r√(1+cos2(2θ)/sin2(2θ)) = ⊿r√((sin2(2θ)+cos2(2θ))/sin2(2θ))

  = ⊿r/√sin2(2θ) = ⊿r/√(1-cos2(2θ)) = ⊿r/√(1-r4)  

 ゆえに, 各々の微小線分 ⊿s の極限値的な総和は, 

  ω = 2∫(0,1)(1/√(1-r4))dr 

  (証明終わり)

  今度は円周率 π を同様な積分で求めて見よう.

 ここでは円の中心を (x,y) = (1/2,0) とし半径 1/2 の上半円周を考えて見よう.

 このとき上半円周の長さは π/2 である.すなわち, この長さの二倍が π である.

 この円の直角座標系の式は,

 (x-1/2)2 + y2 = (1/2)2  ( 0 ≦ x ≦ 1 ), ( 0 ≦ y ≦ 1/2 ) 

となる.さらにこの式を極座標で表示して見よう.

 r を動径, θ をラジアンとして,

  x = rcosθ, y = rsinθ

とすれば与えられた上半円周の式は,

 (rcosθ-1/2)2 + r2sin2θ = (1/2)2  ( 0 ≦ r ≦ 1 ), ( π/2 ≧ θ ≧ 0 )

  r2cos2θ - rcosθ + (1/2)2 + r2sin2θ = (1/2)2

  ∴ r2 - rcosθ = 0

  ∴ r = cosθ

  ∴ dr/dθ = -sinθ

 先ほどレムニスケート周率を求めたときと同様な論法から,
 
 ⊿s ≒ ⊿r√(1+(r2/(dr/dθ)2)) = ⊿r√(1+cos2θ/sin2θ)

  = ⊿r/√sin2θ = ⊿r/√(1-cos2θ) = ⊿r/√(1-r2)

  ここから,

 π = 2∫(0,1)(1/√(1-r2))dr
                                                                                (筆者)
                                                                                      (2008'2'20)
  野村監督に敬礼!!
                                                                                       (2008'3'8)

  ”数学は社会建設の道具である”( ホグベン「百万人の数学」)
 ”情報もまた然り”(筆者)
 ”どこで勉強してきたかは関係ない.大切なことはちゃんと勉強して居るということです.”(某先生)
 
                                                                                      (2008'3'14)
 個々の立場において成し得る最善を果たした者はその状況において最良である.(筆者)
                                                                                      (2008'3'17)

◇ 判別式が2の二次拡大整数環に於ける反復自乗冪単数集合の考察試論

( 1 + √2 )1 = 1 + √2

( 1 + √2 )2 = 3 + 2√2

( 1 + √2 )4 = ( 3 + 2√2 )2 = 17 + 12√2

( 1 + √2 )8 = ( 17 + 12√2 )2 = 577 + 408√2

( 1 + √2 )16 = ( 577 + 408√2 )2 = 665857 + 470832√2

         ・・・     ・・・     ・・・

f' + g'√2 = ( f + g√2 )2  = ( f2 + 2g2 ) + 2fg√2, f2 - 2g2 = 1,

∴ f' = f2 + 2g2 = 2f2 - 1 = 4g2 + 1, g' = 2fg 

fn = ( (1+√2)2^n + (1-√2)2^n )/2, 

gn = ( (1+√2)2^n - (1-√2)2^n )/(2√2),

xn = ( fn + gn )2 - gn2 = ( fn+1 - 1 )/2 + gn+1,

yn = 2( fn + gn )gn = ( fn+1 + 1 )/2 + gn+1,

zn = ( fn + gn )2 + gn2 = fn+1 + gn+1

( xn2 + yn2 = zn2 )

xn+1 = ( fn+1 + gn+1 )2 - gn+12 = zn2 - gn+12,

yn+1 = 2( fn+1 + gn+1 )gn+1 = 2zngn+1,

zn+1 = ( fn+1 + gn+1 )2 + gn+12 = zn2 + gn+12,

  fn+1 = - xn - yn + 2zn, gn+1 = xn + yn - zn,

( xn+12 + yn+12 = zn+12 )

 ∴ z' ∝ z2, m' ∝ m2

  本当は他の物理量の測定精度を向上させるなどの方が円周率の計算より,もっともっと大事なことかも知れない.
  いくら貧弱でも自分の発見した公式で円周率を計算するのは良い.
 しかし,いくら高性能であっても他人の作った公式を再利用して長く計算するだけなら,
 そこには arithmetics はあっても mathematics は無いと考える.
 単に短時間に長く計算するだけなら 「 30分以内に大将のジャンボ・ギョーザを10人前食べられます.」 という
 ような自慢と大して変わらない.( ちょっと言い過ぎたかも.)
                                                                                      (2008'3'21)

  円が丸い図形だから円周率が現れたというより,偏っていない図形だから円周率が現れたのではないのか?
 偏りのない平等な数学的対象はなんらかの意味で円周率に関わるのではないのだろうか? (筆者)
                                                                                      (2008'3'25)
  特別な宗教を肯定するつもりはないが,自然についてあれこれ学んでいるうちに人間は知的な進化を遂げて
 今や神の如くになってしまった.だとすれば人間の教師であった自然はもうそれだけでりっぱな神である.
 いやむしろ,人間以上の神である.
  哲学でも宗教でも科学でも,何に拠っても絶対に腑に落ちないことが少なくても一つある.
 それは,自然というものがなぜこんなにも複雑な構造でなければならなかったのか?ということである.
 例えば水素原子一つの構造にしても天才でさえ一気には思いつけないであろう程の複雑な公式が伴っている.
 単に天体を存在させ生物を生かしておくだけなら,こんなにも複雑な仕掛けは要らなかったのではないのだろうか?
 もっと単純な構造でも充分であったのではないのだろうか? 
 想像を逞しくするならば,人はみな自然という芸術作品を鑑賞するようにこの世に招待されているのではないか?
 しかも,この作品の見所は誰が読んでも完全には謎を解き得ないところにあるのではないのだろうか?
 人間が以前より精密に複雑に自然の性質を計り得る頃には,自然もほんの少し複雑さや謎を増し加えて行くので
 どこまで行ってもキリが無い.自然の複雑さは人間の複雑さの反映のような二重構造を成しているように思える.
 たとえ人類に百億年の時間が与えられるとしても全ての謎は解き得ぬものと思える.
 従ってまた私の一生の間には全ての謎が晴れることなど有り得ぬことは明白である.
 しかしまたそれでも現状の自分で知り得るところまではともかくも行ってみようとも思う.
 私には自然の叡智は人間のそれを遥かに凌いでいてとてつもなく賢く思える.
 自然の持つ真の芸術性はどの鑑賞者も決して飽きさせることがないところにあるのかも知れない.
 そして私は自然というこのとてつもなく知的な芸術作品を心から賞賛したいとも思うのである.(筆者)
                                                                                      (2008'3'27)
  気絶の区間は周囲の人からすれば2日であろうが2時間であろうが,本人にはほんの一瞬のようにしか思えない.
 本人には微かに意識を失う直前の不安定な記憶だけがある.
 気絶の区間を休止区間と云い,休止区間の前後を前期と後期と呼ぶとする.
 この休止区間は客観的には遠大であっても主観的には微分小である.
 宇宙にも生成消滅があり,その前期と後期の間には相当長い休止区間があるかも知れない.
 しかしそれが相当長いと云えるのは客体的な宇宙からであって主体的な宇宙からは一瞬の不連続でしかない.
 そういう意味では主体的な宇宙にはほんの一瞬の不連続区間があるだけでそれを除けば殆ど常に連続である.(筆者)
                                                                                      (2008'3'28)

  fn2 - 2gn2 = (1+√2)n = (-1)n

  f12 - 2g12 = -1

  f12 = 2g12 - 1

  f12/g12 = 2 - 1/g12 < 2

  ∴ f1/g1 < √2

  2g12 = f12 + 1

  4g12 = 2f12 + 2

  4g12/f12 = 2 + 2/f12 > 2

  ∴ 2g1/f1 > √2

  ∴ f1/g1 < √2 < 2g1/f1

     g1/f1 > 1/√2 > f1/(2g1)

  同様に,

  f22 = 2g22 + 1

  f22/g22 = 2 + 1/g22 > 2

  ∴ f2/g2 > √2

  2g22 = f22 - 1

  4g22 = 2f22 - 2

  4g22/f22 = 2 - 2/f22 < 2

  ∴ 2g2/f2 < √2

  ∴ 2g2/f2 < √2 < f2/g2

  f2 = f1 + 2g1, g2 = f1 + g1

  f2/g2 = ( f1 + 2g1 )/( f1 + g1 )

  = ( ( 1 + f1 )/(2g1) )/( 1 + g1/f1 ) )( 2g12/f12 )

  ところが,
 
  f1/(2g1) < g1/f1  ⇒ ( 1 + f1/(2g1) ) < ( 1 + g1/f1 ) 
   
 ∴ ( 1 + f1/(2g1) )/( 1 + g1/f1 ) < 1

  ∴ f2/g2 = ( ( 1 + f1/(2g1) )/( 1 + g1/f1 ) )( 2g1/f1 ) < 2g1/f1
 
  2g2/f2 = 2( f1 + g1 )/( f1 + 2g1 ) 

  = ( ( 2 + 2g1/f1 )/( 2 + f1/g1 ) )( f1/g1 )

  ところが, 

  2g1/f1 > f1/g1  ⇒ 2 + 2g1/f1 > 2 + f1/g1

  ∴ ( 2 + 2g1/f1 )/( 2 + f1/g1 ) > 1

  2g2/f2 = ( ( 2 + 2g1/f1 )/( 2 + f1/g1 ) )( f1/g1 ) > f1/g1

  f1/g1 < 2g2/f2 < √2 < f2/g2 < 2g1/f1
  
  これらを続けて,

 f1/g1 < 2g2/f2 < f3/g3 < 2g4/f4 < ・・・< √2 < 

 ・・・< f4/g4 < 2g3/f3 < f2/g2 < 2g1/f1
  
  ∴ f1f2/(2g1g2) < 1 < f2f3/(2g2g3)


◇ Pai' = 2M*sinγ, M ≒ Pai(z/(2√2)), sinγ = ( x + y )/z2, (  2M*sinγ < 2M*γ < π )

  x = 2fg + f2, y = 2fg + 2g2, z = 2fg + f2 + 2g2, ( f2 - 2g2 = 1 )  

  Pai' = 2M*sinγ = 2Pai(z/(2√2)(( x + y )/z2)

  Pai' = Pai(1/√2)((x+y)/z), ( f/(2g) ≒ 1/√2, f/(2g) > 1/√2 )   

  Pai' ≒ Pai(f/2g)(( 4fg + f2 + 2g2 )/( 2fg + f2 + 2g2 ), 

  ここで

  Ka = (f/2g)(( 4fg + f2 + 2g2 )/( 2fg + f2 + 2g2 ))

とおけば,
 
 Pai' = Ka*Pai

となる.

  Ka = (f/(2g))(( 4fg + f2 + 2g2 )/( 2fg + f2 + 2g2 ))

  = (f/(2g))(( 4fg + ( f2 - 2g2 ) + 4g2 )/( 2fg + 2f2 - ( f2 - 2g2 ) ))

  = (f/(2g))(( 4fg + 4g2 + 1 )/( 2fg + 2f2 - 1 ))

  = (f/(2g))(( 4g(f+g) + 1 )/( 2f(f+g) - 1 ))

  = (f/(2g))(( 4gg' + 1 )/( 2fg' - 1 ))   ( g' = f + g )

  ∴ Ka > (f/(2g))((4gg')/(2fg')) = (f/(2g))(2g/f) = 1
 
  ( 4gg' + 1 ≒ 4gg', 2fg' - 1 ≒ 2fg', Ka ≒ 1 )

 ∴ Pai' > Pai

  ここで, さらに Ka が旨く選択されていれば,

 Pai < Pai' < π

と出来る場合がある.( 少なくとも 2M*sinγ < 2M*γ < π であれば可能.)

 このような Ka によって π の近似 Pai をさらに良い近似 Pai' にできるとき近似の改善が起こる.

 これを俗に錬金術と呼んでおこう.Ka を増殖関数( 錬金術関数 )と呼んでおこう.

  ( 日本では'円'というのはお金の単位だから,'錬金術'という言い方もそれほど的外れでもなさそうであるfff...)

  同様なことを続けて

 Pai'' = Ka'*Pai', Pai(3) = Ka''*Pai'', ・・・, Pai(n) = Ka(n-1)*Pai(n-1),

  Pai < Pai' < Pai'' < Pai(3) < ・・・ < Pai(n-1)< Pai(n) < π

とできるとき,連鎖増殖と呼ぶ.

 私の方法では前回の双曲指数 n = 2k として求めた円周率の近似を Pai とすれば, 

 その精度 10-t は t = 1.5n となる.
 
 さらに今回の双曲指数 n' = 2n = 2k+1 として円周率の近似を Pai' とすれば, 
    
 Pai から Pai' を求めた場合の精度は t' = 1.5n'= 2t となり前回の倍の桁数で近似できる.

 アルキメデスの方法のように辺の数を二倍にするのではなく近似の桁数を二倍にできるのである. (筆者)

                                                                                       (2008'4'1)
◇ 偏角二刀流

  γ,γ',δ,δ',δ'' を有理数か実数, M,M',M'' を自然数として

  ( π/2 >> γ >> δ )

  π/2 = Mγ + γ'   ( γ > γ' )

  γ = M'δ + δ'    ( δ > δ' )

  γ' = M''δ + δ'' ( δ > δ'' )

であれば

 π/2 = Mγ + γ' = M( M'δ + δ') + ( M''δ + δ'')

       = ( MM' + M'')δ + Mδ' + δ''

  M',M'' が M と同じかこれを超えない程度であれば

  商が M ぐらいの規模のときの処理時間をTとして,上記の処理時間の全体は約3Tを超えない.

 これはいきなり

 π/2 = M'''δ + δ'''  ( δ > δ''' )

 M''' ≒ MM' ≒ M2

で処理をした場合と比較すれば処理時間がかなり短縮されるはずである.

 このような処理上の原理を仮に偏角二刀流と呼んでおこう.   

  この方法で成功すればそのとき飛燕六三四二刀流と名付けよう.
                                                                                 (2008'4'8)

∴ (MM'+M'')sin(δ)+Msin(δ')+sin(δ'') < π/2 < (MM'+M'')tan(δ)+Mtan(δ')+tan(δ'')

ところが, 

sin(δ') 
= sin(γ-M'δ) 
= sin(γ)cos(M'δ)-cos(γ)sin(M'δ)
cos(δ') 
= cos(γ-M'δ) 
= cos(γ)cos(M'δ)+sin(γ)sin(M'δ)
tan(δ') 
= sin(δ')/cos(δ')
= (sin(γ)cos(M'δ)-cos(γ)sin(M'δ))/(cos(γ)cos(M'δ)+sin(γ)sin(M'δ))

sin(δ'') 
= sin(γ'-M''δ) 
= sin(γ')cos(M''δ)-cos(γ')sin(M''δ) 
= sin(π/2-Mγ)cos(M''δ)-cos(π/2-Mγ)sin(M''δ) 
= cos(Mγ)cos(M''δ)+sin(Mγ)sin(M''δ) 
cos(δ'') 
= cos(γ'-M''δ) 
= cos(γ')cos(M''δ)+sin(γ')sin(M''δ) 
= cos(π/2-Mγ)cos(M''δ)+sin(π/2-Mγ)sin(M''δ) 
= sin(Mγ)cos(M''δ)+cos(Mγ)sin(M''δ) 
tan(δ'') 
= sin(δ'')/cos(δ'')
= (cos(Mγ)cos(M''δ)+sin(Mγ)sin(M''δ))/(sin(Mγ)cos(M''δ)+cos(Mγ)sin(M''δ))

∴ (MM'+M'')sin(δ)+M(sin(γ)cos(M'δ)-cos(γ)sin(M'δ))+cos(Mγ)cos(M''δ)+sin(Mγ)sin(M''δ)
< π/2 < 
(MM'+M'')tan(δ)+M(sin(γ)cos(M'δ)-cos(γ)sin(M'δ))/(cos(γ)cos(M'δ)+sin(γ)sin(M'δ))
+(cos(Mγ)cos(M''δ)+sin(Mγ)sin(M''δ))/(sin(Mγ)cos(M''δ)+cos(Mγ)sin(M''δ))
 
                                                                                      (2008'4'11)
◇ 乗冪処理を和冪処理に替える案

 いわゆるド・モアブルの定理や(虚数乗法的三角関数の)オイラーの公式から

 εiMθ = (cosθ+isinθ)M = cos(Mθ)+isin(Mθ)

  ここで, 

 M = mt

であったならば,

 (P-1) α = cos(θ) + isin(θ) を変数 α の初期値. 
        β = cos(θ) + isin(θ) を定数とする.

 (P-2) α*β で α を更新する.

というプログラム処理 P を作成したとする.

 この処理を mt - 1 回くり返すと cos(Mθ) + isin(Mθ) を求めることができる.

 しかし,これとは別に

  処理 P を m-1 回くり返して先ず cos(mθ) + isin(mθ) を得て, この出力を次回の P の α,β の入力として

 毎回ごとに前回の処理 P の出力を次回の処理 P の入力としてこれを t 回くり返す.

 すると,この方法でも cos(Mθ) + isin(Mθ) を得ることができる.

 処理の回数を単純に比較すれば前者では約 mt 回となるのに対し後者では約 tm 回になる.

 即ち m を t 回乗冪的にくり返す処理を m を t 回和冪的にくり返す処理に変更できることを意味している.
 
 ( 例えば, m = 10 で t = 4 であったならば, 前者は約 10000 回で後者は約 40 回でその差は著しい.

  一回あたりの平均処理時間を 1 秒とした場合に前者は約 2 時間 45 分だが後者は僅か 40 秒である.)

 このような方法でド・モアブル + オイラー的な処理の性能の改善が期待できる.

  当面の私の課題は円周率の1万桁を一時間以内に求めること,さらに10万桁を一日以内に求めることにある.

 これを目標としても,もはやそれほど不可能であるとは思えなくなってきている.
                                                                                      (2008'4'12)

  ◇ 断面図ペーパークラフトで曲面を復元した場合の手間と出来栄え

 厚みが薄すいと,曲面の復元は正確にできるが,切り抜く紙片の枚数が増えて良くない.

 一方,厚みが分厚いと,切り抜く紙片の枚数は減るが,曲面の復元は不正確となってこれも良くない.

 それで適当な中間のところに曲面の復元がそこそこ正確で,しかも切り抜く枚数もそれほど多くない

 最適な厚みが存在すると考えられる.

 用紙のこの厚みは応用数学の最適微分とか測定の最適許容誤差とかに譬えておけると思う.

 それは極端に縮小することでもなければ拡大することでもないかも知れない.
                                                                                     (2008'04'16)
  ◇ 四半円分指数を前回の円周率の近似から求めるまた別の不等式の発見

  N を双曲指数として

 (1+√2)N=f+g√2, f2-2g2=1

  πを真の円周率,

 M,γ を N における四半円分指数, 偏倚角とする.

  x=(f+g)2-g2, y=2(f+g)g, z=(f+g)2+g2

 sin(γ)=(x+y)/z2, tan(γ)=(x+y)/(z2-1)
  
として

 Msin(γ) < π/2 < (M+1)tan(γ)

が成立している.

  ここから,
   
 (π/2)/tan(γ) - 1 < M < (π/2)/sin(γ) 

が成り立つ. ここで上限と下限の差を求めて見ると,

 (π/2)/sin(γ) - ( (π/2)/tan(γ) - 1 )

 = (π/2)(z2-(z2-1))/(x+y) +1

 = (π/2)/(x+y) + 1 

  ∴ 1 <  (π/2)/sin(γ)  - ((π/2)/tan(γ)-1) < 2

  この下限と上限の間に入れる有理整数は高々一つか二つである.

 ( 経験的には殆ど一つの場合しかないと考えられる.)
 
 [k] で実数 k の直近下位の整数を表すとすれば

 M = [(π/2)/sin(γ)] または [(π/2)/sin(γ)]-1

  π が真の円周率である限りこの公式は正しい.

 しかしながら例えば前回の双曲指数を n, 今回の双曲指数を N として

 N = 2n, π のところを n のもとでの近似円周率 Pai と置き換えた場合には

 (Pai/2)/tan(γ)-1, (Pai/2)/sin(γ)

は N ≦ 1024 の範囲では, 実際の M より 1,2 程度低い値を挟んでいる.

  ( この理由は Pai の有効桁数と M の桁数が極めて近いことによる.

 Pai の近似の桁数が π の下位のより良い近似で有れば有るほど真値 M に近づく.)

  それでも M の値を順次加算しながら cos(Mγ) の符号検査を実行して

 cos(Mγ) > 0, cos((M+1)γ) < 0 

を確認して M を決定する限り, 前回の Pai の近似の桁数とは無関係に今回の近似が得られる.

 今回の近似の桁数は N の約 1.5 倍となる.結果的には Pai の約 2 倍の桁数で今回の近似が得られる.

  ここで仮に前回 Pai が仮に真の円周率 π であったとしても

 今回の近似は N の約 1.5 倍の桁数程度よりは良くならない.

 逆にまた仮に前回 Pai が全く与えられていなくて M が予想できなくても

 時間をかけて M の値を順次加算しながら 

 cos(Mγ),sin(Mγ) を求め, 併せて cos(Mγ) の符号検査で M の真値を決定すれば

  今回の近似を N の約 1.5 倍程度は求められる.

 式の上では 

 Msin(γ) < π < (M+1)tan(γ)

が成り立つので,この式からも π を近似することは可能なように見える.

 前回の近似から M の予想は出来るが cos(Mγ) に代わる簡易な M の真値の決定方法が用意できない.

 真値を決定せずに M の予想だけで今回の近似を求めても前回の近似を改良することは原理上不可能である.
 
 なぜなら N=2n の場合に実行結果のデータから 

 今回のsin(γ),tan(γ) の精度は前回の近似円周率の精度とほぼ同程度だからである.

 この結果 M の値が真値から僅か 1 だけ外れているだけで今回の近似で前回の近似を改良することは不可能となる.
 
 結局のところ総合的に考えて 

 (1) N=2n に取って

  (2) 前回の近似円周率の値から M を予想し 

  (3) 加法定理や倍角公式を応用して cos(Mγ),sin(Mγ) を求め 

  (4) cos(Mγ)の符号検査で M の真値を決定し

 (5) Msin(γ) + cos(Mγ) < π/2 < Mtan(γ) + cos(Mγ)/sin(Mγ)

の応用から今回の近似円周率を得る.という方法が有利であると考えられる.

  この方法では M の下限値を予想しておくことで,この下限値までの符号検査だけは省略できる.

 この方法では実際に近似の改良が起こり,n の下の近似の桁数の約 2 倍の桁数で N での近似が得られる. 

 例えば n=1 を初期値としてこれを繰り返せば約 13 回目で円周率を約 12500 桁程度求めることが可能となる.

 ( 私の PC だと約 12500 桁で約 26 時間.約 6200 桁で約 3 時間 15 分.約 3100 桁で約 25 分. 

 約 1500 桁で約 3 分 10 秒. 約 780 桁で約 35 秒. 約 400 桁で約 6 秒.100 桁程度なら 1 秒未満.

  大まかな法則としてはこの方法で求める桁数を倍にすれば処理の時間は約 8 倍程度になっている.

 処理時間の比は求める桁数の比の約三乗となっているようである.) 

  近似の改良された理由は剰余項 cos(Mγ),cotan(Mγ) を下限と上限に加えたことによる.

 一般に不等辺多角形法であっても剰余項を添加すれば高い近似が期待できる.

 実際,ここの例でも近似の改良に大いに役立っている.

 N が大きくなれば今回の偏倚角 γ の大きさは前回のそれの何百桁分の一あるいは何千桁分の一であり,

  しかも剰余偏倚角 δ は γ より小である.( M が真値である限り δ = π/2-Mγ < γ である.)

 この結果,剰余項を勘定に入れた不等式によれば前回とは比較にならない程の細かさで近似が成立する.

 こうして近似の改良が実際に起こるのである.

 ( このとき近似誤差は約 M(tan(γ)-sin(γ)) 程度だが M が極めて大きいにも拘わらず,それに負けない位に

  tan(γ)-sin(γ) が極めて極めて小さく結果的に近似の改良が起こるのである.誠に幸運なことに!! 

  もっと細かく述べれば N = 2n として前回の円周率の近似の程度を 10-t であるとする.

 実行結果のデータから今回の N の下で M の桁数はほぼ t 桁ぐらいでこれは 10t で評価しておける.

 また sin(γ)≒tan(γ) は小数点以下ほぼ t 桁ぐらいまでは 0 が並び, それ以後 2t 桁までは同じ数字が並んでいて

  小数点以下ほぼ 3t 桁目ぐらいのところから両者の値が違ってくる.

 その結果 tan(γ)-sin(γ) は 10-3t であると評価できる.

 そうするとまた今回の誤差の評価は M(tan(γ)-sin(γ))≒10t×10-3t≒10-2t

となり前回の誤差の評価の 10-t の二乗ぐらいになっている.

 すなわち前回のほぼ倍の桁数で円周率が近似されていることになり,近似が大幅に改良される.

  なお実行結果のデータから t≒1.5n ともなっている.

  剰余項 cos(Mγ) は僅かな誤差の隙間に π/2 の真値を挟ませるための微調整に当たっていて

  僅かに外れるだけでも近似が不正になってしまう.) (筆者)


 新手一生 (坂田三吉)
                                                                                      (2008'4'22)

  ◇ パスカルの三角形の複素二項定理への拡張

 ( x + iy )n  ( n=0,1,2,3,・・・ )

を展開した場合の二項係数をパスカルの三角形に倣って書くと以下の如し.

  1

 1  i  

  1  2i  -1

  1  3i  -3    -i

  1  4i  -6   -4i   1

  1  5i -10  -10i   5    i

  1  6i -15  -20i  15   6i   -1

  1  7i -21  -35i  35  21i   -7    -i

  1  8i -28  -56i  70  56i  -28   -8i  1

  1  9i -36  -84i 126 126i  -84  -36i  9   i

  1 10i -45 -120i 210 512i -210 -120i 45 10i -1    

 これは通常のパスカルの三角形を作ってから第 m 項の係数に im を乗ずれば良い.

  ( 最も左端を第 0 項とする.)

 即ち

 m ≡ 0   ( mod 4 )  ⇒  i0 =  1

  m ≡ 1   ( mod 4 )  ⇒  i1 =  i

  m ≡ 2   ( mod 4 )  ⇒  i2 = -1

  m ≡ 3   ( mod 4 )  ⇒  i3 = -i

を乗ずると言うことである.

  ここで x = cosθ, y = sinθ と置くことで,

 n = 2  倍角公式    cos2θ + isin2θ = cos2θ + i2cosθsinθ - sin2θ

  n = 3  三倍角公式  cos3θ + isin3θ = cos3θ + i3cos2θsinθ - 3cosθsin2θ -isin3θ

  n = 4  四倍角公式  cos4θ + isin4θ = cos4θ + i4cos3θsinθ - 6cos2θsin2θ -i4cosθsin3θ + sin4θ 

などが作れる.

◇ 反復自乗冪単数法( 燕返し法 )による円周率の近似計算で今回の誤差が前回の誤差の二乗程度となることの証明.

[証明]

  前回の該当変数たちを f,g,M,x,y,z, 誤差を ε

  今回の該当変数たちを f',g',M',x',y',z', 誤差を ε' とする.

  前回の誤差 ε は,

  ε ≒ M(tan(γ)-sin(γ)) = (πz/(2√2))((x+y)/(z2-1) - (x+y)/z2 )

  = (πz/(2√2))(x+y)( 1/(z2-1) - 1/z2 )

  = (πz/(2√2))(x+y)( 1/((z2-1)z2) ) 

  ところが

  |x-y| = 1

から

  x ≒ y ≒ z/√2

  ∴ x + y ≒ √2 z

  ∴ ε ≒ (π/2)/(z2-1) ≒ 1/z2

  ところが反復自乗冪単数法によれば

  f' + g'√2 = ( f + g√2 )2

とするので,

  f' = f2 + 2g2, g' = 2fg 

  z' = ( f' + g')2 + g'2 = ( f2 + 2g2 + 2fg )2 + g'2

  ところがまた前回において,

  z = ( f + g )2 + g2 = f2 + 2g2 + 2fg

となるので  

  z' = z2 + g'2 = z2 + 4f2g2

  そうすると今回の誤差 ε' は

  ε' ≒ 1/z'2 = 1/(z2+4f2g2)2 ≒ 1/z4

  ところが

  ε ≒ 1/z2

であったから

  ε' ≒ ε2

  ( 少し具体的に述べれば ε ≒ 10-t と見積もれば ε' ≒ 10-2t となり

  前回の近似の桁数の約二倍ぐらいで今回の近似が表示されることになる.)
 
 (証明終わり)
                                                                                    (2008'4'27)

◇PM/x < π/2 < PM+1/y, y - x = P, ( P=1 ) または
 
  PM/x < π/2 < PM/y, y - x = P, ( P は  8k±1 型の素数の任意個数の積 )

であるような無限通りの整数組( x, y, M ) が存在する.

[証明]

 今までの円周率の求め方の根本原理( 飛燕六三四 ) から ( x, y, M ) が無限通り存在することは既に述べている.

 よって題意の後半部分の証明は省略する.

 それで前半の部分の

 PM/x < π/2 < PM/y

だけ証明しておく.

 双曲指数 n を大きくすれば x, y, z は幾らでも大きくなる.

( fn+gn√2=(F+G√2)(1+√2)n,F=G または F < G または F > 2G, fn2-2gn2=±P,

  xn=(fn+gn)2-gn2,yn=2(fn+gn)gn,zn=(fn+gn)2+gn2,|xn-yn|=P,xn2+yn2=zn2

  γn=tan-1(P(xn+yn)/(2xnyn)),|yn2-xn2|=P(xn+yn),2xnyn=zn2-P2 )

  ここでは仮に

 yn - xn = P > 0

であったとしておく( さもなければ xn > yn  )

  yn( xn + yn ) > xn2 + yn2 ( = zn2 )

 ∴ sinn) = P( xn + yn )/zn2 > P/yn

  xn( xn + yn ) < 2xnyn ( = zn2 - P2 )
 
  ∴ tann) = P( xn + yn )/( 2xnyn ) < P/xn
 
  ∴ P/ynsinn) < γntann) < P/xn

  ここで適当な正の実数を μ とすれば

 μγn = π/2, 

 ∴ Mn < μ < Mn+1 

が成り立つ. 

 ∴ γn = π/(2μ) ≒ π/(2Mn)

 ∴ P/yn < π/(2Mn) < P/xn

  ∴ PMn/yn < π/2 < PMn/xn

   PMn/yn < π/2 < P(Mn+1)/xn ( P=1 )

  (証明終わり)

 この応用として Πn で円周率の近似, Εn で誤差を表すとすれば,

 Πn=PMn(1/yn+1/xn)

  Εn=PMn(1/yn-1/xn)
 
でも円周率の近似とすることができる.

 簡単な例として P=1 において

 n=1 (f,g,x,y,z,M)=(1,1,3,4,5,5)  →  10/4 < π < 12/3 ( 2.5 < π < 4・・・ )

  n=2 (3,2,21,20,29,32)  →  64/21 < π < 66/20 ( 3.047・・・ < π < 3.3 )

  n=3 (7,5,119,120,169,187)  →  374/120 < π < 376/119 ( 3.1166・・・ < π < 3.1597・・・ )

  n=4 (17,12,697,696,985,1094)  →  2188/697 < π < 2190/696 ( 3.1391・・・ < π < 3.1465・・・ )

  n=5 (41,29,4059,4060,5741,6376)  →  12752/4060 < π < 12754/4059 ( 3.1408・・・ < π < 3.1421・・・ )
  
等が挙げられる.

 ( 12752/4060 < π < 12754/4059 は世界中の誰も述べたことの無い実用的な円周率の近似ではないだろうか.)

 従って私は円周率を上下に挟んで近似する二つの整数比を無限通りで求める方法たちの内で

 恐らく世界中で最も簡単な方法を発見したことになる.

  ここでも M を決定することが π を決定することであると云える.
                                                                                      (2008'4'29)
 ( もう少し詳しく述べれば

 π/2 < Mtan(γ) + tan(δ) < PM/x

が成り立つかどうかについて,特に P=1 のときに疑問が生ずる.

 すなわち

  tan(γ) = P(x+y)/(2xy)

 PM/x - Mtan(γ) = PM/x - MP(x+y)/(2xy) = PM(2y-x-y)/(2xy)

  = P2M/(2xy)

  ところが P=1 においては

 z < PM < x+y  ( P=1 )

となるので

 P2M/(2xy) < P(x+y)/(2xy) ( = tan(γ) )

は云えても

 P2M/(2xy) < tan(δ)

が簡単には云えそうもない.

 この場合には近似の上限を PM/x ではなく

 Pμ/x または PM+1/x  ( ただし P=1 )    

としておけば問題はない.

 一方 P≠1 においては 

 z < x+y < PM  ( P>1 )

が成り立つ.この結果,

 P2M/(2xy) > tan(γ) > tan(δ)

も成り立つので,P≠1 ならば近似の上限を PM/x としてもなんら問題はない.)
                                                                               (2008'6'25 追記)
◇ 実数四半円分指数の導入

 M を四半円分指数(有理整数) γ をこれに対応する偏角として近似の下限 DL と上限 UL は既に述べた如く

 DL = Msin(γ) + cos(Mγ)

  UL = Mtan(γ) + cot(Mγ)
  
  さてここで実数 μ を

 μγ = π/2

と定義し,これを実数四半円分指数と呼ぼう.

  これに伴って新たに下限 Dℓ 上限 Uℓ も次のように定義しよう.

 Dℓ = μsin(γ) 

  Uℓ = μtan(γ)

 これらの四半円分実数の導入により次の定理が成り立つ.

◇ 単位偏角補間定理

 一般に n, n'(n<n') を異なる双曲指数として

  n における偏角と実数四半円分指数を γ,μ

 n' における偏角と実数四半円分指数を γ',μ' とすれば 

  μsin(γ) < μ'sin(γ') < π/2 < μ'tan(γ') < μtan(γ)

 ( μγ = μ'γ' = π/2, γ > γ', μ < μ' )

が成り立つ.

[証明]

 ( μγ = μ'γ' = π/2, γ > γ', μ < μ' ) は題意から自明ゆえ省略する.

  いま弧度を表す実変数を θ とし

  π/2 > θ > 0

とすれば,

  sin(θ) < θ < tan(θ)
 
 から

  sin(θ)/θ < 1 < tan(θ)/θ 

 ℓim(θ→0)(sin(θ)/θ) = 1, ℓim(θ→0)(tan(θ)/θ) = 1  

  このことから, 新たに弧度を表す実数たち θ12 を取って

 π/2 > θ1 > θ2 > 0

とすれば,

 0 < sin1)/θ1sin2)/θ2< 1 < tan2)/θ2tan1)/θ1

と考えて良い.

 π/2 > γ > γ' > 0
 
にこれを応用して 

  sin(γ)/γ < sin(γ')/γ' < 1 < tan(γ')/γ' < tan(γ)/γ
   
 この各項に

 μγ = μ'γ' = π/2  

を乗じれば

  μsin(γ) < μ'sin(γ') < π/2 < μ'tan(γ') < μtan(γ)

(証明終わり)

  この定理は近似の改良に於いて π/2 全体では無く,

  前回の単位偏角 γ が今回の単位偏角 γ' の何倍に当たるかの実数的な倍率 μ'/μ が分かりさえすれば良いこと

を意味している.

  筆者はこのことを利用して円周率近似の所要時間が短縮できないかと考えている.
                                                                                      (2008'5'11)
 直前に述べた事柄を前提として

◇ P/y < sin(γ) < P√2/z < tan(γ) < P/x
 
[証明]

  P = y-x > 0
 
 y(x+y) > x2+y2 = z2

  ∴ P/y < P(x+y)/z2 = sin(γ)
   
  (x+y)2 = x2+y2+2xy = z2+2xy = 2z2-P2 < 2z2

  ∴ x+y < (√2)z

  ∴ sin(γ) = P(x+y)/z2 < P√2/z
  
  P2 = (y-x)2 = x2+y2-2xy = z2-2xy

  ∴ z2 = 2xy+P2 > 2xy

  (x+y)2 = x2+y2+2xy = z2+2xy = 4xy+P2 > 4xy

  ∴ z2(x+y)2 > 8x2y2
   
  ∴ z(x+y) > (2√2)xy

  ∴ tan(γ) = P(x+y)/2xy > P√2/z

  x(x+y) < 2xy

  ∴ tan(γ) = P(x+y)/(2xy) < P/x
 
 ∴ P/y < sin(γ) < P√2/z < tan(γ) < P/x

(証明終わり)
                                                                                      (2008'6'28)

  てなもんや三度笠   唄: 藤田まこと 白木みのる
   ( この曲は主題歌ではなく正式の題名は「何故か気が合う馬が合う」らしいです )

 すっとん とろりこ すちゃらか ちゃんちゃん ( あ、すちゃらか ちゃんちゃん )

  街道名物 ご存知ないか  ( ああ、それそれ )

  ちびと のっぽの 二人づれ 

 顔の長いは 笑顔で隠し

 馬に 良く似た 

 馬に 良く似た

 長~~~、い 顔
_なぜか気が合う馬があう

                                                                                       (2008'7'6)
 今頃になってしまったけれど加法定理の証明を参考として一応掲げておこう.
参考図 加法定理の証明
                                                                                       
[加法定理]
(*1) sin(α+β) = sin(α)cos(β) + cos(α)sin(β)
(*2) cos(α+β) = cos(α)cos(β) - sin(α)sin(β)  
                       ( 0≦α+β≦π/2 ) 
[証明]
 参考図から
 PU = OP・sin(α)cos(β)
 UT = SV = OP・cos(α)sin(β)
 ところが
 sin(α+β) = PT/OP = ( PU + UT )/OP 
= sin(α)cos(β) + cos(α)sin(β)
 OV = OP・cos(α)cos(β)
 VT = SU = OP・sin(α)sin(β)
 ところが
 cos(α+β) = OT/OP = ( OV - VT )/OP 
= cos(α)cos(β) - sin(α)sin(β)
(証明終わり)

 ここで α = β と置くことで次の倍角公式を得る.
[倍角公式]
(*1) sin(2α) = 2sin(α)cos(α)
(*2) cos(2α) = cos2(α) - sin2(α)  
                       ( 0≦α≦π/4 ) 
(証明省略)

  さらに 0≦α≦2π, 0≦β≦2π に広げても加法定理が成り立つ.以下でこれを示そう.

  (☆1) α' = π/4 + α   ( 0≦α≦π/4 )  とすると ( π/4≦α'≦π/2 ) となる.

 すると既に示した加法定理によって
 sin(α') = sin(π/4 + α) = sin(π/4)cos(α) + cos(π/4)sin(α) = (1/√2)(cos(α) + sin(α))
 cos(α') = cos(π/4 + α) = cos(π/4)cos(α) - sin(π/4)sin(α) = (1/√2)(cos(α) - sin(α))
  ∴ 2sin(α')cos(α') = 2(1/√2)(1/√2)(cos2(α) - sin2(α))  ( 0≦α≦π/4 )
 ゆえに既に示した倍角公式から
  2sin(α')cos(α') = cos2(α) - sin2(α) = cos(2α)
 ところが
 sin(2α') = sin(2(π/4+α)) = sin(π/2 + 2α) = cos(2α)
  ∴ sin(2α') = 2sin(α')cos(α')   ( 0≦α'≦π/2 )
  また別に
  cos2(α') - sin2(α') = (1/2)(cos(α) - sin(α))2 - (1/2)(cos(α) + sin(α))2 
 = -2sin(α)cos(α) = -sin(2α) ( 0≦α≦π/4 )   
  ところが  
 cos(2α') = cos(2(π/4+α)) = cos(π/2 + 2α) = -sin(2α)   ( 0≦α≦π/4 ) 
  ∴ cos(2α') = cos2(α') - sin2(α')   ( 0≦α'≦π/2 )
 
  これらを前提として 0 ≦ α+β ≦ π/2 とすれば
 sin(2(α+β)) = 2sin(α+β)cos(α+β)
  = 2(sin(α)cos(β) + cos(α)sin(β))(cos(α)cos(β) - sin(α)sin(β))
  = 2(sin(α)cos(α)cos2(β) - sin2(α)sin(β)cos(β) + cos2(α)sin(β)cos(β) - sin(α)cos(α)sin2(β)) 
  = 2sin(α)cos(α)(cos2(β) - sin2(β)) + (cos2(α) - sin2(α))(2sin(β)cos(β))
  = sin(2α)cos(2β) + cos(2α)sin(2β)
  そこで α' = 2α, β' = 2β とおけば
 sin(α'+β') = sin(α')cos(β') + cos(α')sin(β')   ( 0 ≦ α'+β' ≦ π )
  また別に
 cos(2(α+β)) = cos2(α+β) - sin2(α+β)
  = (cos(α)cos(β) - sin(α)sin(β))2 - (sin(α)cos(β) + cos(α)sin(β))2
  = (cos2(α)cos2(β) - 2sin(α)cos(α)sin(β)cos(β) + sin2(α)sin2(β))
  - (sin2(α)cos2(β) + 2sin(α)cos(α)sin(β)cos(β) + cos2(α)sin2(β))
  = (cos2(α) - sin2(α))(cos2(β) - sin2(β)) - 4sin(α)cos(α)sin(β)cos(β)
  = cos(2α)cos(2β) - sin(2α)sin(2β)
  そこで α' = 2α, β' = 2β とおけば
 cos(α'+β') = cos(α')cos(β') - sin(α')sin(β')   ( 0 ≦ α'+β' ≦ π )
 
  (☆2) α' = π/2 + α   ( 0≦α≦π/2 )  とすると ( π/2≦α'≦π ) となる.
 
 すると既に示した加法定理によって
 sin(α') = sin(π/2 + α) = sin(π/2)cos(α) + cos(π/2)sin(α) = cos(α)
  cos(α') = cos(π/2 + α) = cos(π/2)cos(α) - sin(π/2)sin(α) = -sin(α)
  ∴ 2sin(α')cos(α') = -2cos(α)sin(α)  ( 0≦α≦π/2 )
 ゆえに既に示した倍角公式から
  2sin(α')cos(α') = -sin(2α)
 ところが
 sin(2α') = sin(2(π/2+α)) = sin(π + 2α) = -sin(2α)
  ∴ sin(2α') = 2sin(α')cos(α')   ( 0≦α'≦π )
  また別に
  cos2(α') - sin2(α') = sin2(α) - cos2(α) = -cos(2α) ( 0≦α≦π/2 )   
  ところが  
 cos(2α') = cos(2(π/2+α)) = cos(π + 2α) = -cos(2α)   ( 0≦α≦π/4 ) 
  ∴ cos(2α') = cos2(α') - sin2(α')   ( 0≦α'≦π )

  これらを前提として 0 ≦ α+β ≦ π とすれば
 sin(2(α+β)) = 2sin(α+β)cos(α+β)
  = 2(sin(α)cos(β) + cos(α)sin(β))(cos(α)cos(β) - sin(α)sin(β))
  = 2(sin(α)cos(α)cos2(β) - sin2(α)sin(β)cos(β) + cos2(α)sin(β)cos(β) - sin(α)cos(α)sin2(β)) 
  = 2sin(α)cos(α)(cos2(β) - sin2(β)) + (cos2(α) - sin2(α))(2sin(β)cos(β))
  = sin(2α)cos(2β) + cos(2α)sin(2β)
  そこで α' = 2α, β' = 2β とおけば
 sin(α'+β') = sin(α')cos(β') + cos(α')sin(β')   ( 0 ≦ α'+β' ≦ 2π )
  また別に
 cos(2(α+β)) = cos2(α+β) - sin2(α+β)
  = (cos(α)cos(β) - sin(α)sin(β))2 - (sin(α)cos(β) + cos(α)sin(β))2
  = (cos2(α)cos2(β) - 2sin(α)cos(α)sin(β)cos(β) + sin2(α)sin2(β))
    - (sin2(α)cos2(β) + 2sin(α)cos(α)sin(β)cos(β) + cos2(α)sin2(β))
  = (cos2(α) - sin2(α))(cos2(β) - sin2(β)) - 4sin(α)cos(α)sin(β)cos(β)
  = cos(2α)cos(2β) - sin(2α)sin(2β)
  そこで α' = 2α, β' = 2β とおけば
 cos(α'+β') = cos(α')cos(β') - sin(α')sin(β')   ( 0 ≦ α'+β' ≦ 2π )
 
 (☆3) α' = π + α   ( 0≦α≦π )  とすると ( π≦α'≦2π ) となる.
 
 すると
 sin(α') = sin(π + α) = -sin(α)
  cos(α') = cos(π + α) = -cos(α)
  ∴ 2sin(α')cos(α') = 2sin(α)cos(α)  ( 0≦α≦π )
 ゆえに既に示した倍角公式から
  2sin(α')cos(α') = sin(2α)
 ところが
 sin(2α') = sin(2(π+α)) = sin(2α)
  ∴ sin(2α') = 2sin(α')cos(α')   ( 0≦α'≦2π )
  また別に
  cos2(α') - sin2(α') = cos2(α) - sin2(α) = cos(2α) ( 0≦α≦π )   
  ところが  
 cos(2α') = cos(2(π+α)) = cos(2α)   ( 0≦α≦π ) 
  ∴ cos(2α') = cos2(α') - sin2(α')   ( 0≦α'≦2π )

  これらを前提として 0 ≦ α+β ≦ 2π とすれば
 sin(2(α+β)) = 2sin(α+β)cos(α+β)
  = 2(sin(α)cos(β) + cos(α)sin(β))(cos(α)cos(β) - sin(α)sin(β))
  = 2(sin(α)cos(α)cos2(β) - sin2(α)sin(β)cos(β) + cos2(α)sin(β)cos(β) - sin(α)cos(α)sin2(β)) 
  = 2sin(α)cos(α)(cos2(β) - sin2(β)) + (cos2(α) - sin2(α))(2sin(β)cos(β))
  = sin(2α)cos(2β) + cos(2α)sin(2β)
  そこで α' = 2α, β' = 2β とおけば
 sin(α'+β') = sin(α')cos(β') + cos(α')sin(β')   ( 0 ≦ α'+β' ≦ 4π )
  また別に
 cos(2(α+β)) = cos2(α+β) - sin2(α+β)
  = (cos(α)cos(β) - sin(α)sin(β))2 - (sin(α)cos(β) + cos(α)sin(β))2
  = (cos2(α)cos2(β) - 2sin(α)cos(α)sin(β)cos(β) + sin2(α)sin2(β))
   - (sin2(α)cos2(β) + 2sin(α)cos(α)sin(β)cos(β) + cos2(α)sin2(β))
  = (cos2(α) - sin2(α))(cos2(β) - sin2(β)) - 4sin(α)cos(α)sin(β)cos(β)
  = cos(2α)cos(2β) - sin(2α)sin(2β)
  そこで α' = 2α, β' = 2β とおけば
 cos(α'+β') = cos(α')cos(β') - sin(α')sin(β')   ( 0 ≦ α'+β' ≦ 4π )
 
  これらの事柄を取りまとめて一般に
  sin(α+β) = sin(α)cos(β) + cos(α)sin(β)
  cos(α+β) = cos(α)cos(β) - sin(α)sin(β)  
  特に
  sin(2α) = 2sin(α)cos(α)
  cos(2α) = cos2(α) - sin2(α)
               ( 0≦α≦2π, 0≦β≦2π ) 
                                                                                      (2008'7'20)
◇表と裏の定理三つ組みを双曲座標の一次式と二次式で生成する場合の概略的考察.

  以下で使用する記号は従来通りとする.また話を簡単にするために |x-y|=P=1 とする.

 一般に
 
  fn + gn√2 = (1+√2)n, gn' = fn + gn

として

 xn = gn'2 - gn2, yn = 2gn'gn, zn = gn'2 + gn2

であるような ( xn, yn, zn ) を表の (ピタゴラスの) 定理三つ組みと呼んだ.

 xn2 + yn2 = zn2, |xn-yn|=P=1
 
なる式たちが成り立った.このときさらに,

 un = 2xnyn ( = zn2-1 ), vn = |xn2-yn2|, wn = zn2

であるような ( un, vn, wn ) を裏の (ピタゴラスの) 定理三つ組みと呼んだ.
 
 un2 + vn2 = wn2

が成り立った.ここから更に,

  γn = tan-1(vn/un),

  Mnγn < π/2 < (Mn+1)γn

 Mnsinn) + cos(Mnγn) < π/2 < Mntann) + cot(Mnγn)

などから円周率を近似したのであった.

  ところで,これらの定理三つ組みたちは次のような方法でも生成できる.

  まず

 Fn + Gn√2 = (1+√2)(3+2√2)n = (1+√2)(fn+gn√2)2

と定義する.( 詳細は別記「判別式が2の二次拡大整数環の基本性質」を参照.)

 詳しい説明は冗長なので省略するが以下が成り立つ.

 xn = ( Fn-P )/2, yn = ( Fn+P )/2, zn = Gn 

  un = Gn2-P2, vn = Fn,  wn = Gn2
 
                                                                                      (2008'7'21)

◇飛燕六三四による円周率近似の桁数が双曲指数 n の約 1.5 倍程度であることについての証明.

  一般に前述の表の定理三つ組み( xn, yn, zn ) の zn を番号 n に対応した数列と見なした場合.

 zn+2 = 6zn+1 - zn

が成り立つ.

 それゆえ,その補助の差分方程式は変数を χ として

 χ2 - 6χ + 1 = 0

これを解いたニ根をそれぞれ α, β とすれば

 α = 3 + 2√2, β = 1/α = 3 - 2√2

  ここから二つの異なる番号について, 例えば z0 = 1, z1 = 5 として

 次のような変数 k, ℓ について連立二元一次方程式を立てる. 

 α0k + β0ℓ = z0 = 1

  α1k + β1ℓ = z1 = 5

  これを解いて

 k = (β-5)/(β-α) = (3-2√2-5)/(3-2√2-3-2√2) = (1+√2)/(2√2)

 ℓ = 1-k = 1-(1+√2)/(2√2) = -(1-√2)/(2√2)

 ∴ zn = αnk + βnℓ = ((1+√2)αn-(1-√2)βn)/(2√2)

  = ((1+√2)2n+1 - (1-√2)2n+1)/(2√2)  
 
としても zn の ( いわゆる二次差分方程式の解法による ) 特解が求められる.

  類似な方法として zn = Gn に着目すると次のような方法でも zn が求められる.

 Fn + Gn√2 = (1+√2)(3+2√2)n

から

 Fn - Gn√2 = (1-√2)(3-2√2)n
 
  ここで

 Fn - Gn√2 = -( Fn + Gn√2 )-1

であることを注意しておこう.これらの式から

 zn = Gn = (( Fn + Gn√2 ) - ( Fn - Gn√2 ))/(2√2)

  = ( Fn + Gn√2 )( 1 + ( Fn + Gn√2 )-2 )/(2√2)
 
  ところが n が極めて大きいときには上式の ( Fn + Gn√2 )-2 

は zn の桁数の評価にはほとんど影響が無いと考えて良い.

 ゆえにこの部分を無視すれば,

 zn ≒ ( Fn + Gn√2 )/(2√2) = ((1+√2)/(2√2))(3+2√2)n

  さらに (1+√2)/(2√2) ≒ 1 と見なせば,

 zn ≒ (3+2√2)n

  ∴ zn+1/zn ≒ 3+2√2 ≒ 5.83

  ゆえに zn+1 は前回の zn の約 5.8 倍程度で増加する.

 さらに s を自然数として 

  zn ≒ 10s 

と評価したとする.

 この s を求めて見よう.

 ℓog を常用対数として

 s ≒ ℓog(zn) ≒ ℓog(3+2√2)n = nℓog(3+2√2)

  ところが

 ℓog(3+2√2) ≒ 0.766 

  ∴ s ≒ 0.766n

  ここで更に 0.766n ≒ (3/4)n とすれば zn の桁数は約 (3/4)n 桁であるとも言えよう.

 さて飛燕六三四によって円周率 π を近似する場合の下限を An 上限を Bn とすれば

 An = Mnsinn) + cos(Mnγn),

  Bn = Mntann) + cot(Mnγn),

  An < π/2 < Bn

  このとき近似の誤差を En とすれば

 En = Bn - An = Mn(tann) - sinn)) + cot(Mnγn) - cos(Mnγn)

  ≒ Mn(tann) - sinn))

  ところが P=1 として

 Mn ≒ (π/(2√2))zn,

  sinn) = (xn+yn)/zn2

  tann) = (xn+yn)/(zn2-1)

  また n が充分大きければ 

  xn + yn ≒ (√2)zn

  これらのことから

 En ≒ ((π/(2√2))zn)((√2)zn)/(zn2(zn2-1)) 

  ≒ 1/zn2

  そこで t を自然数として誤差 En の評価を

  En ≒ 10-t

とすれば

 -t ≒ ℓog(En)≒ ℓog(1/zn2) ≒ -2ℓog(zn) 

  ≒ -2×0.766×n = -1.532n

  ゆえに近似の桁数 t は n の約 1.5 倍である.

  またここから双曲指数 n を 2 倍にすれば近似の桁数 t も約 2 倍になることも分かる.

 (証明終わり)
                                                                                      (2008'7'27)
◇剰余の効能

 Mnγn + δn = π/2, δn < γn

であることから,更に

 Mnsinn) < Mnγn < π/2 < (Mn+1)γn < (Mn+1)tann)

が成り立つ.

  そこで新たに上限 An', 下限 Bn' として

 An' = Mnsinn),

  Bn' = (Mn+1)tann)

としたときの新たな誤差を En' とすれば

 En' = Mn(tann)-sinn)) + tann)

 ≒ (1/zn2) + (√2)zn/(zn2-1)

  ≒ 1/zn

  それで

  En' ≒ 10-t'

と評価すれば

 t' ≒ 0.766n

となり

 下限剰余項 sin(δ) = cos(Mnγn), 

 上限剰余項 tan(δ) = cot(Mnγn)   

を加えた場合の近似の桁数 t ≒ 1.532n と比べて約 1/2 に低下する.

 結局, 剰余項は不等式の極めて狭い隙間に目標値 π/2 を正しく挟むための微調整となっている.

                                                                                    (2008'7'30)
◇飛燕六三四による円周率の計算に於ける各変数や計算領域の大きさの概算.

  ここでは実際に PC でプログラムを組んで円周率を計算する場合を想定して

 各変数や計算用一時変数等の10進桁数を概算してみよう.

 ( メモリや所要時間の節約が図れるものと期待できる.)

 なお使用言語と計算専用クラスを Java 言語とその BigDecimal かその相当品とする.

 以下の議論で

 s = ℓog(zn) ≒ nℓog(3+2√2) ≒ nℓog(5.828427125) ≒ 0.76555138×n

 [s] で s の直近下位の整数を表すものとする.

  先ず以前までの議論でほぼ自明に分かる事として

 xn ≒ yn ≒ zn ≒ Mn ≒ 10[s]

  un = zn2-1 ≒ 102[s], vn = xn+yn ≒ 10[s], wn = zn2 ≒ 102[s]

  最終的な近似の誤差の桁数が

 En ≒ 1/zn2 ≒ 10-2[s]

であるとして sinn), cosn), tann) 等を何桁ぐらいに取れば良いかが問題である.

 このような桁数を以後は精度と呼ぶことにする.

 sinn) = vn/wn ≒ 10-[s]

  tann) = vn/un ≒ 10-[s]

となるが,これは小数点以下約 [s] 桁ほどは 0 が並んでいることを意味している.

 さらに両者の差を計算すると

 tann)-sinn) = vn/un - vn/wn 

  = vn/(unwn) ≒ 10-3[s]

  すなわち両者は小数点以下約 3[s] 桁目付近から始めて異なる数字の桁を持つようになる.

 関係のある式たちを列挙すれば

  En ≒ Mn(tann)-sinn)) ≒ 10-2[s]
  Mn ≒ 10[s]
  tann)-sinn) ≒ 10-3[s]

となり,この関係が互いに裏付けられている.

 このとき要求される近似の精度 2[s] 桁を満たすには, ニ数の引き算の精度は両者の悪い方となるので,

  例えば

 S = [s] + a, a = 4

と置いたとして

 sinn), tann)の精度を各々 [sinn)], [tann)]

と書くことにすれば

 [sinn)] = [tann)] = 3S

等とするだけで良いはずである.

  ここでは 3S = 3[s] + 3a = 3[s] + 12 桁となり 3a = 12 桁を誤差に相当する分の保存領域に当てる.

  さらに

  近似下限 An = Mnsinn) + cos(Mnγn)

  近似上限 Bn = Mntann) + cos(Mnγn)/sin(Mnγn)

なので

 [An] = [Bn] = 2S

ぐらいにすれば良いと思える.

 さてここで問題なのは近似上限 Bn の剰余項 cos(Mnγn)/sin(Mnγn) の精度を 2S にするには

 [cos(Mnγn)], [sin(Mnγn)] をどれぐらいの精度に取れば良いのだろうか?ということである.

  既に cos(Mnγn) は近似上限 An の剰余項でもあるので少なくとも [cos(Mnγn)] の精度は 2S は無ければならない.

  ゆえに

 [cos(Mnγn)] > 2S

 その一方で cos(Mnγn)/sin(Mnγn) では割り算の精度は分子の精度から分母の精度を引いたものとなるので

 [cos(Mnγn)] - [sin(Mnγn)] = 2S 

  そこで

 [sin(Mnγn)] =  [sinn)] = 3S

に取ったとすれば

 [cos(Mnγn)] = 5S

に取るべきである.

  これらのことを基にして推し量れば

  sin(Add), cos(Add) を加法定理処理の保存用, sin(Twin), cos(Twin) を倍角公式処理の保存用とすれば

 [sin(Add)] = [sin(Twin)] = 3S, [cos(Add)] = [cos(Twin)] = 5S

に取っておけば良いと考えられる.

  ( 実例を挙げると n = 1024 の場合に S ≒ 780 桁として
 [sin(Add)] = [sin(Twin)] = 3S, [cos(Add)] = [cos(Twin)] = 5S
で実行したところ所要時間は約 4 分 29 秒であったが
 [cos(Add)] = [cos(Twin)] = 4S
と少なくしたところ計算結果の精度は同じで所要時間だけ約 2 分 56 秒に縮まった.
 後者は前者の約 1/3 倍速くなっている.
 しかしこのような最適化は実行時間の遅さがどうしても気になる場合に限られると考えるべきである.
 通常は特に初心者は早いプログラムを書くよりは正しく動作するプログラムを先ず書くべきである.)

                                                                                       (2008'8'2)
  "戦はいらない沖縄は
 沖縄かがやけ 沖縄かがやけ"
 
2008年夏期プログラム実行結果(クリックで参考ファイルが開けます)

                                                                                      (2008'8'4)
◇ ( Fn - 1 )/4 < Mn/π < ( Fn + 1 )/4

(証明)
 
  n が充分大きなところでは

 Mn ≒ πzn/(2√2)

が成り立つと考えて良い.

 ところが

  yn < xn

  ならば

 yn < zn/√2 < xn

  あるいは同様のことは

 Fn - 1 < (√2)Gn < Fn + 1

  xn = ( Fn - 1 )/2, yn = ( Fn + 1 )/2, zn = Gn
 
からも導ける.
 
  ∴ yn/2 < Mn/π < xn/2

  ∴ ( Fn - 1 )/4 < Mn/π < ( Fn + 1 )/4
  
  ここに Fn + Gn√2 = (1+√2)(3+2√2)n

(証明終わり)

  従って極めて粗い近似として

 π≒3

と考えることにより

 Mn ≒ (3/4)Fn

  円周率 π の古い近似 Paiold が既に与えられたとして, そこから Mn を予想すれば

 Paiold( Fn - 1 )/4 < Mn < Paiold( Fn + 1 )/4

  この不等式で Mn の値を正しく挟ませるには Paiold の精度は Mn の桁数以上が必要である.

  そのような精度の Paiold であると仮定した場合の上限と下限の差は

 Paiold( Fn + 1 )/4 - Paiold( Fn - 1 )/4 = Paiold/2

 ≒ 1.57

よってこの範囲に入り得る整数の個数は高々 1 個か 2 個である.

 さて今度は正しい Mn が与えられたとして近似円周率 Pain を求めるとすれば

 4Mn/( Fn + 1 ) < Pain < 4Mn/( Fn - 1 )

となる.

 同時に,このとき近似の誤差は

 ( 4Mn/( Fn - 1 ) - 4Mn/( Fn + 1 ) )/2 = 4Mn/( Fn2 - 1 )

となる.

 さらにこの誤差の程度で近似式を簡便にすれば

 Pain ≒ 4Mn/Fn

が成り立つ.
                                                                                       (2008'8'6)
◇相互比較一致下限追跡法

  Fn については一般に

 Fn+2 = 6Fn+1 - Fn

が成り立つ.

 Mn についても n の大きなところでは

 Mn+2 ≒ 6Mn+1 - Mn

が成り立つと考えられる.

 しかもこのとき

 4Mn/(Fn+1) < 4Mn+1/(Fn+1+1) < 4Mn+2/(Fn+2+1) < ・・・ < π

が成り立つと考えて良い.

 そこで次のような Ln を定義する.( この Ln を一致下限と呼ぼう )

 4Mn/(Fn+1), 4Mn+1/(Fn+1+1) の少数展開の一致している桁までを Ln とする.

 そうすると

 Ln < Ln+1 < ・・・ < π

となると考えられる.

 このやり方でも比較的少ない回数の有理計算で円周率の正しい近似桁数を叙々に伸ばして行けると思える.

  しかし残念ながら実際には Mn の差分方程式がそれほど正確には成立しないので

 毎回近似を改善して行けるようにはならない.

 円周率の楽な近似は意外に困難である. 

                                                                                       (2008'8'7)
 〔秋刀魚〕

  焼き秋刀魚 図画の時間の 生モデル

 ジュウジュウと 胃の腑に滲みる 秋刀
                                                                                      (2008'8'13)
 〔Beijing五輪〕

  試合後の 真のメダルへ なお一歩

 感動を紡いで 北京の夏 括る
                                                                                      (2008'8'26)


  ・・・・・・・・・
  
 ・・・・・・・・・

  でも時々こんな不真面目な替え歌も思いついたりしてしまいます。困ったモンです。  


 〔酔うたルチヤ〕(サンタルチアの替え歌で)

 飲んだつもりの お酒に飲まれ

 小船のように 揺れながら与太る

 横から友も 絡んでわめく

「 あんた アル中や !! 」 

「 あんたも そうや !! 」   


 ( この他にも題名だけですが「 ぐれたルチヤ 」とか「 家出たルチヤ 」とか色々思いつけそうです。

 夏休みの終わり頃は誘惑や後悔の罠が特に多いので良い子は絶対にハマらないでね。( *~∇~)

                                                                                      (2008'8'29)
◇単数冪公比差分二次方程式

  一般に

 fn + gn√2 = (1+√2)n   ( n = 1,2,3,・・・ )

において更に,

  αr を初項と称し
 
 αr = (1+√2)r = fr + gr√2   ( r = 0,1,2,3,・・・ )

  αs を公比と称し

 αs = (1+√2)s = fs + gs√2   ( s = 1,2,3,・・・ )

 σt を一般項と称し

 σt = αrst) = (1+√2)st+r = Ft + Gt√2   ( t = 0,1,2,3,・・・ )

 n = st + r 

と定義する.

  すると一般に

 σt+2 + (-1)sσt = 2fsσt+1

なる差分方程式( 漸化式 ) が成立する.    

 このときの σt, Ft, Gt の漸化式から

 χ2 - 2fsχ + (-1)s = 0

の様な二次の補助方程式が導ける.

  この補助方程式の解は

 βs = (1-√2)s = fs - gs√2,

  αsβs = fs2 - 2gs2 = (-1)s

として αs, βs となる.

[証明]

 差分方程式については以下による.

  ( 2fs - αst+1 = βsσt+1 = βsαsσt = (-1)sσt

 ∴ 2fsσt+1 - αsσt+1 = (-1)sσt
  
 ∴ 2fsσt+1 = σt+2 + (-1)sσt
 
 補助方程式の解については以下による. 

 χ2 - 2fsχ + (-1)s = 0,

  (-1)s = αsβs = fs2 - 2gs2

 ∴ χ2 - 2fsχ = - fs2 + 2gs2

 ∴ ( χ - fs )2 = fs2 - fs2 + 2gs2 = 2gs2

 ∴ χ = fs ± gs√2 = αs, βs

(証明終わり)

  こんなわけで fn + gn√2, fn, gn たちは任意の r, s に関し無限通りの二次的な漸化式を含んでいる. 

                                                                                      (2008'9'10)
◇項の n 和

 一般に

 ∑(t=0,t)σt = σ0 + σ1 + σ2 + ・・・ + σt-2 + σt-1 + σt

を項 σt の n 和と称する.( ここでは言葉上は t 和だけれども慣例に従って n 和としておく.)

 これを求めて見よう.

 漸化式から

 -σ2 + 2fsσ1 - (-1)sσ0 = 0

  -σ3 + 2fsσ2 - (-1)sσ1 = 0

  -σ4 + 2fsσ3 - (-1)sσ2 = 0

  ・・・ ・・・ ・・・

 -σt+1 + 2fsσt - (-1)sσt-1 = 0

  ∴ -∑(t=2,t+1)σt + 2fs∑(t=1,t)σt - (-1)s∑(t=0,t-1)σt = 0

  ∴ ( -1 + 2fs - (-1)s )∑(t=1,t)σt = - σ1 + σt+1 + (-1)sσ0 - (-1)sσt

  ∴ ∑(t=1,t)σt = ( - σ1 + σt+1 + (-1)sσ0 - (-1)sσt )/( -1 + 2fs - (-1)s )

  ∴ ∑(t=0,t)σt = σ0 + ( - σ1 + σt+1 + (-1)sσ0 - (-1)sσt )/( -1 + 2fs - (-1)s )

  よって求められた.
                                                                                      (2008'9'15)

 〔Beijingパラリンピック閉幕〕

 艱難を 栄光に変え ゴールイン

  鳴り止まぬ 花火の連打 星 満ちる   
                                                                                      (2008'9'18)

 〔稲尾伝説〕

 往年の 野球時代の名選手 打ちも打ったり 投げも投げたり

 (※「 打ちも打ったり、投げも投げたり、といったところでございましょうか 」は野球解説者の故・小西徳朗氏

の決まり文句であった.)

                                                                                      (2008'9'25)
◇ n 次代数解析関数の解法に関する一つの一般原理の閃き.

 任意の一本の等角度線は必ず適当な一つの零点に通じている.

 しかも同種の等角度線たちは双曲線に似た n 本の独立した曲線の類を成す.

 この独立した曲線の類たちが其々に独立した n 個の零点に通じている.

 これらのことから「 解法を加味した代数学の基本定理 」が作り上げられ得るものと筆者は期待している.

 古代世界史において曰く

 ”全ての道はローマに通ず.”

  同様に 

  n 次代数解析関数論において曰く

 ”全ての等角度線は零点に通ず.”

                                                                                      (2008'10'4)

  人知れず 大内山のやまもりは 木がくれてのみ 月をみるかな ( 源三位入道 頼政 )
                                                                                      (2008'11'9)

◇プロバイダーさんを代えた直後は接続関係の不具合とかに加えて更に運の悪いことには

私的にはマウスまでが不意に固まるとかでまだ余裕を持って記事を書くこともできません(ζυζ)
                                                                                      (2008'12'8)

  日記は以下に引越しました.↓
Flash Pot
 

 本稿の本当の終了.(2010'06'01)
inserted by FC2 system